ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第五部見習い騎士

16.初日

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正式な騎士とは異なり見習いの仕事は、雑務を行うこと。

団長の執務室の掃除や書類の整理にお茶を淹れるのはもちろんのこと。

秘書官としても使えているセスの下に着き雑用をする。


‥‥のだが。


「長かった」

「長かったわ」


何故かセスとエーファがホロリと涙を流していた。


「思えばここに配属になって一年、同期は止めて行くし」

「後から入った新人は耐え切れず去っていく」

「え?」

二人の話を聞けば、エステルの前にも後輩は入って来たが、一ヶ月と持たなかったらしい。

「そんなに厳しいのですか?」

「宮廷貴族出身には耐えがたいでしょうね」


セスの言う宮廷貴族とは領地を持っていない貴族の事を言う。


「特に温室育ちの貴族がここのしごきに耐えられるるはずがありません。団長は見た目優しそうに見えて鬼です」

「うちは特に武闘派で、体育会系なので…罰則が」

先程言っていたようにものだろうかと考えるが、特に厳しいとは思わなかった。


「別に体罰を与えられるわけではないですし」

「エステルさん、温室育ちの貴族がまともに馬小屋の掃除に耐えられるとお思いですか?貴族にですよ?」

「えーっと」

「後は二か月も朝から晩まで雑巾がけをさせられた侯爵家の三男坊がいましたね」

(雑巾がけ…)

メトロ学園でも罰則はあったのを思い出すが、厳しい訓練を終え試験をくぐり抜けた後に憧れの職種について雑巾がけを毎日させられたら心も折れるだろう。


「しかも貴族様は掃除も満足にできないんですから笑っちまいますよ!ギャハハ!!」

「未だにお茶一つ淹れられない奴に言われたくないだろうな」

「別にそんなの役に立たないし!」


喋りながらも二人はきっちり手を動かし書類の整理をして、次の作業に移る。


「書類はここのを全部、会計の仕事も僕達がしますので」

「はっ…はい」


大量の書類を補佐の二人で片付けて行かなくてはならないなんて大変だったのではないかと思うが、二人は首を横に振った。

「うちはまだマシだよね」

「そうだな…第三騎士団よりはな」

冷や汗をかく二人にエステルは首をかしげるが‥‥




その頃第三騎士団では…



「これより訓練を行う」


第三騎士団長の号令により全員が整列し、あろうことにも…


「全員制服を脱ぎ今日も乾布摩擦を行う」


「えっ!」


第三騎士団団長は、平民出身であり。
根っからの軍人体質で常に肉体を鍛えることこそが国を、王族を守ることとだと考えている。


「いいかお前達!私達は誇り高き騎士だ。騎士たるもの常に体を鍛えぬくのだ!」

「「「ハッ!!」」」

第三騎士団全員は既に制服を脱いで上半身裸になっている。


(マジかよ!)

絶対にやりたくないと思っていたユランだが。


「見習い、お前も脱げ」

「えーっと…」

「仕方ない俺が脱がしてやろう。世話係だからな」


「結構です!やめっ…ぎゃあああ!!」

無理矢理制服をはぎ取られてしまったユランはされるがままだった。

(なんでだよ!!)


むさ苦しい連中しかいない配属先になり、精神的な苦痛を味わうユランだった。






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