146 / 408
第四部帰省とお家事情
51.容疑
しおりを挟む三人の元老院の中でもドナルドは別格だった。
ラウルとジュリエッタには見えないのだが、相手を威圧させ金縛りしていた。
(なんてすごい威圧感なの)
魔力と異なり体からあふれ出るマナの力でオーラを生み出し、他人を恐れさせることができるのは限られた人間だけだった。
魔力がない者でもヒシヒシと感じるのだが、二人はどうにも感が鈍かったが体は正直だった。
僅かに恐れを感じている。
「あっ…」
「これは…」
ガクガクと震えるラウルとジュリエッタは膝をつきそうになるが…
ドサッ!!
「ヘレン!」
「どうしたんだヘレン!」
その場で倒れこむヘレン。
かろうじて意識はあるが支えてもらわなければ立つことも叶わなかった。
「愚かな、この程度で倒れるとは」
「元老院様、何をなさったのです」
「少しばかりオーラ―をぶつけただけじゃ。精霊の加護があるならばこの程度耐えることは可能じゃ…しかし妙じゃな」
あっけらかんと言い放つもレオナルドはとぼける。
「何故この娘は倒れたのか…いかに魔力がなくとも少しでもアルスター家の血を受け継いでいれば耐えれぬはずはない」
「えっ…」
「夫人は別としても何故かの?」
現にラウルはかろうじて立つことはできているのに対して、ジュリエッタとヘレンは立つことができないでいた。
いくら魔力を受け継いでいないにしても耐え切れないわけがない。
「確かに…」
「いくら何でも、おかしいわね」
レオナルドの言葉は説得力があり誰もがおかしいと思う。
「姉は平気のようだが、同じ姉妹でここまで優劣がでるとは妙じゃな」
「何をおっしゃりたいんです。ヘレンが私とラウルの子供ではないと?」
「そんなことは一言も言っておらんぞ?何をムキになっておるのだ」
「っ!!」
ニヤリと笑うレオナルドに誘導されているジュリエッタは我に返る。
「えっ…まさか」
「でも、そう考えると納得がいくわね」
「ああ」
大勢の前で声を荒げ、失言を繰り返しあまつさえ自分の首を絞めていた。
「口を慎め!」
「申し訳ありません…ですが!」
「ヘレンは私とお前の子だ。何を狼狽えるのだ」
ジュリエッタは口を噤むも、既に疑惑の声は溢れており居心地の悪い状況になった。
「元老院様、一体何をおっしゃりたいのです」
カルロはヘレンを支えながら尋ねる。
回りくどい言葉ばかりを言われて訳が分からなかったのだ。
「…愚か者めが」
ボソッと囁くレオナルドの声はカルロに聞こえなかった。
「何か?」
「いや、そうじゃな。回りくど過ぎたようじゃ」
レオナルドは懐から水晶玉を取り出す。
「先程そなた達には罪状を言い渡した。ただし放火事件に関しては関係ないと申したな」
「ええ、もちろんです。愛しい我が子を殺すなどできましょうか」
「そうか、ならばその娘が腹を痛めて産んだ子でなければどうじゃ?」
「はい?」
ジュリエッタの目を見据えて告げられたのはとんでもない言葉だった。
「エステル殿、そなたにはとても酷な現実を突きつてしまうが…」
傍に近づきそっと手を取るロドリゲス。
「そなたにはとても酷な事を言うが…思い当たることがるはずだ」
痛々しそうに見つめるロドリゲス。
まだ若すぎるエステルにはとても酷なことを言っているが、真実を受け入れて欲しいと告げるが…
「はい、心当たりがいくつか」
「エステル、お前はどこまで私の顔に泥を塗るのです」
「黙らぬか、ソナタの発言を許した覚えはない!」
「なんなら、今すぐ牢屋にぶち込んでも良いぜ?既に罪を重ねているんだからな!」
ロドリゲスとは反対にアンドリューは剣を握り脅しをかける。
「お前は大人しくしておれ。エステル嬢、真実を明らかにする為にも鑑定を今一度受けてくれぬか?」
「はい…」
差し出された水晶玉に触れるように言われ水晶玉に触れると紋章が浮かび、同時に色が変わる。
「これは…」
水晶玉に宿った色は銀色だった。
「次にジュリエッタ殿。そなたも鑑定させてもらう」
「私も…ですか」
「そうじゃ。疑いを晴らすためにもな」
手を差し出し水晶玉に触れように促された逃げることはできなかったが、その容疑は明らかになるきっかけになったのだった。
134
お気に入りに追加
16,325
あなたにおすすめの小説
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。
曽根原ツタ
恋愛
ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。
ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。
その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。
ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?
【完結済】結婚式の翌日、私はこの結婚が白い結婚であることを知りました。
鳴宮野々花@軍神騎士団長1月15日発売
恋愛
共に伯爵家の令嬢と令息であるアミカとミッチェルは幸せな結婚式を挙げた。ところがその夜ミッチェルの体調が悪くなり、二人は別々の寝室で休むことに。
その翌日、アミカは偶然街でミッチェルと自分の友人であるポーラの不貞の事実を知ってしまう。激しく落胆するアミカだったが、侯爵令息のマキシミリアーノの助けを借りながら二人の不貞の証拠を押さえ、こちらの有責にされないように離婚にこぎつけようとする。
ところが、これは白い結婚だと不貞の相手であるポーラに言っていたはずなのに、日が経つごとにミッチェルの様子が徐々におかしくなってきて───
下げ渡された婚約者
相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。
しかしある日、第一王子である兄が言った。
「ルイーザとの婚約を破棄する」
愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。
「あのルイーザが受け入れたのか?」
「代わりの婿を用意するならという条件付きで」
「代わり?」
「お前だ、アルフレッド!」
おさがりの婚約者なんて聞いてない!
しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。
アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。
「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」
「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」
契約婚ですが可愛い継子を溺愛します
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
前世の記憶がうっすら残る私が転生したのは、貧乏伯爵家の長女。父親に頼まれ、公爵家の圧力と財力に負けた我が家は私を売った。
悲壮感漂う状況のようだが、契約婚は悪くない。実家の借金を返し、可愛い継子を愛でながら、旦那様は元気で留守が最高! と日常を謳歌する。旦那様に放置された妻ですが、息子や使用人と快適ライフを追求する。
逞しく生きる私に、旦那様が距離を詰めてきて? 本気の恋愛や溺愛はお断りです!!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/09/07……カクヨム、恋愛週間 4位
2024/09/02……小説家になろう、総合連載 2位
2024/09/02……小説家になろう、週間恋愛 2位
2024/08/28……小説家になろう、日間恋愛連載 1位
2024/08/24……アルファポリス 女性向けHOT 8位
2024/08/16……エブリスタ 恋愛ファンタジー 1位
2024/08/14……連載開始
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。
iBuKi
恋愛
私がこの世界に誕生した瞬間から決まっていた婚約者。
完璧な皇子様に婚約者に決定した瞬間から溺愛され続け、蜂蜜漬けにされていたけれど――
気付いたら、皇子の隣には子爵令嬢が居て。
――魅了魔法ですか…。
国家転覆とか、王権強奪とか、大変な事は絡んでないんですよね?
第一皇子とその方が相思相愛ならいいんじゃないんですか?
サクッと婚約解消のち、私はしばらく領地で静養しておきますね。
✂----------------------------
カクヨム、なろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる