ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第三部騎士科の道

閑話2愛しい人の為に

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知らせを聞いてクロードは笑顔浮かべた。
ただし表に出すことはなく秘密の花園でひっそりとだった。

ブランコに座ってミシェルからの手紙を読んで安堵した。


「良かった…エステル」

地方の学校に行ったエステルをとても心配していたクロードは自分の立場を憎んだ。

本当ならすぐに助けてやりたいが、それすら叶わない。

「俺が助けてやりたかった」

諜報活動に出向き多忙のクロードは自分の感情を押し殺し無事を祈るしかないと思っていたが、ミシェルが転入すると言ってくれてどれだけ安堵したか。


ミシェルの素行云々はさて置きとして、クロードは個人的には信頼していた。

誤解されがちだがミシェルは義理堅く面倒見がいい。

エステルのことも気にかけていたので損得関係なく手助けしてくれると思ったが、ミシェルがいなくてもエステルは一人で立派に立ち回っていたことを知らされる。


「正しいことをしていれば自然と人は集まる…」

報告書とミシェルの手紙を照らし合わせる。
最初は差別や非難の視線はあったが、友人もできて頑張っていたと聞く。

嫌がらせを逆手にとって仕返しをする強かさも身に着け、現在は使い魔までも得ていると聞く。


「相変わらず巻き込まれているが…結果オーライだ」

貴族を気に入らないと思う人間は多く、純粋な貴族出身のエステルはそのまま怒りを買うかだろうが、逆に彼等を味方につければエステルの地位は盤石なモノとなる。


地位だけで何もしない貴族は人を動かすことができない。
財や権力など一瞬でひっくり返されるが、それ以上に必要なのモノを在学中に得てから王都に帰ってきて欲しいと思った。



「エステル、必ず帰って来てくれ」

クロードも今はすべきことをしなくてはいけない。
揺るぎない地位を得て、妾腹だと馬鹿にする貴族達を黙らせる為にも踏ん張り時だった。


「社交界は今荒れているが…チャンスだ」

しばらく王都を離れていたクロードは久しく社交の場に顔を出せばヘレンが問題を起こしている所為か評価は下がるばかりだった。


(愚か者めが…)


エステルを散々侮辱した連中を庇う気は無い。
カルロもヘレンも没落するなら徹底的にしてやろうと思っていた。



「エステルみたいに俺は甘くない」

婚約騒動は表向き円満に解決したと思われているが、その逆だった。

姉から婚約者を奪いさも当然のように振る舞い贅沢三昧をするヘレンに対して不信感を募らせる貴族は少なくない。

不作で税金が上がる一方で、領民から重税をし要ろうとするアルスター伯爵夫妻は自分達の生活を変えることもなく、不作なのは領民の働きが悪いからだと言って斬り捨てる始末だった。


「このまま行けば、間違いなく破綻するだろう」

数年前の火事により邸は全焼し、立て直したが赤字だったが生活を見直すこともなく贅沢な暮らしを続けている。

「伯爵家の財産はあと数年で底をつくだろう」

クロードはくまなくアルスター伯爵家の財産を探るように言っていた。

既に赤字が続いている。
もうすぐ夏になり、猛暑が続けばどうなるか。

秋が訪れ収穫の時期になればどうなるか。
領民が過労で倒れている知らせも、領民が領主から心が離れていることも…

「既に手遅れだろうが…自業自得だ」

貴族とは特権を与えられていると同時に責任がある。
領主は領民を導き守るのが義務なのにその義務を果たそうとしないならば、心が離れてしまうのは仕方ないことだった。


「領地が空っぽになった時思い知ればいい」

平民を下目に見て蔑ろにすればどうなるか。

国を支えている平民を消耗品のように扱えばどうなるか。

クロードはエステルが受けた苦しみを思い知ればいいと思った。

勝手に自滅してこれまでの報いをジワジワと味わえばいいと思った。


「どの道社交界で評判は最悪になっているからな」

何もしなくても地雷を踏んでいるヘレンのお陰で事は上手く進んでいる。


「これ以上傷つけさせない」

全ては愛しい人を守る為、クロードは容赦しなかった。


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