ある公爵令嬢の生涯

ユウ

文字の大きさ
上 下
233 / 408
第七部可憐な皇女と聖騎士

13.王妃様のお願い

しおりを挟む


嫌な予感程当たる。
王妃に呼ばれ部屋に向かうエステルとユラン。


そこには侍女が数名待機しているだけだった。

「よくぞ来てくださいました」




視線を向け侍女を下がらせる。


「急に呼び出してごめんなさいね?火急なのです…人払いをしておりますので」

「人払い?」

「何か問題でも?」

エステルとユランはまた貴族派が王族暗殺を企てているのかとも思ったのだが…


「いいえ違います。ただ厄介な事には変わりありませんわね」

「‥‥と言いますと?」


「私の息子の婚約者候補に貴族派の王女を迎えよとの話が持ち上がっています」

「ですが…」

既に正妃として敵国の皇女を迎える手はずが整っているのにおかしいと思う反面。


「貴族派の姫君を寵妃にして皇族派が選んだ敵国の姫をお飾りと?」

「ええ」

的確な分析力でユランは告げた。
全て的を射ていたので話が早いと思った王妃。

「皇女の傍付きも貴族派が数名います…ですが幸いにも女性騎士は貴方だけ」

「はい」

王太子と王太子妃の傍付き護衛になれる女性は貴族派にいないのだが、問題はそこではない。

「王太子妃となる姫の側近は貴族派が多いのです…このままではいけません」

「はい」

そもそも逆行前の前世を思い出せば、貴族派が王太子妃を孤立させ精神的に追い込んだのが原因だった。


「文化も習慣も違う中単身で嫁がれるならば、不安もおありでしょう…その為にも女性騎士である貴方にお願いがございます」

「はい、なんなりと」

騎士としてできるだけのことをしたい。
その思いに偽りはないのだが、隣で顔を引きつらせるユラン。


「おい…」

「何?」

「安請け合いして大丈夫かよ?そんな簡単に…」


ユランはこの一か月間で察した。
モントワール侯爵夫人や王妃の人使いの荒さに。

安請け合いしてタダで済むはずがない。


「ああ、良かった。では貴方達に皇女を迎える嫁入り道具を準備してくださる?」

「「はい?」」

「それから使者としてエルラド帝国に行ってくださいな」


軽く散歩でもして来いと言う様なノリだった。


「はい?」

「だから言っただろうが!安請け合いするなって!!」


ユランは既に王妃の行動を読むスキルを身に着けていた。
微笑一つでどんな悪だくみを考えているかもわかる故に嫌な予感がしていた。


‥‥とは言え、エステルも気づかないわけではない。


(でも、好都合じゃない?)

前世では双方の国同士は決して友好的ではなかった。
その原因はアルカディア側にも問題があった。

敵国の皇女を受け入れる側であるのに、王太子妃として扱うのではなく敵国の姫としてしか見てなかったことや、どこか上から目線な大臣や貴族達。

この同盟が破られて一番困るのはエルラド帝国なので事あるごとに使者を見下し馬鹿にしていた。

こうした理由があって同盟国となっても友好的ではなかった。


(私達が誠意を示せば対応も変わるはず!)


これはチャンスだと思ったエステルは…


「お任せください」

「おいぃぃ!!何言ってんだ!」


二つ返事で了承してしまった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!

水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。 シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。 緊張しながら迎えた謁見の日。 シエルから言われた。 「俺がお前を愛することはない」 ああ、そうですか。 結構です。 白い結婚大歓迎! 私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。 私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

【完結】婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花
恋愛
「お前はいつものろまで、クズで、私の引き立て役なのよ、お姉様」  私を蔑む視線を向けて、双子の妹がそう言った。 「本当、お前と違ってジュリーは賢くて、裁縫も刺繍も天才的だよ」  愛しそうな表情を浮かべて、妹を抱きしめるお父様。 「――あなたは、この家に要らないのよ」  扇子で私の頬を叩くお母様。  ……そんなに私のことが嫌いなら、消えることを選びます。    消えた先で、私は『愛』を知ることが出来た。

処理中です...