ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第七部可憐な皇女と聖騎士

22.女達の秘密会議

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一行が、エルラド帝国に向かっている最中。



王妃の部屋では会議が行われていた。


「これより第15回、緊急会議を行います」


「「「はい」」」

女性陣は深刻な表情をしながら議題を話し合う。


「現在ロバートは遠征を終えて三日後に帰還する予定です」

「その情報は確かですの?ヴィオラ」


「間違いありません」

水晶玉を取り出し映像を見ると、船の位置を確認する。


「クニッツを同行させていて正解でしたわ」

「ええ、孫に忠誠を誓うあまり行き過ぎですの」

クロードがアプローチをしかけてもクニッツは全力で阻止するのは安易に想像がついたので、同行させて心底良かったと思っている。


「ガブリエル、彼が帰るまでの三日間に対策を」

「そうですわ、公爵夫人!」


王妃とモントワール侯爵夫人は問うた。
どうにかして打開策を考えクロードを助けてやらなくては。


「陛下に頼めば逆効果ですわ」

「ええ…何処の世界に息子の恋人に下着を送る親がいましょうか」

「ロバートが遠征先にいて良かったですわ」


万一に出もロバートが知れば発狂して手が付けられなくなるに違いない。


「陛下は少々、常識が足りませんわ」

「我が夫ながら嘆かわしいです事」

妻二人は夫の困った性格を思うと恥ずかしくて仕方がない。


「婚約には父親の同意が必要です」

「現在エルラド帝国のケイン・バルセル伯爵からお手紙をいただきましたの」


火急で届けられた手紙にはクローディアからの感謝と、エステルへのことが書かれていた。


「エステル嬢はクローディア陛下に気に入られたそうですわ」

「本当ですの?ジャンヌ」

「手紙には皇女様への心配りに、配慮が良かったと」

母としての思い、君主としての思いが書かれていた。


「同盟を心から望み、娘をどうかよろしくお願い申し上げますと」


「流石エステル嬢ですわ。女帝の心を掴むとは」


「ですが少々問題がありまして」

嬉しい反面モントワール侯爵夫人はもう一つ不安要素がある。


「エステル嬢は侯爵令嬢としても立派であればある程、彼女の婿なろうと企てる人間がおりますわ」

「確かに…あの子は目立ち過ぎました」


本人はできるだけ目立たないように心掛け、影になることを徹底しようとしても。

逆効果になり、身分に胡坐をかかず聡明で努力家で謙虚な侯爵令嬢として見られている。

王族に忠誠を誓う騎士としても素晴らしく、エステルを伴侶にと望む他国の貴族も増えて来ているのだ。


「貴族派の連中も目をつけだしておりますわ」

「貴族派に取り込む気でしょう?馬鹿なことを」

「ですが、あの子は未だに正式な婚約者がいなも同然」

クロードがロバートを納得させないことには始まらない。


「では、どうやって納得させればいいのです?ガブリエル」

「そうですわ公爵夫人、何かいい案はございますか?」

王妃とモントワール侯爵夫人は母親ならば知っているだろうと尋ねる。


「ありません」

「「は?」」

考える暇もなくキッパリと言い放つ。


「ですからないと申しました」

「お義母様…」


ヴィオラも同じ気持ちだったが、もう少し悩んでから返答して欲しかった。


二人は唖然として固まったままだった。


「クロード殿下の交渉術をもってしても難しいでしょう…まぁ一つだけ方法はありますわね」


「「どんな!」」

二人はすぐに食らいつく。



決闘デュエロです」



アルカディア王国の伝統的なしきたりに置いて正式な決闘を行い。
そこで行われた決闘で勝者はどんな願いも聞き入れられると言われておるのだが、敗者はどんな要求ものまなくてはならない。


万一の時は命を失うこともある。


「ようするに…」

「説得してダメなら力づくですわ」

「はぁー…」


結局いい案は浮かぶことなく、会議は終了した。
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