ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第三部騎士科の道

2.傘は天候のみならず

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寮を出て校舎に向かうと、ここで二人とは別れる。

「では皆さん名残惜しいですが」

「僕は嬉しいですよ」

「はよ行くと」

ドカッ!


最後まで嫌味を言うジークフリートを蹴るサブロー。


「なんて野蛮な!」

「お前、本当にこりないな」

嫌味を言うからサブローに蹴られていることに気づけばいいのにと思うユランだったが、ふとエステルが持っている傘が聞きになる。


「何で傘?」

「今日は晴れですが…」

天気予報では一日晴れだったはずだ。


「ええ、天気は晴れだけど」

「午後から雨が降るのでしょうか」

「天候とは乙女と同じく気まぐれなんですよ」

にっこりと微笑む。

「用意しておいた方が安全ですもの」

「流石エステル様!」


輝かしい笑顔を向けるアリスは疑うということをしない。

「私達もいきましょう」

アリスの背中を見送りながら一同は教室に向かおうとしたが…


バサッ!


傘を広げるエステルに三人は驚く。

バシャッ!!


「わぁ!」


水をかけられガードする。


「ほら?雨が降ったでしょ?」

「なるほど…」

「そういう使い方をするんですね…って、違いますよ!」

ルークはあっさり納得しそうになったが、校舎に入って来て早々嫌がらせを受けることに文句を言う。


「気にしない、気にしない」

「あのなぁ…」

本人は全く気にしていなかった。


「それどころか、彼等はずぶ濡れで大変ね」

「そういえば今日は服装チェックがあったよな」

「ええそうね」

果たしてずぶ濡れの状態でどうなるか。


「お前…まさか」

「さぁ、教室に行きましょう」

こちら側からは手を出さないが、何もしないとは言ってない。

(自業自得よ)


身を守る為にあらゆる手段を取るつもりはいた。
やり方はスマートでエレガントに行いながらも自分の被害は最小限にして、相手の被害最大限。






「お前達は遊んでいたのか!!」

「いえ!」

「滅相もありません!」


服装チェックにて生徒指導の教師に水をかけようとした男子生徒はあの後服を乾かすことも叶わ濡れたままだった。

しかも彼等は間抜けなことに予備の制服を用意していなかった所為で濡れママチェックを受ける。


「そういえば以前、下駄箱で教師に卵を投げていたな」

「「うっ!!」」」

「お前達は教師を馬鹿にしているのか?それとも学園を馬鹿にしているのか…そうであるならば厳しい罰を与えなくてはならないな」

この学園は生徒の自主性を育てる為、できるだけ教師は口を挟まないのだが行き過ぎた場合は処置を取ることになっている。


「罰としてしばらく寮に帰り謹慎だ」

「そんな!」

「もちろん欠席した授業はマイナスとする。これまで集めたステラはすべて没収だ」

自動的に鉄に下げられてしまう。


「えげつねぇなお前」

「ホホホッ…」

お上品に笑いながらも確信犯のエステルに恐ろしいと感じるのだった。



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