ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第五部見習い騎士

29.苦情処理所

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何故王宮に来てまでこんな目に合わないといけないのか。


「移動命令だ」

「はい?」

「今日からお前はクロード殿下のパシリ…お世係りだ」


咳払いしながらも副団長に告げられる。


「どういうことですかね…しかも今パシリと」

「聞き間違いだ。見習いとしてこのような誉はない」

お世話係と言えば身辺のお世話を意味する。
執務室の掃除にお茶の用意と書類の整理に荷物持ちという雑用。


「パシリじゃねぇか!」

「感謝せよ。これほど重要な仕事はあるまい…あの不良王子…ゴホン」

(今不良王子って言ったよな!)

優等生で品行方正のエドワードと違い、昔から何かと手を焼かされていたクロードは近衛騎士達にとっても問題児だったのだ。


「とにかく命令だ。今日付けでクロード殿下の補佐官パシリだ」

「俺は苦情処理所じゃねぇぇぇ!!」

どう考えても厄介な仕事を押し付けられとしか思えない。




「くっそー…何で俺ばかり」


最悪な配属先の次は厄介な配属先に変更になっただけだった。


「大体美人な女性騎士所か侍女もいねぇじゃねぇか」

潤いが足りずグチグチ文句を言っているユランは癒しが足りなかった。

「秘書官は怖いおばさんが多いし、配属先はむさ苦しい男ばっかりだしよ」

「ユランさん、何しに来たんですか」

「ナンパもできやしねぇ」


見習いとして王宮に来ているのであって出会いを求める場ではない。

「不謹慎ですよ」

「もう少し女の子がいると思ったのに最悪だぜ」


王宮には美人の侍女が沢山いてハーレムだと思っていたが見事に当てが外れたと愚痴る。


「しかも、学園を出ても俺はこれか?」

「でも、クロード殿下に何かあったのでしょうか」

詳しくは聞いていないが、様子が変だと言われている。
ユランに頼むということは、他の侍従や近衛騎士では手に負えないのではと、心配する。


「どうせ病気だろ」

「え!病気!!」

ルークは真っ青になりながら慌てふためく。


「殿下の病気は薬じゃ治られねぇよ」

「ええ!」

クロードの病名が何なのか理解しているので、医者なんて無意味だだった。


(恋の病に効く薬はねぇよ)


ルークはオロオロしているがユランは関わりたくないと思った。

(絶対関わりたくないぜ)

エステルの事は心配であるが、他人の色恋に口を出してもろくな目に合わないだろう。


「どうしましょうユランさん!とにかくアリスさんに癒しの魔法を…いいえミシェルさんに!」

「いや意味ねぇだろ!それよか悪化するわ!」


ここでクロードが不治の病だなんて言えばどうなるか解り切ったことなのだが‥‥


「クロード様が病気ですって!」

「大変です!」


草むらから姿を見せる二人。


「どわっ!」

「二人共何処から!」


音まなく背後から現れる二人に頭を抱え、ミシェルとアリスにも知られることになるどころか。


「お悩みならお任せを」


「いや、お前には無理だろ」

官僚補佐見習いとして王宮に仕えているジークフリートも参戦する始末になった。

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