ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第二部メトロ学園へ入学

28.新入居者

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夕暮れ時、寮にて悲鳴が響く。


「ぎゃああああ!!」


日も暮れているので声が響きやすく近所迷惑だった。


「なんの騒ぎです、いい歳して大きな声を出して」


「虫!!芋虫が!!」


「離すっちゃ」

サブローにしがみつくユランは半泣き状態だった。


「俺を狙っている!」

「そんなわけないでしょ?ねぇ、ナポレオン」

「ナポレオンって何!こんな不細工なのに何でカッコいい名前つけてんの!!」

器用に足を動かし口からピューと糸を吐く姿はグロテスクでユランは涙目になる。



蛇やハブに蜥蜴は大丈夫だが、蜘蛛や芋虫が大嫌いだった。


「何言っているの?こんなに愛くるしい瞳に美しい深緑の色の体…きっと将来は美しくなるわよ」

「お前は本当に貴族の令嬢かよ!!」

「さぁナポレオン、ご飯ですよ。ミミズも取ってきてあげたけど…草の方がいい?それともお肉?」

普通の虫ならば葉っぱでいいのだが、相手は魔物なので食べる物も異なる。


「ピー!」

「あら、意外と好き嫌いがないのね」


「会話しているし!!お前何普通に解り合っているの!!」

サブローの時と言い、身振り手振りで意思疎通を図るエステルに起こる。


「いい加減にしろ!ここは妖怪屋敷じゃねぇんだぞ!魔物を連れてい来る奴があるか」

「ここにいるわ」

「開き直るんじゃ…」


ガブッ!!


「え?」

文句を言おうとしたらナポレオンがユランの指を噛む。



「いやぁぁぁぁ!!」

指をかぶり血を吸っている。


「あ…無理」


バタン!


「アホたい」

「情けない男」


芋虫に悲鳴をあげて大騒ぎをした後失神したユランに冷たい言葉を投げかけると上から現れたのはこの邸に住み着く土蜘蛛だった。


「あら?ごきげんよう」

「ユランを運んでくれるとね?気の利いているとね」

蜘蛛の巣から糸を垂らして現れた土蜘蛛は足を動かしジェスチャーをして挨拶をした後ユランを巣に連れ帰った。



「本当にモテモテね」

「蜘蛛の雌にモテモテだっちゃ」

人間の女性にはモテないが魔物モンスターの雌にはモテモテのユランだった。



「エステルさん、サブローさん」

「あら?お帰りなさい」

「帰りだっちゃ」


遅れて帰って来たルークが土地蜘蛛に連れて行かれているのを見て心配する。


「いいんでしょうか?」


「よかったじゃない?ボンキュッボンのナイスバディ―よ?」

(まだ怒ってる!!)


以前にユランが言った女性の好みを未だに覚えているエステルはまだ怒っているのだと悟る。



「本当に羨ましいわ。あんなナイスバディーな女性に好かれるんだもの」


「果報者とね」


二人して笑っているが、普段の恨みも含めてすこしだけ仕返しをしたのった。



「ただいま戻りました」

「お帰りなさい」

「遅かったとね」


既に下校時刻は過ぎているので心配するサブローだったが鞄にぎっしり入っている本をみて勉強していたと察した。


「一人で頑張っていたのですね」

「いえ、授業について行くのがやっとで」

魔法科の授業は騎士科どうようにレベルが高く評価も厳しかった。
それにつけ加えてアリスは平民出身なので教養が欠けている為自主学習をして勉強しなくてはならないので大変だった。


「アリス、俺は貴族の教養はわからんと…それ以外なら教えるとよ?」

「基本的な教養なら聞いてください」


「あっ…ありがとうございます」

不安そうな表情をしていたアリスだったが一瞬で笑顔になる。

花のように愛らしいアリスは守ってげたくなるような可憐さを持ち合わせているのでクラスメイトの男子からも憧れの目で見られているが、そんなことを本人が知ることはない。


授業についていくのに必死で気づかない。

気づくと言えば妬みに悪意の視線ぐらいだった。


「エステル様、ありがとうございます」

「何がですの?」

「いいえ、なんでもありません」


本を半分持つエステルにアリスは笑みを浮かべる。
少しだけ頬を染めながら心底嬉しそうな表情をしている理由にエステルは気づいていなかった。



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