ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第三部騎士科の道

16.自滅

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正式な勝敗が着いた。
これでエステルが不正を行ったと言う馬鹿なことを言うことは出来ないが、往生際の悪い男はまだ諦めれいなかったが、そうは行かなかった。

「真偽は決まったようだな」

「全くなんと浅はかな」



二人の青年が現れたことにより生徒は驚く。


「アルフォード・ノーチェスト様!」

「アクセレイ・ハインツ様よ!!」


生徒達は大騒ぎをする。


「ここから先は我々が仕切らせてもらう」

「この度のことについても」


対照的な二人だが、突き刺さるような視線でノーアンを睨みつける。


「麻薬売買、人身売買に不正を行い賄賂を受け取り…王都で使用禁止とされた猛毒の麻薬を使っていたノーアン大司教。これをどう弁解されるおつもりか?」


「なっ!無礼な!!」


「すでに闇取引した証拠はあります…ですがその証拠品が見つかりませんでした」

「ならば!」

証拠となる物がなければ裁けないのだが…


「証拠ならあるぜ?」


「ユラン!」

「よぉ?派手にやらかし…つーか、何で三人気絶してんだよ」

ノーランの直ぐそばで気絶している三人を見て苦笑する。


「それは置いておいてくださる?」

ミシェルは話を進めるように言う。


「まぁいいけどな…麻薬は別の形にされていた」

「別の?」

「これは香炉なんだが、こっちは線香」

二つを見せる。

「かなり巧妙だぜ?麻薬を別の形にして隠してあったんだからな」

「待て…」

「そう、お香にして焚き染めればバレない」

人の目にはつきにくいが、この麻薬には特徴的な香りがある。

「もしこれが普通のお香ならば反応しない」

取り出したのは蜂だった。


「この蜂は麻薬に実験に使われるんですが…麻薬だったら体が赤くなる」

「やめ…」


香炉の傍に蜂を置くと体は赤く染まる。


「どういうことですかね?これは礼拝堂に置かれていたんですよ?」

「私は知らない!!」

「指紋を確認すれば解るでしょうし…他に学園の金を横流ししていた証拠がここにあるんですよ?礼拝堂の床には大量の金貨も出てきましたが?」


「貴様!!」


「既に証拠は上がってんだよ!!」

暴れようとしたノーアンだったがユランは胸倉を掴み怒鳴る。


「本気で頑張ってる人間を踏み潰してんじゃねぇんだよ!クソ坊主!!」

「ぐっ…」

常に冷静沈着だったユランは怒りをぶつけた。
ずっとエステルが苦悩していたことを見ていたからこそ許せるものではない。

普通に罰しても数年で釈放されるならば、司教長や他の教師の前で罪を暴露してやろうと機会を伺っていた。


「まさかここまでうまく事が進むとは思わなかったぜ」

「ノーアンを泳がせ罠にかける作戦だったが…エステル嬢には申し訳ないことをした」

アルフォードは黒の騎という二つの名を与えられていると同時に生徒会に在籍していた。

同じくアクセレイもだ。


「この学園は基本生徒同士の諍いに介入しないのが決まりだ。それは後に騎士となった時にも似たようなことが起きる故にだ」

「才能がある物は疎まれ排除され、その逆は蔑まれるます。それ故に」

「自分の手で生き抜く術を身につけさせようとしていたのですね」


エステルはこの学園のシステムをなんとなく察していた。
言っていることは合理的で理にかなっている。


「ただ、騒ぎを起こした生徒は罰を与えられる。俺達も最悪の事態は避けようと思っていたのだが…」

「はい?」

「まさか嫌がらせを叩き潰す生徒がいるとはな」

アルフォードは真顔で告げる。


本当は危なくなったら助けるつもりでいたのだが、エステルは予測を超える行動が多く、助けようにも自分で解決していたので助ける必要がなくなったとか。


「あげくノーアンに疑いの目を持つとは見事です」

「はっ…はぁ」

「ここまでスムーズに事を運ぶことができたのは君のお陰だ。よって君を本日よりで銀ランクとする」

「はぁ?」


アルフォードの言葉に素っ頓狂な声を上げた。



「銀ランクだって!!」


「入学して二か月で!!」


「嘘だろ!」



一介の生徒にすぎないのに、いいのだろうかと思うエステルはその後も茫然と立ち尽くすのだった。


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