ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第二部メトロ学園へ入学

23仕返し

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その日のうちにエステルの噂は騎士科全体に広がりつつあった。

妹の恋人をお金と権力を使って奪った悪女。

跡継ぎであることをいいことに権力でモノを言わせながらも素行の悪さで社交界の出入りを禁じられていたことなど。


前者に関しては完全にデマだったが後者に関しては信憑性が高かった。

何故なら社交界にほとんど顔を出していなかったからだ。
大貴族ならば毎日のようにお茶会に夜会に顔を出しているのが当たり前だったので噂に尾ひれがついたと言っても過言ではないが…


(馬鹿しかいないのかしら?)


少し考えれば解ることなのに深く考えないクラスメイトに呆れる。

(よく受かったわね)

狭き門である騎士科に受かった生徒は筆記で落ちなかったのか?と思ったが勉強だけでる優等生ならば学園に入ることは可能だったが、最終目的を忘れている。


(私は一応名家の貴族令嬢なのだけど)


王族に嫁ぐこともできる程の名門中の名門でありながら資産家でもあるので偽りの噂を流し、陥れるような行為をするなど許されない。


「‥‥低俗な連中」

ボソッと呟きながらエステルは廊下を歩く。


(さてとどうしたものか)

学園にいる間は出来るだけ大人しくしておかなくてはならない。

嫌がらせをする連中などに構う余裕があれば勉強している方が有意義だった。


もうすぐ定期試験も差し迫っているので、ここでぐっと差をつけて最短で銀ランクに昇進する必要があるので余計なことに時間を使っている余裕はない。


そう、くだらないことに。


「くたばれ!」

ビュンっ!!





後方から飛んでくる毛虫に蜥蜴までも投げられた。


(全く学習しないわね)


毛虫を投げてくる連中にエステルは学習能力の無さにあきれ果てるが窓を見るとある物に気づく。


(お仕置きが必要ですわ)


ニヤリと笑みを浮かべる。


ガブリエルの教えを思い出す。



『やられたら10倍返しよ!』


その言葉を今まさに実行してやろうと思った。


「どうした!!」

「流石に泣いたか!」

「騎士になる奴が泣いてんじゃねぇよ!」


顔を俯かせるエステルがついに泣き出したと思って調子に乗る彼等だったが。



(よし取れた)


笑みを浮かべたる。


ブチッ!


何かが切れる音がしたと同時にエステルは自分の周りに結界魔法を敷く。

ブーン!


「なんだ?」


「蠅か?」

ブーン!


また音がする。


「うるさい!なんだって…ぎゃあああああ!!」


「雀蜂!!」

「何でこんなところに!」


普段は人を襲わない。
ただし彼等は敵意を向けられた場合だけ凶暴化するのだ。




アルカディアに生息する人とは異なった生き物。
彼等は昆虫の妖精であり普通の蜂に見えるが、普通の虫と異なる。

サイズが違うのだ。

手とお尻には毒針が付いており、それにブスッと刺されればアウトだった。


「馬鹿野郎!早く蜂蜜だ!蜂蜜を持ってこい!」

「そんなもの持ってないぞ!」

「なら黄色い者で身を…わぁぁ!!」

「来たぁぁぁ!」


女王蜂が仲間を呼び一直線に襲い掛かって来る。


「わぁぁぁ!!」

「逃げろ!!」

「ぎゃあああ!」

蜥蜴をいれた壺を持ったままだ逃亡する彼等に笑みを浮かべる。



「フッ、馬鹿な男」

壺を持ったまま逃げれば学園で雀蜂を呼び寄せたのは自分だと証明しているのと同じだが、実はエステルが細工をしておいた。


彼等が踏ん反り返っている間に壺に瞬間接着剤をつけて離れないようにした。



(自業自得よ)


ガブリエルの教え通りやられたらやり返す。

ただやり返すだけでなくさらにオマケをつけて返したエステルはこの後彼等が向かった場所は職員室。


すべて確信犯だった。



学園内で自分の評価を下げずに仕返しをするには少しばかり頭を使う必要があるので表だって仕返しはしない。


ただし普通にやり返すよりも何倍も恐ろしく残酷な方法だった。


「そうだわ、騎士科の先輩方に雀蜂のことを知らせてお行きましょう」


一応雀蜂の標的は決まっているが、万一のことを考えて手を打つことにした。




「おい騎士科の生徒三名が停学処分になったらしいぞ?」

「え?なんで?」

「なんでも雀蜂を学園に入れたらしい」

「馬鹿じゃないの!」


学園内に危険を呼び寄せたことにより思い裁きが下り減点は勿論のこと、一ヶ月の停学処分を受けることになった。


「停学になったらまずくない?」

「ああ、鉄ランク格下げだろ」


基本、ランクには三つのパターンしかないが例外がある。

ランク付けにもならない最低中の最低だった。
そのランクに格下げになった場合、寮も酷くあばら家のような寮で過ごさなくてはならない。

食事も最低でそこから這い上がるのはよっぽどの不屈の精神を持つ者以外は無理だ。


「退学にならなかっただけましよね」

「まぁ時間の問題だろ?」


他人事のように話す他の学科の生徒達だった。



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