ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第七部可憐な皇女と聖騎士

18.末の皇女

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なんとか森を抜けた先で、一度馬を止める。


「大丈夫ですか?」

「はい…」

まだポーっと頬を染めている少女。

身なりは軽装なワンピースを身に纏っているが、気品を感じさせる。
美しい金色の髪に透き通る青い瞳はサファイヤですら劣る程の美しさを持っている。


(なんて美しい方)

アルカディアでもここまで可憐な少女はいない。
少女の美しさは洗練されたものではなく自然の美しさだった。


「助けていただきありがとうございます。騎士ナイトの君」

「はい?」

「絵本に出て来る白銀の騎士様みたい!きゃっ…」


とても可愛らしくとても無邪気だった。
自分の感情に素直過ぎる一面を持つ少女に何処か覚えがあった。


その矢先だった――。


「アントワネット様!」

「あ、バルセル伯爵」


「「「えっ…」」」


数名の護衛をつれてこちらに向かってくる貴族に一同は驚く。


「この時期に森に入られるなど!」

「もう、ガミガミうるさいですわバルセル伯爵」

「貴方様はご自分の立場をお考えください!もし何かあったら女王陛下に顔向けができません!」

中年ぐらいの男性は心底疲れた表情で言い放つが、重要なのはそこではない。


「今、聞き間違いかしら?」

「ああ、女王陛下って言ったよな」

「ええ」

「私も聞きました」


エルラド帝国の女王陛下の側近、バルセル伯爵にすら礼を尽くす存在。

会話の流れから読めば安易に想像がつくが、未だに信じたくないと言うのが本心だった。



「貴方はエルラド帝国第四皇女様なのですよ!」

(((やっぱり!!)))



敵国、エルラド帝国の第四皇女にして。
アルカディア王国の王太子の第一妃候補である。


サリーアントワネットだった。




程なくして、エルラド帝国の宮殿。


シャンデリア宮殿に招待を受けることになった一行。




「この度は我が娘を御救いくださりありがとうございます」


玉座に座り、凛とした佇まいと厳格さを持ちながらも慈愛に満ち溢れた女王に言葉を無くした。


「クローディア・フォン・エルラドと申します」

「ケイン・バルセルと申します」


元は敵国だったにもかかわらずビップ待遇を受け、客人としてもてなされた一同は何とも言えない気分になったままだった。



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