ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第七部可憐な皇女と聖騎士

16.勅命

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エルラド帝国出発当日。


最少人数で勅使として向かうことになったのは何時ものメンバーだった。


「おい、この面子はないだろ」

ユランは早々に辞退したい気持ちだった。


「いやぁん!エルラド帝国に行けるなんて素敵!」

「私、国外を出るなんて初めてです!」



エステルとユランだけでなく、何故か付き添いとしてミシェルにアリスも同行することになった。

騎士だけではなく魔導士もいた方が対面を保つにもちょうどいいとのことだが、明らかに人選ミスではないか。

先日の王族暗殺事件より特別待遇を受けて宮廷師団魔導士として出世した二人も同行するようにと王妃から直々に名がくだされた。


「俺達は旅芸人一座かよ!」

第三者から見れば王家の使者なんて解らない者だが、道中危険もあるのである意味最適だった。

「馬鹿ね!王家の使者だってバレないようにするためにも必要なんだから」

「折角、新しい発明品を作ったのですが…魔道馬車というのですが」

「やめろ、到着する前にあの世行きだ!」


既にこの度に不安以外なにもない。
旅先でこの面子が何をしでかすか解ったものではない。

「つーか、あの二人は!」

「サブローとルーク別の任務よ」

何時ものメンバーで比較的おとなしい二人がいない。
もし暴走組が何かしでかした時は止めてもらおうと他力本願なことを考えていたのだが…


「サブローとルークは侯爵夫人の護衛でスラリア帝国に向かっています」

「「「は?」」」

「この度の婚姻にはスラリア帝国のエカテリーナ陛下にもお行力いただいていおりますのよ」

(((流石女宰相!!)))


普通に考えれば一介の側妃が単身で王の代理としていくなんて不可能だが、それをやってのけるモントワール侯爵夫人はやはり大物だった。


「いつかこの国を乗っ取られるんじゃねぇか」

「オホホホ…光栄ですわ」

「否定しないのかよ」

扇を片手に上機嫌に笑う王妃の目は本気のよう見える。


「ここより国境まで馬をお使いになってください。船は用意しておりますが、道中お気をつけて」

「拝命いたします」

「こちらの手紙を陛下に」

王家の紋章が刻まれた手紙を受け取る。

「陛下には貴方の事は伝えてあります。海を越えれば使者であるバルセル伯爵が迎えに来てくれるでしょう」

「バルセル伯爵ですか…」

「クローディア女王陛下の腹心です」


あらかじめ話をつけているのは信頼できる人間のみ。
アルカディア同様に、エルラドも同じく敵対心持つ人間は少なくない。

長生きに渡り国同士で争っていた犬猿の仲ゆえに致し方ないことなのだが。

「いいですかエステル。貴方はただの勅使ではありません」

「はい」

「今は貴方は我が国の外交官なのです。女王陛下のお心を伺い、架け橋となるのです」

とても重いお役目だったが、双方の確執を少しでも和らげるに絶対に必要だった。

(そうよ、なんとしても成功させなくては!)

悲劇を繰り返さない為にも、なんとしても成し遂げて見せる意気込みながらエステルは騎士として礼を尽くす。

「王妃殿下、この命に代えても必ず成し遂げて参ります」

「頼みましたよエステル」

「ハッ!」


双方の絆をしかっり結びつけるべく、一行はエルラド帝国に向かった。


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