54 / 408
第二部メトロ学園へ入学
19井戸端会議
しおりを挟む休み時間を終え、男三人は緊急会議をしていた。
「よし、揃ったな」
「はい」
「おう」
エステルはまだ着替えているのを見計らってユランは二人を呼び出した。
「次の授業で俺達の役目は解っているな」
「はい!エステルさんをお守りすることですね!」
「馬鹿をぶっ潰すたい」
気合を入れる二人だったがユランは頭を横に振る。
「違えだろ」
「「え?」」
てっきりエステルを守ることだと思っていた。
「ルークはそんな余裕ねぇだろ」
「ぐっ!」
体力のないルークはエステルを守る余裕はない。
「サブロー、決闘以外の争い事は禁止だ」
「ぐっ!」
個人的な暴力行為は禁じられているのだが、既にクラスメイトは暴力行為をしているが訴えられない範囲だった。
(まぁ、嫌がらせの証拠をそろえれば一網打尽だけどな)
ユランは陰でこっそり動きながら色々と手札を揃えていることに三人は知る由もない。
「じゃあどうするとね?」
「そうですよ!絶対何か仕掛けてきますよ!」
これまでのことを思えば何も仕掛けてこない方がおかしい。
エステルが不利になるようなことを仕掛けて来るに決まっていると思った。
「だからそうならないようにするんだろうが?」
「なん?」
「ようするに俺達はエステルへの妨害だけを防げばいいんだよ」
「それでどうにかなると!」
サブローは睨みつけ怒鳴り散らす。
「お前の言い分は解るが俺達が庇ったらアイツの立場が悪くなる。陰で俺等はエステルと肉体関係があるとか言われんだぜ?」
「「なっ!!」」
「あげく金で雇われているか、もしくは脅迫されて仕方なく一緒にいると思われているぜ」
色んな噂を流されているが偽りばかりだ。
「酷いです!」
「まぁ男三人の中に女一人ってのがな…」
クラスには女子生徒がエステル一人だけなので仕方ないのだが周りはそう見ないので余計に厄介だった。
男を手玉に取っている悪女にも見えかねないのだが…
「今すぐラーメンの替え玉入れると!」
「では僕は何を突っ込みましょうか…」
普段は天使と呼ばれる程愛らしいルークの目が悪魔のよう見える。
「だから落ち着けって」
「ユラン、平気と?」
常に冷静なユランに苛立つ。
ちゃらんぽらんでありなが周りをちゃんと見ているユランをそれなりに信用していたのだ。
「無暗に動いたらアイツの立場がさらに悪くなるだろ?やるならバレないようにすべきだろ?」
ルークの悪魔の微笑とは比べ物にならなかった。
「俺、良い奴じゃねぇんだけどさ」
「お…おう」
「真剣に頑張っているやつをはめる奴嫌いなんだよな」
エステルは誰よりも努力している。
口には出さないが騎士になるべく誰よりも勉強して血のにじむような努力を重ねているのを知っている。
(アイツは本当に不器用なだけだ)
人付き合いが苦手でと空回りすることもあるが、根が優しいと思った。
これまでの授業でも嫌がらせを受けてもエステル自身の嫌がらせは受け流していたが、ルークやサブローが関わると情け容赦なく叩き潰していた。
自分のことは後回しで他人のことばかりだ。
人が好過ぎる所が有るが、そんなエステルだからこそユランは放っておけなかった。
「ようするにバレないようにぶん殴るっちゃ!」
「だから違うって言ってんだろ!本当に人の話をきかえねぇな!」
「僕もがんばります」
「お前もかよ!」
それぞれ同じ方向など見ていない。
違う方向ばかり見ていても目指す場所は同じだった。
想いはただ一つ。
大切な友人を守ってあげたいという思いだけだった。
170
お気に入りに追加
16,476
あなたにおすすめの小説
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。
秋月一花
恋愛
「お前はいつものろまで、クズで、私の引き立て役なのよ、お姉様」
私を蔑む視線を向けて、双子の妹がそう言った。
「本当、お前と違ってジュリーは賢くて、裁縫も刺繍も天才的だよ」
愛しそうな表情を浮かべて、妹を抱きしめるお父様。
「――あなたは、この家に要らないのよ」
扇子で私の頬を叩くお母様。
……そんなに私のことが嫌いなら、消えることを選びます。
消えた先で、私は『愛』を知ることが出来た。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
牢で死ぬはずだった公爵令嬢
鈴元 香奈
恋愛
婚約していた王子に裏切られ無実の罪で牢に入れられてしまった公爵令嬢リーゼは、牢番に助け出されて見知らぬ男に託された。
表紙女性イラストはしろ様(SKIMA)、背景はくらうど職人様(イラストAC)、馬上の人物はシルエットACさんよりお借りしています。
小説家になろうさんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる