ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第二部メトロ学園へ入学

30.騒々しい朝食

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爽やかな朝、今日の天気は一日晴れ。
休日に晴れというのはとても心地がいいものだった。



「うん、今日は良い日ね」

「俺の運勢は三位と」

「僕は二位で…わぁ!茶柱が10本も!縁起がいいですね」

朝食を楽しみながら和気藹々とする。

「私もです」

今日は休日なのでゆっくり過ごしているのだが、一人だけ食卓を囲んでいない人物が一人。


「いい加減にしなさい」

「なんでだ!!」

涙を流して訴える。

「お前は一位と。よかったと」

「これのどこがだ!!」

怯えながら怒っているユランをスルーする。

「よかったわね。朝から美女と一緒で」

「蜘蛛となんて嬉しくねぇよ!!」


ユランの席の傍には土蜘蛛の雌が座っている。

「何でベビーチェア用意してんの?」

「席がないと可哀想とね」

「そんなフェミニストいらねぇよ!!」

サブローが手作りした椅子はとても良くできており完成度が高い。

皆椅子に座っているのに地べたというのもかわいそうだと言う配慮だ。


「真向いは芋虫だし!」

「ナポレオンよ」

「結局カッコいい名前かよ!モジモジ君かニョロでいいだろ!」


まだしつこいグチグチ言っている。

「食事時に騒がないでくださる?」

「ピー!」

「ぎゃあああ!!俺を見た!」

手足を動かすナポレオンに悲鳴をあげる。

また糸を吐かれるのではと思ったが、糸を出すことはなかった。


「えらいわよナポレオン」

昨日の言いつけを早速守ったナポレオンに頭を撫でるが…


「ピー!」


「ぎゃああああ!」

嬉しさのあまり気を抜き糸を吐く。

「あら」

「やっちゃいましたね」

糸はユランを拘束した。

「セーフとね」

「ありがとうございますサブローさん」

「よかよ」

巻き込まれる前にサブローはお盆でガードした。

エステルはアリスの手を引き糸を避けたので被害が及んだのはユランだけだった。


「何で俺だけ…グスン」

最近の扱いが酷すぎて涙が流れる。


「いつまでやってんだい!」

ドンっ!


「ぶっ!」

マジョリカの胸が頭に乗っかる。

「重い!死ぬぅー!!」

「よかったわね」


マジョリカはかなりの巨乳なのでユランも嬉しかろうと思ったが、相手が老婆では嬉しくない。

「死ぬ!」


既に潰されているがかろうじてま息があるようだった。


「グダグダ言ってないで早く食べな。だからアンタはユランなんだよ」

「世界中のユランに謝れ!何?お前等全員で俺をデスってんの?」

日に日にユランの突込みは切れ味をましている。
もはやスキルと言って良いほどだが、芸人を目指しているわけではないのに使えないスキルだった。


「アンタは騎士を諦めて芸人にでもなったらどうだ」

「何で俺一人?」

「この中で一番騎士に不向きだろ?」

マジョリカは意地悪ではなく本当に心から思った。

「魔物が襲ってきたら速攻で逃げそうだしね」

「失礼な、依頼人は守るぞ」

「ほぉ?」

一応騎士としての気構えはあるのだと見直したのだが‥‥


「依頼人を抱えて逃げる!」

「「「結局逃げるんか!!」」」

今度は全員の突込みが炸裂した。


「ユランは騎士じゃないと」

「男らしくないです」

「敵前逃亡ですか…」

普段から控えめなルークとアリスまで批難の視線を向けられる。


「騎士が聞いて呆れますね」

「わぁぁ!お前、いたのかよ」

いつの間にか隣の席に座っているジークフリート。

気配を感じなかった。

「影の薄い男とね」

「失礼な」

「今日は遅かったね」

マジョリカはジークフリートにカフェオレを淹れる。

「ありがとうございます」

「いるならそういいな」

「一応言わせていただきますが、声はかけましたよ」

眼鏡をくいっと上げながら言い放つ。


「まぁ、キャラが濃いからね」

「そうですね」

「言っておくけど、一番個性的なのはアンタだからね!」

一人だけ関係ないと言う顔をしているエステルに告げる。


「まぁ、心外ですわ」

「自覚がないのかよ!この中で一番の問題児はお前だぞ!」

ユランは常日頃問題を起こしているのに自覚がないエステルに改めて素行の悪さを言う。


「同感です。何を自分は関係ありませんという表情をしているんですか」


現在学園ではある意味で注目の的になっている。


「校則違反はしていませんわ」

「貴方には協調性がないんですか!そんなことではこの厳しい社会は生き残れません…何をしているんです」

「何って?」

くどくど文句を言われる中、エステルはホットドックをフォークとナイフで切り分けている。

「お前、またサンドイッチと同じことを!」

「エステルさん、これも手で食べると」

「‥‥え?」


「こっちがえ?だよ!!お前は何でもフォークとナイフを使うのかよ!」

サンドイッチの時と同じ過ちをしてしまったと悔いる。


「大体貴方はもう少し世間を知るべきです」

「良く言った眼鏡!ただ陰険で性格が悪い男と思ったらまともなことを言うんじゃねぇか」

「‥‥失礼な」


ユランの言葉にむっとしながらもカフェオレを飲み干すジークフリートは終始顔を顰めたままだった。
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