ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第四部帰省とお家事情

64.ダークホース

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強制的に締めくくった二人のお陰で夜会は再会される。


「フッ、まぁ良く解らんがいい」

「貴方は本当に単純ですね。羨ましいですわ」

ヒューバートの馬鹿さに今日だけは羨ましいと思った。

図々しさに図太さはピカ一だろう。
学園の時もだが、ヒューバートの神経は何処までも図太いとさえ思ったのだ。


「ならば俺を敬うがいい!」

「それは嫌です」

「何!生意気な」

えっへんと威張るも、エステルはヒューバートに対しての態度を改める気は無い。


「夜会に男装して来るのは貴様ぐらいだ」

「それはどうも」

「褒めていない!だが…心優しい俺がダンスの相手もいない貴様と踊ってやろう」


気づくとワルツの音色が聞こえ、男女はダンスを踊っている。


「貴様の恰好では誰も踊ってくれまい!感謝するがいい。ハーッハッハッ!!」

胸を張って大笑いをするヒューバートに誰もが思ったのは。


『こいつ馬鹿だ』だった。


特にエステルにダンスを申し込もうとも思っている男性陣はまずないだろうと思った。


「アイツ身の程を弁えないな」

クロードが蔑んだ視線を送る。


「馬鹿の癖に」

アルフォードも似たような視線を浮かべる。


「留年の癖に」

アクセレイも同様だった。


三人はダンスのパートナーをエステルに申し込もうと思っていたのだ。


「殿下はお気になさらず他の姫君をどうぞ」

「断る。アクセレイ…お前こそ気にしなくていいぞ」

早速バトルが始まり先手必勝を打つアクセレイに対してクロードも引く気は無かった。


「クロード殿下に男色の噂が流れるとまずいのでは?」

「問題ない」

「流石不良王子ですね。男の相手もできるとは」


「喧嘩売ってるのか、この似非紳士」

見た目は非常に美しく紳士の鑑に見えるが中身は真っ黒なアクセレイだった。


「貴方こそその腹黒な性格をどうにかしたらどうですか?カルロ殿を失脚させるべくあの手この手を使ったではありませんか」

「邪魔者を排除する為だ」

エステルの邪魔になる人間を早々に排除すべく、この一年色々動いていた。


「若いですな二人共」

「ドナルド…」

「ですが青春は今のうちにしておくべきですぞ」


茶々入れをするドナルドはニヤニヤ笑っている。
しかしここで会話に混ざらないアルクフォードが気になる二人。


彼はというと。


「アルフォードぉぉぉ!!」

「何をしている!なんて抜け目のない男だ!」


ちゃっかりエステルをダンスに誘いエスコートしている。

隅っこでズドーンと落ち込むヒューバートを見るとフラれたと考えるのが妥当だろう。



「何だ?騒々しい」

「どうかしましたか?」


二人はしれっとした表情をしながら今からダンスを踊りに行く準備をしている。


「エステル、踊るのか」

「はい、当初はその予定がなかったのですが…」

男装したまま男性と踊れば嫌な噂が流れることを心配したのだが…


「気にしなくていい、俺は普段滅多に社交の場に出ないからな」

「ありがとうございますアルフォード様」

無表情で愛想の欠片もないが、ちょっとした気遣いがエステルを安心させる。


((この策士!))

うっかりタイミングを無くし、結局二人はダンスを誘うことができなかった。



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