ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第四部帰省とお家事情

51.容疑

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三人の元老院の中でもドナルドは別格だった。


ラウルとジュリエッタには見えないのだが、相手を威圧させ金縛りしていた。


(なんてすごい威圧感なの)

魔力と異なり体からあふれ出るマナの力でオーラを生み出し、他人を恐れさせることができるのは限られた人間だけだった。

魔力がない者でもヒシヒシと感じるのだが、二人はどうにも感が鈍かったが体は正直だった。

僅かに恐れを感じている。


「あっ…」

「これは…」

ガクガクと震えるラウルとジュリエッタは膝をつきそうになるが…

ドサッ!!

「ヘレン!」

「どうしたんだヘレン!」

その場で倒れこむヘレン。
かろうじて意識はあるが支えてもらわなければ立つことも叶わなかった。

「愚かな、この程度で倒れるとは」

「元老院様、何をなさったのです」

「少しばかりオーラ―をぶつけただけじゃ。精霊の加護があるならばこの程度耐えることは可能じゃ…しかし妙じゃな」

あっけらかんと言い放つもレオナルドはとぼける。

「何故この娘は倒れたのか…いかに魔力がなくとも少しでもアルスター家の血を受け継いでいれば耐えれぬはずはない」

「えっ…」

「夫人は別としても何故かの?」

現にラウルはかろうじて立つことはできているのに対して、ジュリエッタとヘレンは立つことができないでいた。


いくら魔力を受け継いでいないにしても耐え切れないわけがない。


「確かに…」

「いくら何でも、おかしいわね」

レオナルドの言葉は説得力があり誰もがおかしいと思う。

「姉は平気のようだが、同じ姉妹でここまで優劣がでるとは妙じゃな」

「何をおっしゃりたいんです。ヘレンが私とラウルの子供ではないと?」

「そんなことは一言も言っておらんぞ?何をムキになっておるのだ」

「っ!!」

ニヤリと笑うレオナルドに誘導されているジュリエッタは我に返る。


「えっ…まさか」

「でも、そう考えると納得がいくわね」

「ああ」

大勢の前で声を荒げ、失言を繰り返しあまつさえ自分の首を絞めていた。


「口を慎め!」

「申し訳ありません…ですが!」

「ヘレンは私とお前の子だ。何を狼狽えるのだ」


ジュリエッタは口を噤むも、既に疑惑の声は溢れており居心地の悪い状況になった。


「元老院様、一体何をおっしゃりたいのです」

カルロはヘレンを支えながら尋ねる。
回りくどい言葉ばかりを言われて訳が分からなかったのだ。


「…愚か者めが」

ボソッと囁くレオナルドの声はカルロに聞こえなかった。


「何か?」

「いや、そうじゃな。回りくど過ぎたようじゃ」


レオナルドは懐から水晶玉を取り出す。


「先程そなた達には罪状を言い渡した。ただし放火事件に関しては関係ないと申したな」

「ええ、もちろんです。愛しい我が子を殺すなどできましょうか」

「そうか、ならばその娘が腹を痛めて産んだ子でなければどうじゃ?」

「はい?」


ジュリエッタの目を見据えて告げられたのはとんでもない言葉だった。


「エステル殿、そなたにはとても酷な現実を突きつてしまうが…」

傍に近づきそっと手を取るロドリゲス。

「そなたにはとても酷な事を言うが…思い当たることがるはずだ」

痛々しそうに見つめるロドリゲス。
まだ若すぎるエステルにはとても酷なことを言っているが、真実を受け入れて欲しいと告げるが…


「はい、心当たりがいくつか」

「エステル、お前はどこまで私の顔に泥を塗るのです」


「黙らぬか、ソナタの発言を許した覚えはない!」

「なんなら、今すぐ牢屋にぶち込んでも良いぜ?既に罪を重ねているんだからな!」

ロドリゲスとは反対にアンドリューは剣を握り脅しをかける。


「お前は大人しくしておれ。エステル嬢、真実を明らかにする為にも鑑定を今一度受けてくれぬか?」

「はい…」

差し出された水晶玉に触れるように言われ水晶玉に触れると紋章が浮かび、同時に色が変わる。

「これは…」

水晶玉に宿った色は銀色だった。


「次にジュリエッタ殿。そなたも鑑定させてもらう」

「私も…ですか」

「そうじゃ。疑いを晴らすためにもな」

手を差し出し水晶玉に触れように促された逃げることはできなかったが、その容疑は明らかになるきっかけになったのだった。
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