ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第六部貴方に捧げる薔薇

13.未来の光

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執務室を出て行くエステルを不安げに見つめるミシェル。

「ミシェル、彼女は危ういわよ」

「え?」

「かなり厄介な運命を背負わされているわ」

プリセラの言葉にさらに不安を抱くミシェル。

「師匠、エステルをどう思われます」

「そうね、私は悪い子には見えないわね…いいえ、むしろ彼女は優しすぎる性格ね」

洞察力と観察力に優れたプリセラは視る能力に特化している。
その中でも善悪を見分けるうえで魔力の色を判別することができるのだった。


「師匠…」

「あの子は大きすぎる運命を背負わされ雁字搦めにされているわ…故に誰もが持って当たり前のおものや感情が欠落しているのも仕方ないわね」

「気づいてたのですか」

「ええ」

僅かな時間しか話をしていないのにエステルの性格を見抜くプリセラに畏れる。


「人と違うと言うのは必ずしも幸福とは言えないわ」

「エステルが不幸だと?」

「幸福とは言えないけど不幸とは言わないわ」

水晶玉を見つ、エステルの花を見つめる。


決して幸福な幼少期を過ごしたわけではないが、プリセラはエステルを不幸とは思っていなかった。


「幸せのも不幸もその人次第よ」

「師匠!」


幸せは誰かに決められるようなものではない。
自分自身で決めるものだとプリセラは思っていた。


セイレーンの末裔であり、誰よりも人魚の血筋を色濃く受け継いでいるミシェルも他人から見れば幸せとは言い難いかも知れない。

他人に理解されない孤独を背負いながらもミシェルは幸せだった。

力は弱くとも優しい姉に可愛がられて来た。


「ミシェル、この世にはどうしても変えられない運命があるわ」

「はい…」

「でもね?運命だからと言って諦めてはダメ」


容易に変えることができない運命。
それは時に人を縛り付けてしまう糸でも、その糸を解くこともできる。


「どうしても頑張らないといけない時に諦めてはいけないの」

「はい師匠!」


いずれ、大きな波が押し寄せる日が来る。
その時大きな選択に迫られ、ツライ立場になる日が来るかもしれない。


その時に選択肢は一つではないと思って欲しい。


(いずれこの国に影響を与える子達…)

プリセラはエステルのみならず運命を背負うのは他にもいた。

その一人がミシェルだった故に願った。


(どうか未来を切り開いて…)


未来が明るいモノであるように。

女神・ミューズの加護があらんことを切に祈るのだった。

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