ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第六部貴方に捧げる薔薇

14.原因

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騎士見習いとして雑務をこなすエステルは業務にもすっかり慣れていた。


エステルの働きぶりを気に入ったフリージア公爵は既に秘書官としての仕事を一任していた。


「アルスター卿、君に問う」

「はい、何でしょう」

書類に目を通しながらエステルに声をかける。
エステルも書類の整理をしながら手を止めずに返事をする。


「今年の予算が浮いた場合、君などうする」

「そうですね。まずは軍の予算を見直し、可能であれば貧しい民への援助に使います」

「ほぉ?」

「特に助成金に回したり、不作の地への救済措置をしたいです」


毎年国の為に使われる予算はあるが余ることもある。
その時にどう使うのが友好的か、下手に余ると他の貴族が使ったり、横領する大臣もいるので常日頃から徹底し管理している。

国に納められている税金を、公的なモノにどう使うか。
その使い方によって平民が理解を得ることで、今後増税をする時も円滑にできる。

「お金は残しておいて食べられませんので、お金以上に価値のあるものにすべきかと」

「なるほど…」

フリージア公爵はエステルの考えに共感する。
下手に予算で余ったお金を残しておくよりも別の形で平民達が理解してくれるように使えばいい。

その使い道は、騎士学校などの寄付や、小学校の援助。
そして農作物の為に当てれば、平民達は自分達が収めた税金を自分達の為に使ってくれるのだと理解してくれる。

「お金として残しておくよりも食料にすれば、安全かと」

(この少女は…)

フリージア公爵はエステルの聡明さに驚くばかりだった。
国家予算を寄付を偽り横領する官僚は少なくないので、その使い道に困っていた。


平民が収めた税金を勝手に使い。
教会に支払われる寄付金も年々増えて行き、不正の疑惑が上がっている。

本来寄付金を必要としている孤児院は困窮しているのに、肥しを増やしているのは大きな教会ばかりだった。


「教会にへの寄付金はどう考える」

「寄付が必要な教会とそうではない教会があります」

「では、君ならばどう使う」

予算の書類を見せられる。
国自体は赤字状態であるのに、教会は裕福だった。


(数年後国は傾く…でも貧しいのは民ばかり)


国の国庫を使い果たしたのが後の王妃とされるが、そんな多額な予算を使い切るのは不可能だった。


(国は傾き始めている)

予算を見せられ、エステルは国の財政が徐々に圧迫されていることに気づく。
先代国王も浪費家であるが、王妃とモントワール侯爵夫人が改革を行っているおかげで無駄な浪費は止められているが、赤字であることは変わりない。


(国の圧迫を避けなくては…)


毎年物価の値段が上がり国民への税金は上がる一方。
貴族や大臣達は国の赤字は税金を増やすことでまかない、負担は国民に追わせればいいと考える一方だった。


にもかかわらず貴族達は贅沢な暮らしを辞められない。
全てのしわ寄せを追う彼等は日増しに貴族達への不満を抱き、王にも不信感を抱く始末になっている。


(こうした原因も革命になったのよね…)


革命が本格的になった頃、既にエステルは投獄されていた。

幸か不幸か、牢獄の中からの方が革命が起きる原因を耳にしたのだ。


王族暗殺未遂。

国庫を圧迫させた王妃。

王妃のいいなりとなった国王。

そのすべての原因となったのは貴族派の貴族達によるものだった。

ならばその流れを変えなくてはならいと思うエステルだった。

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