ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第五部見習い騎士

28.側近の苦悩

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休憩時間が終わり逃げるように部屋を出て行ったエステルを見送るクロードは終始笑顔だった。



「兄上、何処かに行かれていたのですか?」

「フフッ…さぁな?」


とても機嫌が良くにやける表情にエドワードは一言。


「何ですその笑顔…気色悪いんですが」

「そうか?」


何時もなら睨む程度はするが、今のクロードはこれ以上ない程機嫌が良かった。


「殿下はどうされたのだろうか」

「さぁ」

執務はいつも以上のスピードだった。
書類作業なんて面倒だと文句を言いながらではなく鼻歌を歌う程なので側近は怯えている。


(エステルの奴困っていたな)


脳内に蘇るのは真っ赤になって怒るエステルの姿。
今はクロードの事で頭がいっぱいだろう。

自分の事しか考えられずにいるエステルを想像するだけニヤけてしまう。


(少しは俺の事で悩めばいい)

自分ばかりエステルを好きで苦悩していたのだから王宮にいる間は悩めばいいのだと思った。


(手は出さないが…あれぐらいはいいだろう)


クロードの手を出す基準とエステルの手を出される基準はかなり誤差があるのだが、温室育ちのエステルにとっては恋人同士になってもいない男女が破廉恥だと思っているが、婚約者ならば許される範囲だった。


一応クロードもギリギリで踏ん張っている。


(あそこで思いとどまったのを褒めてやりたいな)


実は理性がまずかったのだ。
あのまま押し倒して自分のモノにしてしまいたいと思ったが、無理矢理手を出したら何かが壊れてしまう様な気がした。


(エステルが俺を求めるまで…)


自分に言い聞かせながらも我慢ができるのだろうか。


「エドワード」

「何です兄上」

傍にいるエドワードにため息をつきながら相談をする。

「恋愛とは難しいな」

「はぁ?」

「忍耐が必要で、歯がゆいものだ」

弱弱しい表情をして薔薇を手に取りため息をつく。


「兄上ぇぇ!」

「殿下が壊れた!!」

「大変だ!直ぐに医師を呼べ…精神科医を呼ぶのだ!!」

クロードの何気ない言葉にエドワードや侍従に近衛騎士は慌てる。
ついにクロードがおかしくなったと執務室はパニック状態となっていた。


「失礼しまーす」

「書類をお持ちし…どうしたんですか?」

執務室にタイミング悪く入って来たユランとルークが入って来た。


「ちょうどよかったユラン!何とかしてください」

「は?」

「お助け屋のユラン!」


変な通り名がつけられている。


「王太子殿下、何か悪い物でも食べたんですか」

「ユランさん!失礼ですよ」

意味が解っていない二人はキョトンとする。


「おい貴様、これより任務を与える」

「は?」

「殿下をどうにかしろ」

近衛騎士の一人が指さし無茶な命令をする。


「いや、俺はこの後馬小屋の掃除…」

「命令だ。殿下の乱心を収めよ。命令だ」

「はい?」


無理難題を押し付けられるユラン。


「ルーク、これは王太子としての命令です。兄を正常に戻してください」

「あの…意味が解りません」

ルークも同様にエドワードから無茶なことを言われてしまっていた。


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