ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第四部帰省とお家事情

16.厄日

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次から次へと現れる問題にげんなりする。
あの後ヒューバートを放置してきたのはいいが、何の解決にもなっていない。


「あら?」

「お祖母様」

単独行動で絵を堪能していたガブリエルは確信犯なのにそ知らぬふりをしている。


「すべてご存じだったのですね」

「フフッ、勉強不足ですよ」

遠回しにこの程度の情報は仕入れておけと言われていた。

「頭が痛いです。何故私がモデルに?」

「俺もびっくりしたけど、案外似合ってたぞ」

「そうです!エステル様は聖女様みたいですから!」

アリスには他意はない。
純粋にエステルが聖女のように美しさと気品を持ち合わせているからだと言っている。


「所でエステルさん。先程から隣にいる方は?」

「そうだぜ。誰だ?」

ジロジロとクロードを見るユランにルークは今にも倒れそうだった。


「ああ…」

「どうしたと?」

サブローがルークを支える。


「ちょっと!馬鹿ユラン!クロード様に失礼よ」

キッと睨みつけるもクロードは手で制止する。

「俺は気にしない。硬くなる必要ないからな」

「ですが…」

クロードを崇拝するミシェルは無礼など許せないが、クロードは元から堅苦しいことは嫌いだった。


「お前達はエステルの学友か?」

「ああ、そうだぜ」

「俺とエステルさんは…友人と」

うっかり方言がでそうになるので注意するサブロー。


「お前ちゃんとした人間の友達ができたんだな」

「どういう意味です」

「いや、そのままの意味だ」

さりげなく友達もできず一生寂しくすごすのだと思われている。

(でも否定できないわね)

学園でのトラブルが無かったらこここまで親しくなれたかそうか解らないのだ。

その件に関しては感謝するべきかもしれない。


「皆さん、立ち話もなんですからこれからお茶でもいかがです?」

「え?でも…」

「気持ちは嬉しか…けど」

アリスとサブローはこっそりと財布を覗く。


「サブローさん残金は?」

「あまりないと」

二人で所持金を確認する。
二人は根っからの平民で貧しい家庭事情もありあまりお金がない。

優秀な生徒が学園からお小遣いも支給されているが、サブローは仕送りに当てているので自分で使うお金は少ない。

アリスにいたっても同様だ。


「貴族の方が行くお店って」

「足りると?」

二人はお金のことを気にしていた。


「ああ、そのことなんだが」

クロードが思い出したように言葉を放とうとした時だ、行列がこちらに向かってくる。


「なんだあれ?」

「すごい護衛の数ですね」

大聖堂にお供と護衛を揃えて現れた一向に驚く。


「エステル!!」

「えっ…エドワード様」

「ああ!よかった!!」


近衛騎士にがっちりガードされている人物は小走りでこちらに向かってくる。


「誰です?」

「いや…あの人は!!」


ギョッとなるユランとジークフリート。

解ってないのはアリスとサブローぐらいで、さっきから真っ青な表情をしているルークが恐々と告げた。


「王太子殿下‥‥」



「ああ、僕はもうだめです」


唖然とする者。


真っ青になる者。

失神する者とその他色々だった。



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