ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第四部帰省とお家事情

52.鑑定

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水晶玉に映し出されたオーラ―は銀色だった。
僅かに青みがかかっているが、銀色が勝っており、誰もが言葉を無くす。


「銀色はかつて聖騎士や、聖女が賜った色じゃない?」

「そうなんですか?ミシェル様!」

最初に声を上げたのはミシェルだった。
神話の伝説や、聖女について誰よりも詳しいミシェルの言葉に説得力がありアリスが尋ねる。


「ええ、銀色は特別なのよ」

「歴代の聖女や聖騎士に賢者と呼ばれる者達は銀色のオーラを纏っている」

その特殊なオーラ―を持つエステルに視線が集まる。

「アルスター家初代当主のオーラ―も銀色だったと聞いている。なるほど」


ドナルドは以前からエステルに対して他の令嬢とは異なる魔力を持っているのでもしやと思っていた。


「白銀のオーラ―は稀有な存在。故に重宝される」

「何故なら白銀のオーラ―を持つ者は音楽の祝福を得やすいからな」

ドナルドとロドリゲスはこれまでエステルが演奏すれば、空気が澄み渡り、聞く人に癒しと安らぎを与えておることに不思議だと感じていた。

まだ幼い子供に癒しの魔法を使えるとは考えにくいが、エステルに他意はなく無意識だったことと。

精霊が自ら力を貸していれば納得がいく。


「初代アルスター家の当主は女性であったとも記されておる」

「先代が?」

「さよう、そなたは先代のエルシア殿によく似ておる」

懐かしそうに言うドナルドはまるで知っているかのようだった。


「水晶玉が…」

「やはり血筋は疑いようがない…これほど輝くとは」

水晶玉が強い銀色の光を放つ。
まるでエステルの存在を祝福するかのようだった。


「さて次はジュリエッタ殿。そなたも鑑定させてもらおうか」

「あ…はい」

恐る恐る水晶玉に手を差し伸べようとした時だった。

バチ!

静電気が走る。

「え?…きゃあ!」

まるで拒絶するかのように水晶玉が拒否を示した。

「なっ…なんですの」

手に火傷を負ってしまったジュリエッタは手を抑える。


「この水晶玉は三種の神器の一つ、女神に拒絶されたか」


女神に拒絶される。
それはすなわち罪人を意味している事になる。

「水晶玉には一切の反応なし…妙だな」

「親子ならば紋章が浮かび上がるか、水晶玉の色が変わるはずだ」


ロドリゲスは水晶玉をじっと見つめるも一切の反応はない。
それどころか水晶玉の輝きが薄れているようだった。

「既にロバート殿にも鑑定をしてもらっておる。もちろんヴィオラ殿にもな…」

「アルスターの血筋はしっかり受け継いでいるはずにもかかわらず、何故だ」

ジリジリと詰め寄って行く。
ジュリエッタを少しずつ追い詰めていく。

「鑑定に間違いがあっただけではありませんか?その程度で疑いをかけるなど…」

ラウルがジュリエッタを庇う様に言い放つ。
周りは既に呆れかえり何も言えなかった。


この水晶玉は女神が初代聖女に贈った物だった。
今でもその力は衰えることないし、先程立証されているのに信じようとしないラウルは愚かとしか言いようがない。


「そもそも、エステルが初代様の血を誰よりも受け継いでいること自体ありえません」

「そうですわ。これは長女というだけで当主になれただけにすぎません」


どうあってもエステルを認めようとしない二人。

「ほぉ?貴方達は女神を侮辱する気か」

クロードは嫌悪感を隠すことなく言い放つ。

「この国の最高峰の女神ミューズを馬鹿にし、聖女を侮辱し王族を侮辱するか…何時に間にそんなに偉くなったんだ?不敬罪で済まされないぜ」

「アルスター伯爵夫妻…これ以上失望させないでください」

王族を代表して二人は毅然とした態度で言い放つ。


「王族を侮辱した罪は軽くない」

「お待ちください…私達は!」

「言い訳は聞き飽きた。それらの誠意の無さにほとほとあきれ果てている」

クロードはこの期に及んでエステルを侮辱し続ける二人を許せなかった。

「クロード殿下」

「ああ、次にヘレン嬢の鑑定を行う」

「ヘレンを!」

水晶玉を持ってこさせヘレンに近づける。

「水晶玉に触れろ」

「お待ちください。そのような…」

ジュリエッタは焦りだし、止めようとするが叶わない。

傍に控えていた衛兵達が許さなかった。

「何をするの!離しなさい!」

「ご命令ですのでなりません」

力で押さえつけられれば敵わないジュリエッタだったが、抵抗を辞めることはなかった。


「見苦しいぞ。それとも何か問題があるのか?」

「それは…」

「ないならばできるだろう?」


ジュリエッタは真っ青な表情をする。
なんとしても止めなくてはと思ったが、叶わなかった。

「何を怯えて追うのです義母上。ヘレン触れるんだ」

「カルロ様!」

「後ろめたいことがないならば堂々とすべきなのですから。ヘレンはアルスター家の姫君であることに間違いはない」

「はい、私はアルスター家の娘です。私こそが!」


カルロの後押しでヘレンは自信満々に言い放つ。
遠まわしにエステルはアルスターの娘ではないと言い放っていいたが、既に周りはヘレンの世迷言だとしか思っていなかった。


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