ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第二部メトロ学園へ入学

21選択

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授業が終りシャワーを浴びて更衣室を出る。


「お疲れ」

「ええ」

既に三人は着替えを済ませていた。

「お前は貸し切りだよな」

「ええ一人でしたし」

騎士科に女子は一人でなので気にすることもなく使える。

「はぁー、早く騎士科に女子が入らねぇかな」

「変態とね」

「おい!男のロマンが解らねぇ奴だな!」

健全な男子たるもの普通のことだと言うが、胸の内に秘める分には問題ないが言葉に出して言う時点でアウトだった。

「下品です」

「ルーク!!」

「エステルさん、汚れると」

サブローはすぐにエステルを隠そうとする。


「おいおい、いくら何でも俺は子供、特に貧乳は」

ガシッ!


最後まで言い終わる前に胸倉を掴まれる。

「今すぐ刺さる?」

「スイマセン」

学習能力がないユランは過ちを再び繰り返す。


「エステルさん、気にすることないとね」

「そうですよ。ユランさんも女性に対して失礼です」


キッと睨むルークは涙目だったが、怖くとも何ともない。


「それにしてもエステルは発育が遅いよな?16・7にしては」

「確かにこまか…小さすぎとね」

「そうですね」

ユランはともかく二人はエステルの成長が通常よりも遅いと思ったが…

「私は数えで14です」

「「「は?」」」

誕生日を迎えれば14歳になるが実際はまだ13歳だった。

「13歳…」

「僕よりも年下」

「こまかとは思ったと」


成人しているかしていなかの年齢ぐらいと思っていた。


「13歳ってことは社交界デビューは」

「デビュタントは済ませましたが令嬢として社交界に出る気はありません」

「なんね?」

「色々と事情がありまして、家督を継がなくてはなりません」

同い年の少女は美しく着飾っている。
魔法科の女子生徒もお洒落を楽しんでいるのにエステルは服装も質素で暇さえあれば訓練や勉強ばかりだ。


(なんていうか…)


貴族の社会のことをそこまで詳しくしているわけではないがエステルぐらいの年齢の令嬢は婚約者がいて当たり前だった。

花嫁修業の為にも貴族院に入り嫁入を待つだけなのに。

「父の爵位を継ぐには騎士にならなくてはダメだから」


剣を握る手に力が入る。
立ち止っている時間も悩んでいる時間もない。


これでよかったなんて簡単には言えないが最善の方法を考えこの選択を選んできた。


「後悔してないのか」

「きっといつかするかもしれませんね」

「え?」

後悔する日がもしかしたら来るかもしれない。

女で騎士を目指すのはどれ程大変か今のエステルには計り知れないが…


「どの道を選んでも後悔はするかもしれない」

「どの道も?」

「ええ、だからやる前に悔やむよりもやってから悔やみたいんです」


あの時、ああすればよかった。
こうすればよかったと、やる前に悔やむよりもやってから悔やんだ方がいい。


(前世でそうだったように…)


何もしようとしなかったあの頃の自分。
もっと足掻けばよかったのに、足掻くこともしなかった。


「道を選ぶってことはそういうことでしょ」

何かを選ぶいじょは何かを捨てなくてはならない。

「二択を迫られた時、私はその選択で後悔する日が来るかもしれません」

それでもその時の最善の選択をしたいと思う。


「私はここに車では自分で折り合いをつけて望む道を選んできました。だから悔やんでも納得できます」

選ぶこともできなかったあのころに比べれば、ずっといい。


この先選んだ道がどうなるかは解らない。

それでも願わくば、選んだ道が明るい明日みらい出会って欲しいと願った。



「さぁ、教室に戻りましょう」


一歩、一歩歩いて行きたい。

道が解らなくてもその先を自分で見つけることができれば。


その先は暗闇ではない。


そう信じていた。



けれど、平穏というのはい突然崩れるのだった。



***




「まさか老婆姫がこの学園に入っていたとは」


一人の男が囁く。


「危うく騙される所だった」


苦虫を嚙み潰したよう表情をする男はエステルの写真を握りつぶしていた。

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