ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第二部メトロ学園へ入学

24.優しい先輩

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騎士科全体に流れる噂にエステルは毅然とした態度で振る舞っていた。


ここで弱みを見せてはいけない。
何も恥じるような真似をしていないのだから卑下する必要ないのだ。


(明らかに蔑んだ視線ね)


教室でも廊下でもエステルに対する視線は同じようなモノだった。

ヒソヒソと陰口を言うクラスメイト達。
全員ではないが半信半疑の目で見て来るのは仕方ないと割り切った。


慣れとは怖いもので幼少期からこんな目で見られるのは慣れていいたのでそこまで精神的苦痛にならなかったのだが。


「エステルさん!」

「セス先輩」

廊下を歩いていると乗馬の授業で知り合ったセスに声をかけられる。

「噂に尾ひれがついています…大丈夫ですか?」

心配そうに見るセナや他の上級生。


「まったく、くだらない」

「噂を広めた男もけしからんが…惑わされる奴も馬鹿だ」

うんうんと頷く上級生。


「本当かも知れませんよ?」

「「「ないだろ!」」」

試すようなことを言うエステルに誰もが手を振って否定する。


「どうしてそうお思いになるのですか?」

「この学園は完全な実力主義ですし」

「授業態度を見れば実力で入られたと解りますし」

「女子の場合はさらに厳しく審査しているからな!」

大らかに笑う上級生だったが新たな真実を知らされ驚く。


「え?さらに厳しく?」

「ええ、女性の場合は男性よりも審査が厳しいんですよ」

「耐えきれるかどうかわかりませんし、身辺調査もされます」

来るもの拒まずの学校でも実力が伴ってなければ即不合格とされるので、不正をしているとは考えにくい。


「たまにいるんですよ」

「優秀な生徒を妬んでこんなことをする奴等」

「教師は基本手を出しませんからね」

よほどのことがない限り教師が口出しをしないということは自力でなんとかしろということだった。


「ただし、あまりにも酷いとそれ相応の罰が下ります」

「雀蜂の一件は優しいぐらいです」


鉄ランクに下げられた彼等のことを言っていた。


「先輩方…」

「エステルさん、我らは貴方の味方です」


騎士としての誇りを持つ彼等は虐めや人を陥れる行為は許せないが、手助けができなかった。


「騎士になれば、もっと辛い状況になるでしょう」

「貴方は女性です。常に罵倒を浴びせられろくな仕事も与えられないかもしれません。ですが」


「セス先輩?」

「貴方は騎士としての資格を十分お持ちです。ですからここに来てください」

同じ立場に上がって欲しいと思った。
嫌がらせに負けず本当の騎士を目指す同胞として、いずれこの国を守る騎士になって欲しいと願った。


「ずっと見てましたよ」

「貴方が耐え続けている後姿を」

「どうか、戦い続けてください」

こんな所で潰されて欲しくない。
もっと高みを目指して同じ位置に来て欲しいと告げるセナ達に胸が熱くなる。


「待っています」


「はい、ありがとうございます」


ちゃんと志を持つ人はいる。
エステルが見えていないだけで噂に左右されていいない人はいるはずだ。



(そうよ…)


こんなところで寄り道をしている暇はない。


「やられっぱなしではいないわ」


このままで済ますつもりはない。


セス達のエールを貰い決意を新たにするエステルは図書館に向かった。


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