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第七部可憐な皇女と聖騎士
13.王妃様のお願い
しおりを挟む嫌な予感程当たる。
王妃に呼ばれ部屋に向かうエステルとユラン。
そこには侍女が数名待機しているだけだった。
「よくぞ来てくださいました」
視線を向け侍女を下がらせる。
「急に呼び出してごめんなさいね?火急なのです…人払いをしておりますので」
「人払い?」
「何か問題でも?」
エステルとユランはまた貴族派が王族暗殺を企てているのかとも思ったのだが…
「いいえ違います。ただ厄介な事には変わりありませんわね」
「‥‥と言いますと?」
「私の息子の婚約者候補に貴族派の王女を迎えよとの話が持ち上がっています」
「ですが…」
既に正妃として敵国の皇女を迎える手はずが整っているのにおかしいと思う反面。
「貴族派の姫君を寵妃にして皇族派が選んだ敵国の姫をお飾りと?」
「ええ」
的確な分析力でユランは告げた。
全て的を射ていたので話が早いと思った王妃。
「皇女の傍付きも貴族派が数名います…ですが幸いにも女性騎士は貴方だけ」
「はい」
王太子と王太子妃の傍付き護衛になれる女性は貴族派にいないのだが、問題はそこではない。
「王太子妃となる姫の側近は貴族派が多いのです…このままではいけません」
「はい」
そもそも逆行前の前世を思い出せば、貴族派が王太子妃を孤立させ精神的に追い込んだのが原因だった。
「文化も習慣も違う中単身で嫁がれるならば、不安もおありでしょう…その為にも女性騎士である貴方にお願いがございます」
「はい、なんなりと」
騎士としてできるだけのことをしたい。
その思いに偽りはないのだが、隣で顔を引きつらせるユラン。
「おい…」
「何?」
「安請け合いして大丈夫かよ?そんな簡単に…」
ユランはこの一か月間で察した。
モントワール侯爵夫人や王妃の人使いの荒さに。
安請け合いしてタダで済むはずがない。
「ああ、良かった。では貴方達に皇女を迎える嫁入り道具を準備してくださる?」
「「はい?」」
「それから使者としてエルラド帝国に行ってくださいな」
軽く散歩でもして来いと言う様なノリだった。
「はい?」
「だから言っただろうが!安請け合いするなって!!」
ユランは既に王妃の行動を読むスキルを身に着けていた。
微笑一つでどんな悪だくみを考えているかもわかる故に嫌な予感がしていた。
‥‥とは言え、エステルも気づかないわけではない。
(でも、好都合じゃない?)
前世では双方の国同士は決して友好的ではなかった。
その原因はアルカディア側にも問題があった。
敵国の皇女を受け入れる側であるのに、王太子妃として扱うのではなく敵国の姫としてしか見てなかったことや、どこか上から目線な大臣や貴族達。
この同盟が破られて一番困るのはエルラド帝国なので事あるごとに使者を見下し馬鹿にしていた。
こうした理由があって同盟国となっても友好的ではなかった。
(私達が誠意を示せば対応も変わるはず!)
これはチャンスだと思ったエステルは…
「お任せください」
「おいぃぃ!!何言ってんだ!」
二つ返事で了承してしまった。
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