ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第七部可憐な皇女と聖騎士

14.何も知らない父

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エステルが王妃に重要な仕事を任されている頃。


王都に内にあるアルスター侯爵家にて。


「困ったわね…」

手紙を見ながら重いため息をついていた。


遠征に出向いていたロバートからの手紙だった。
ここ数日、遠征に出向いていたのだが、後数日で帰還することが書かれていた。


「どうしましたの?」

「お義母様…」

不安そうな表情をするヴィオラを気遣うガブリエル。

「いいえ、娘と殿下の婚約ですわ」

「一応手紙で伝えておきましたが…これでは読んでませんわね」

「手違いで届かなかったのかしら?」

魔法を使わず船便で届けさせたのが仇になった。


「こんなに早くエステルが了承すると思ってませんでしたし」

「私もですわヴィオラ」

危機感を持ったクロードであるが、ロバートが帰還する前に事が進み過ぎている。

予想外の展開だった。

「モントワール侯爵夫人もノリノリですし」

「ええ、王妃様も早急に二人を結婚させよと…」


あの二人がタッグを組めば最強なので、流石のヴィオラとガブリエルでもどうしようもない。

「ですが、エステルを一番愛してくださる男性は殿下だけ」

「まぁ…私の嫌がらせもめげませんでした」

実はエステルの縁談話を持って来たのはガブリエルだった。
条件のあう男性を選んでエステルと結婚させようと思い、それなりの地位を持つ男を吟味していた。

もちろんちょっとした嫌がらせにすぎないが。

それ以外にもガブリエルは地位が築けない男や財の無い男に孫を渡せないと言って断っていた。

クロードを試す名目でその都度無理難題を言うもクロードは全てクリアして王を陰から守り諜報活動もして国王の信頼だけでなく王族派の大臣にも一目置かれている。


元より才能はるが本気にならなかったのだが…


「ここまで来て認めないなんて言えますか」

「クロード殿下は執念深いわ」

ばっさりと言い切るガブリエル。
執念深さと諦めの悪さは母親以上だったので諦めさせるなんて不可能だった。


「ロバートが折れるか」

「既にお手付き状態だと知ったら夫は…」


二人はロバートが素直に認めるだろうか?と想像を膨らませる。



『決闘だ!!』


安易に想像がつく。


「ないですね」

「はい、ありえません」

母と妻の意見は一致した。
娘を溺愛しているロバートが素直に認めるとは思えない。

「あの二人は、どこまで進んでます?」

「私の見た手ではまだ最後まで手を出していませんわ」

「そうですの?」

以外に生真面目だったのだと思い起こすも、どうやって調べたのか興味を持ちヴィオラに尋ねる。


「その陛下が…殿下に下着を送ったようで」

「はい?」

「その、夜用の下着ですわ」

言いにくそうに恐々と言う。

「あの変態陛下…息子になんてものを!」

「まぁ、使っていないでしょうが」

見た目に寄らず生真面目で純情で理性を持っているので、その辺は信用している。


後はロバートが返ってきた時だろうが、すぐに入れ違いでエルラド帝国に向かうことになるのでその間に対策をしなくてはならないのだった。


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