57 / 408
第二部メトロ学園へ入学
21選択
しおりを挟む授業が終りシャワーを浴びて更衣室を出る。
「お疲れ」
「ええ」
既に三人は着替えを済ませていた。
「お前は貸し切りだよな」
「ええ一人でしたし」
騎士科に女子は一人でなので気にすることもなく使える。
「はぁー、早く騎士科に女子が入らねぇかな」
「変態とね」
「おい!男のロマンが解らねぇ奴だな!」
健全な男子たるもの普通のことだと言うが、胸の内に秘める分には問題ないが言葉に出して言う時点でアウトだった。
「下品です」
「ルーク!!」
「エステルさん、汚れると」
サブローはすぐにエステルを隠そうとする。
「おいおい、いくら何でも俺は子供、特に貧乳は」
ガシッ!
最後まで言い終わる前に胸倉を掴まれる。
「今すぐ刺さる?」
「スイマセン」
学習能力がないユランは過ちを再び繰り返す。
「エステルさん、気にすることないとね」
「そうですよ。ユランさんも女性に対して失礼です」
キッと睨むルークは涙目だったが、怖くとも何ともない。
「それにしてもエステルは発育が遅いよな?16・7にしては」
「確かにこまか…小さすぎとね」
「そうですね」
ユランはともかく二人はエステルの成長が通常よりも遅いと思ったが…
「私は数えで14です」
「「「は?」」」
誕生日を迎えれば14歳になるが実際はまだ13歳だった。
「13歳…」
「僕よりも年下」
「こまかとは思ったと」
成人しているかしていなかの年齢ぐらいと思っていた。
「13歳ってことは社交界デビューは」
「デビュタントは済ませましたが令嬢として社交界に出る気はありません」
「なんね?」
「色々と事情がありまして、家督を継がなくてはなりません」
同い年の少女は美しく着飾っている。
魔法科の女子生徒もお洒落を楽しんでいるのにエステルは服装も質素で暇さえあれば訓練や勉強ばかりだ。
(なんていうか…)
貴族の社会のことをそこまで詳しくしているわけではないがエステルぐらいの年齢の令嬢は婚約者がいて当たり前だった。
花嫁修業の為にも貴族院に入り嫁入を待つだけなのに。
「父の爵位を継ぐには騎士にならなくてはダメだから」
剣を握る手に力が入る。
立ち止っている時間も悩んでいる時間もない。
これでよかったなんて簡単には言えないが最善の方法を考えこの選択を選んできた。
「後悔してないのか」
「きっといつかするかもしれませんね」
「え?」
後悔する日がもしかしたら来るかもしれない。
女で騎士を目指すのはどれ程大変か今のエステルには計り知れないが…
「どの道を選んでも後悔はするかもしれない」
「どの道も?」
「ええ、だからやる前に悔やむよりもやってから悔やみたいんです」
あの時、ああすればよかった。
こうすればよかったと、やる前に悔やむよりもやってから悔やんだ方がいい。
(前世でそうだったように…)
何もしようとしなかったあの頃の自分。
もっと足掻けばよかったのに、足掻くこともしなかった。
「道を選ぶってことはそういうことでしょ」
何かを選ぶいじょは何かを捨てなくてはならない。
「二択を迫られた時、私はその選択で後悔する日が来るかもしれません」
それでもその時の最善の選択をしたいと思う。
「私はここに車では自分で折り合いをつけて望む道を選んできました。だから悔やんでも納得できます」
選ぶこともできなかったあのころに比べれば、ずっといい。
この先選んだ道がどうなるかは解らない。
それでも願わくば、選んだ道が明るい明日出会って欲しいと願った。
「さぁ、教室に戻りましょう」
一歩、一歩歩いて行きたい。
道が解らなくてもその先を自分で見つけることができれば。
その先は暗闇ではない。
そう信じていた。
けれど、平穏というのはい突然崩れるのだった。
***
「まさか老婆姫がこの学園に入っていたとは」
一人の男が囁く。
「危うく騙される所だった」
苦虫を嚙み潰したよう表情をする男はエステルの写真を握りつぶしていた。
165
お気に入りに追加
16,476
あなたにおすすめの小説
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

恋人が聖女のものになりました
キムラましゅろう
恋愛
「どうして?あんなにお願いしたのに……」
聖騎士の叙任式で聖女の前に跪く恋人ライルの姿に愕然とする主人公ユラル。
それは彼が『聖女の騎士(もの)』になったという証でもあった。
聖女が持つその神聖力によって、徐々に聖女の虜となってゆくように定められた聖騎士たち。
多くの聖騎士達の妻が、恋人が、婚約者が自分を省みなくなった相手を想い、ハンカチを涙で濡らしてきたのだ。
ライルが聖女の騎士になってしまった以上、ユラルもその女性たちの仲間入りをする事となってしまうのか……?
慢性誤字脱字病患者が執筆するお話です。
従って誤字脱字が多く見られ、ご自身で脳内変換して頂く必要がございます。予めご了承下さいませ。
完全ご都合主義、ノーリアリティ、ノークオリティのお話となります。
菩薩の如き広いお心でお読みくださいませ。
小説家になろうさんでも投稿します。

どんなに私が愛しても
豆狸
恋愛
どんなに遠く離れていても、この想いがけして届かないとわかっていても、私はずっと殿下を愛しています。
これからもずっと貴方の幸せを祈り続けています。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。
秋月一花
恋愛
「お前はいつものろまで、クズで、私の引き立て役なのよ、お姉様」
私を蔑む視線を向けて、双子の妹がそう言った。
「本当、お前と違ってジュリーは賢くて、裁縫も刺繍も天才的だよ」
愛しそうな表情を浮かべて、妹を抱きしめるお父様。
「――あなたは、この家に要らないのよ」
扇子で私の頬を叩くお母様。
……そんなに私のことが嫌いなら、消えることを選びます。
消えた先で、私は『愛』を知ることが出来た。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる