ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第四部帰省とお家事情

9.シフトチェンジ

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エステルが帰省したした直後、ガブリエルは侯爵邸に訪れた。


「お祖母様!」

「エステル!!」

抱擁を交わし二人は再会を喜んだ。


「学園でのことは聞きましてよ?よく頑張りました」

「私の鼻が高い!!」

隣にいるジェームズも報告を聞き喜んだ。

「そういえばお友達も一緒だと聞きましてよ」

「はい、学園でできた私の友人です」

すぐに紹介しようと呼びに向かおうとするも、ガブリエルが止めに入る。


「結構ですわ。私が行きます」

「ええ!」

傍に控えているセレナが仰天する。


「大奥様、流石にそれは」

公爵夫人ともある人物が自ら尋ねに行くのは大問題だ。
相手は平民でもあるのだからと止めに入るもガブリエルは笑みを浮かべる。

「お客様に挨拶をするのは当然ではなくて?」

こななったら誰にも留めることは不可能だった。

「お祖母様」

「まぁ、大丈夫…だと思いたいがな」

「断言してくださいお祖父様」

攻撃的なことはしないだろうが、ルークあたりは失神してしまわないか心配になる。


不安を抱いながら何もないことを願ったのだが、その結果。




「やっぱりこうなったわね」


二人が挨拶に向かって直ぐにルークとジークフリートは真っ青になって怯えた。



「ここっ…公爵夫妻におかれましては」

「お会いできてかいよ光栄やっちゃが!」


「ちょっと眼鏡!何処の言葉喋ってんのよ!」

完全に怯える二人。
特に酷いのがジークフリートだった。

既にどこの言語か解らない。
それ程の怯えているので少し可哀想に思った。


「愉快ですわ」

「お祖母様」

やっぱり悪い癖がでたと思ったが特に酷いことをしているわけではないので捨ておくことにした。


ジークフリートだけを。


「ルーク、怯えないで。大丈夫よ」


「ですが、無礼を働けば不敬罪です」

未だに怯えるルークに困り果てる。


(ゆっくり慣れてもらうしかないわね)

そのうち嫌でも慣れるだろう。
この邸に滞在する間、ガブリエルとは何度も顔を合わせることになるのだから。


「実は貴方に是非見てもらいものがりますのよ」

「え?」


「とってもびっくりするぞ」

ガブリエルとジェイムズが悪戯を企てるような表情をする。


「なんですの?」

「皆さんもよかったらいらしてください」

こういう時のガブリエルの表情は良くないことがおこるのだが、拒否権はなかった。



「母上、あそこに行くのですか?」

「ええ」


「まぁ…」

ガブリエルの意図する行動をロバートもヴィオラも気づいていたのだが本人に教えるつもりは一切なかった。



着替えを済ませて出かける用意を済ませたエステルだったが、そこで大騒動が起きる。



「お嬢様…その格好は」

「何か問題でも?」

ドレスではなくパンツスタイルだった。
礼服ほどきっちりしていないが、貴族の令息が着る格好にセレナはショックを受ける。



「おっ…お嬢様!なんというお姿を」

「似合わない?」


「とても凛々しゅうございます…ではなくて!!」

学園にいる時は制服を着ているとき以外はパンツスタイルだったので外出する時もこの格好でいることに決めている。


当然剣も忘れずに。


「お嬢様、扇は…」


「必要ないわ」


「そんなぁぁぁぁ!!」

学園に入るまでは貴族の令嬢として大切にされたいたのに学園に入ってからエステルの性格は女性らしさから男らしさに変わってしまった。


「何を騒いでいるんですか」

「クニッツ様、お嬢様が…お嬢様が!!」

泣きながらクニッツに縋るセレナ。
今まで蝶よ花よと大切にしてきたエステルがすっかり男装の麗人が似合ってしまっている。

「社交界デビューは!」

「既にデビュタントはしたでしょう?」

「ドレスで夜会には?」

「今後一切ありません」


セレナの夢がガラガラと崩れていく。
女性騎士と言えど、公の場でドレスを着ることもあるのだが、エステルはそのつもりはないと断言する。


「私は女を鎖でしばるわ」

「いやぁぁぁぁ!!」


こうしてセレナの嘆きと悲鳴が響き渡りながらもエステルは支度をすませ部屋を出て行ったのだった。
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