ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第三部騎士科の道

23.冒涜

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中央に飾られた絵に両陛下も満足そうだった。


「なんと美しいのだろうか」

「ええ、本当に」


芸術品は作者の心を映し出す鏡と言われている。

「エレニー嬢は芸才に優れていますわね」

「ああ」

二人は見飽きることなく絵を見ていた。


「父上、母上」


「エドワード。貴方もご覧になりまして?」


「はい、先程エレニー嬢にお会いしました」


中央に飾るに相応しい絵をもう一度見てサングリアは決めた。


「サンマルク聖堂に飾る絵はこちらで決まりですわね」

「ああ、申し分ない」


二人はこの絵に決めた、侍従に準備をさせようとした時だった。


「どういうことですの!」


放れた場所から声が聞こえる。

聞き慣れた声でヒステリックに叫ぶ女性にサングリアは顔を顰める。



「何ですの?大きな声を出して」

「また、ヘレン嬢か」

深いため息をつく。
展示会を楽しんでいた二人は完全に気分は台無しにされてしまった。


「折角の気分が台無しですわ」

「関わりたくないのだが」

「無理でしょう?本当に頭の緩い羽虫ですわね」

「サングリア…」


妖精姫の二つ名を持つヘレンを羽虫に例える。

「せめて蛾ぐらいにしてやれ」

「嫌ですわ。蛾に失礼ではなくて?」


(さらに酷いぞ!)


妖精は蝶の姿をした生き物が多いので羽虫と例えたが他にも言い回しは会ったのにあえて蝶や蛾と言わないのは嫌味だった。


「早く駆除したいですわ」

「だから迂闊なことを…」


「陛下、しっかりなさってください!」


「うっ…うむ」


少し弱腰の王の尻を叩く。
実際には叩いていないが、蠅たたきが見える気がした。



***



特別科の作品がずらりと並ぶ中、ヘレンの作品は隅っこで目立たない場所に飾られ怒っていた。


「どういうことですの!」


「どうと申されましても…絵は指示通りに並べております」

「この私の絵が…こんな場所に」

一番端っこに飾られ目立ちにくい場所に飾られヘレンは配置をした侍女に怒りをぶつける。


「ヘレンの絵がこんな貧相な絵よりも目立たない場所になんて」

「なっ!」

本人を目の前にして言うジュリエッタに他の芸術家や音楽家は冷たい視線を送る。


「この作品は優秀な生徒の順番で飾られております」

「まぁ…芸術家と名高いラファエル先生はやはり生まれが乏しい故に芸術を理解されていなかったのですね?」

「どういうことでしょうか?」


芸術家として第一線で活躍するラファエルは眉を吊り上げる。


「こんな下品な絵を受賞させるなんて」


下品と言われたのは聖母、ユニだった。
平民でありながら生前奉仕活動を行い聖母としての慕われるようになった女性だが、貴族ではなく貧しい貧民街の修道女だったことからジュリエッタは貶していた。


「白衣の天使と言えば聞こえがいいですが…こんな平民の女を描くなんて」

「なんだと…」

白衣の天使と呼ばれたユニを慕っている芸術家や、医療従事者である貴族はユニを崇拝しているので彼女の否定は髪を冒涜することと同じで許しがたい行為だった。


「貴方は死者を冒涜する気ですか?」

「まさか、そのようなつもりはありませんわ…ただ平民で死んでから美化されたに過ぎない修道女の絵など似つかわしくありませんわ」

「なんてことを…」

この発言は聖女を信仰する貴族や、出家した元貴族令嬢を侮辱するする行為だと言うことに気づいていない。


「ヘレンの絵の方が素晴らしいですわ。すぐに取り換えてください」


あんまりのいい様に周りの貴族達は怒り狂う者、呆れる者と様々だったがジュリエッタは気づくことがなかった。



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