ある公爵令嬢の生涯

ユウ

文字の大きさ
上 下
173 / 408
第五部見習い騎士

14.見習い騎士就任

しおりを挟む



早朝から侍女達にこれでもかと世話をされ。
あらかじめ与えられた制服を身につけ、軽くオシャレをさせられそうになったので必死に止める。


「お嬢様、そのような質素な」

「私は騎士として行くのよ。必要なのは剣だけよ」

「そんなぁぁぁ!!」


お傍付き侍女のセレナは落ち込む。
見習い騎士としての就任ならば晴れ姿になるのだからとせめてお洒落をと気合を入れていた。


「急がないと遅れてしまうわ。クニッツ馬車を」

「かしこまりましたお嬢様」

泣き出すセレナを無視してクニッツに馬車を用意させ、その場を後にする。


「準備ができたようだね…エステル」

「はい、お父様」

支度が整ったのか確認しに来たロバートだった。


「旦那様ぁー!!」

涙目で訴えようとするセレナだったが、ロバートはエステルを見て涙ぐんでいた。


「いい…似合っている!!」

涙ながらに我が娘の晴れ姿が決まっており涙している。


「ああ、なんて凛々しいんだ。君にはどんな美しい装飾品も必要ないね」

「おっ、お父様…」

べた褒めする父に若干引き気味だったが、着飾らされるよりはましだった、

「第二騎士団ではないのか不服だが…」

「むしろいい経験になると思います」

「そうか…」

第一騎士団を率いる騎士団長は優れた人柄でもある為、疑いようはない。

ロバートとも上位貴族故に苦楽を共にし、現在の近衛騎士団の礎を築いているのでとても信頼をしている。


信頼していても騎士団は女性がほとんどいないので不安を抱くなと言う方が無理な話だった。



そして就任当日。
エステルは緊張しながらも挨拶に向かった。


「ここね」

扉に手を伸ばす。


「失礼します公爵閣下」



「やぁ、待っていたよ」

エステルを出迎えてくれたのは第一騎士団団長、フリージア公爵。
王族の本家筋とも親族にで元王女殿下を妻に娶った人物でありながらの身分をひけらかそうとはしない人徳者として慕われている。


元は次男であるにもかかわらず才能故に長男を追い越し跡継ぎになった。

「入団試験お疲れ様」

「もったないお言葉にございます」

上位貴族を父親に持ちながらも相手は王族の親族でもある。
作法を間違えたり無礼な真似をすればクビが飛ぶので慎重にしなくては…と思うが。


「閣下!お茶ってこれでよかったですか?」

「この馬鹿!紅茶にレモンを突っ込むな!脳筋が!!」

奥の方が随分と騒々しい声が聞こえた。


(聞き間違いかしら?)


きっとそうに違いないと自分に言い聞かすのだが…


(え?女性騎士?)

現れたのは女性騎士だった。


「おい、いい加減にお茶ぐらい満足に淹れられないのか!」

本を片手に起こる男性には見覚えがあった。



「セス先輩?」


学園でお世話になった騎士科の先輩。


セス・アクロスがいた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛

Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。 全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)

アリシアの恋は終わったのです【完結】

ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。 その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。 そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。 反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。 案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。 ーーーーー 12話で完結します。 よろしくお願いします(´∀`)

下げ渡された婚約者

相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。 しかしある日、第一王子である兄が言った。 「ルイーザとの婚約を破棄する」 愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。 「あのルイーザが受け入れたのか?」 「代わりの婿を用意するならという条件付きで」 「代わり?」 「お前だ、アルフレッド!」 おさがりの婚約者なんて聞いてない! しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。 アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。 「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」 「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」

死に戻り令嬢は橙色の愛に染まる

朝顔
恋愛
※02/13 本編最終話、ヒーロー視点の二話を修正して再投稿しています。 合わせてタイトルも変更しています。 塔の上から落ちて死んだ死んだミランダ。 目が覚めると、子供の頃に戻っていた。 人生をやり直せると分かった時、ミランダの心に浮かんだのは、子供時代の苦い思い出だった。 父親の言うことに従い、いい子でいようと努力した結果、周囲は敵だらけで、誰かに殺されてしまった。 二度目の人生では、父や継母に反抗して、自分の好きなように生きると決意する。 一度目の人生で、自分を突き落としたのは誰なのか。 死の運命から逃れて、幸せになることはできるのか。 執愛の色に染まる時、全てが明らかに…… ※なろうで公開していた短編(現在削除済み)を修正して、新たにお話を加えて連載形式にしました。 プロローグ 本編12話 エピローグ(ヒーロー視点一話)

私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】

青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。 そして気付いてしまったのです。 私が我慢する必要ありますか? ※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定! コミックシーモア様にて12/25より配信されます。 コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。 リンク先 https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/

誰にも愛されずに死んだ侯爵令嬢は一度だけ時間を遡る

ファンタジー
癒しの能力を持つコンフォート侯爵家の娘であるシアは、何年経っても能力の発現がなかった。 能力が発現しないせいで辛い思いをして過ごしていたが、ある日突然、フレイアという女性とその娘であるソフィアが侯爵家へとやって来た。 しかも、ソフィアは侯爵家の直系にしか使えないはずの能力を突然発現させた。 ——それも、多くの使用人が見ている中で。 シアは侯爵家での肩身がますます狭くなっていった。 そして十八歳のある日、身に覚えのない罪で監獄に幽閉されてしまう。 父も、兄も、誰も会いに来てくれない。 生きる希望をなくしてしまったシアはフレイアから渡された毒を飲んで死んでしまう。 意識がなくなる前、会いたいと願った父と兄の姿が。 そして死んだはずなのに、十年前に時間が遡っていた。 一度目の人生も、二度目の人生も懸命に生きたシア。 自分の力を取り戻すため、家族に愛してもらうため、同じ過ちを繰り返さないようにまた"シアとして"生きていくと決意する。

処理中です...