ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第七部可憐な皇女と聖騎士

23.お迎えは派手に

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三日後、エステルは再び祖国に戻って来た。


港近くにはセレーナとヴィオラが出迎えをしてくれた。


「エステル!」

「お嬢様!」


二人は他国に勅使として出向いていたエステルを労いながら抱きしめた。


「皆さんもお疲れ様でした」

「ありがとうございます。アルスター侯爵夫人」

「お久しぶりでございます」


ミシェルと、アリスも軽く挨拶を交わすのだが、何時もならここで気障な真似をするユランの姿が見えなかった。


「あら?ユランは?」

「ええ、おりますよ」


ヴィオラはユランの姿が見えないことに気になりるも、船から降りて直ぐの場所で見つける。


「うっぷ…」

海に向かい嘔吐していた。


「どうしたのかしら?」

「ユラン様が船酔いなど」


乗り物には慣れているユランが珍しいと思う二人だが、普通の船旅ならばの話だ。


「帰りの船はそんなに揺れたの?」

「揺れる…というか」


エルラド帝国から出してもらった船が問題だった。
軍事用の船を用意され船長は軍人であることから帰りは海賊と遭遇したのだが、何を思ったのか船長が喧嘩を売って海の上のレースを始めたり、途中海獣に遭遇して船は大揺れに揺れたりと散々だった。


しかもその海獣の中に人面魚がいてゾッとしたのだ。
見た目は男手口調はオネェ系で何故かユランにアプローチをしていた。


「気持ち悪い…うっぷ!」


夢に出てきそうで恐ろしくて仕方ない。


「ユラン!情けなかとよ」

「無様ですねユランさん」


気持ち悪く吐き続ける最中、さらに追い打ちをかける二人。


「何でいるんだお前等」

ただでさえ気持ち悪いのに追い打ちをかける二人。


「ユランさん、ミルクです!」

「余計気持ち悪いわ…うっぷ!」

絶妙なタイミングで搾りたての温かいミルクを差し出されてさらに気持ち悪さは倍増する。


「おい、しゃきっとしろ」

「何でアンタまでいるんですかね?殿下」

「出迎えだ」


(ついでだろうが!)


クロードが迎えに来たのはエステルでユランはオマケのようなものだと思っている。


「喜べ、お前を迎えに来てやったんだ」

「嘘つけ!アンタがそんなことするわけねぇだろ!」


何時になくにこやかだった。
こういう時はろくでもないことが起きる。


「冗談じゃねぇ!俺は三日間の激務をこなしたんだぞ」

「ああ、今からお前を労ってやる…だから俺の部屋に行こうぜ」

「やめろ!俺はこれ以上厄介事は御免だ!」


絶対に行くものかと思ったのだが、首に何かつけられた音がする。


「わぁー…ピッタリです!」

「なにやってんの?アリス!」

ユランはアリスイ首輪をつけられた。


「お土産に陛下からいただいたんです。魔道具だそうで…」

「なんつーもん貰ってんだよ!」

「私もこう言った道具を作ろうかと…囚人を拘束するのにも役に立ちますし」

「するな!」


エルラド帝国は拷問用の道具も多く取り揃えており、アリスの研究心を刺激していた。


「さぁクロード様、馬鹿を連れて行ってください」

「悪いなミシェル。色々世話になった」

「とんでもありません!」

クロードにお礼を言われ内心興奮する。



「ハーッハッハッ!愚か者達よ!迎えに来てやったぞ感謝するがいい!」


「「「「何でいる!!」」」


そこに現れたのは久しぶりに見たヒューバートだった。


「アイツいたのか」

「ええ、ここまで送ってくださったのよ」


「「「御者かよ!!」」」

一応騎士見習いとして選ばれていたが、エステル達とは部署も違い階級も違う。
見ての通り制服は一般騎士で緑色だったが、優秀な騎士は赤だった。


「フハハ!貴様ら迎えに来てやったことを感謝するのだな!侯爵夫人は直々に俺を護衛にとおっしゃってな!」

「御者が風邪を引いたのでたまたまなのですがね」

セレナが補足する。
アルスター家に仕える御者が風邪を引き、クニッツも遠征舞台に加わっているので護衛がいなかったところ馬小屋の当番をしていたヒューバートを見つけたのだ。


「よく使う気になったわね」


「ヒューバートさん乗馬は下手でも御者はできるんですね」

授業を見ていても解るが、自分で乗る分には問題ないが、人を乗せるのは無理だったが御者としての才能があったようだ。

「ダメな子ほど褒めて育てるのよ」

「オカーサマ…」

ヴィオラの手にかかれば、ヒューバートも小さな子供でしかないようだぅた。

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