ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第二部メトロ学園へ入学

19井戸端会議

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休み時間を終え、男三人は緊急会議をしていた。


「よし、揃ったな」

「はい」

「おう」


エステルはまだ着替えているのを見計らってユランは二人を呼び出した。

「次の授業で俺達の役目は解っているな」

「はい!エステルさんをお守りすることですね!」

「馬鹿をぶっ潰すたい」

気合を入れる二人だったがユランは頭を横に振る。


「違えだろ」

「「え?」」

てっきりエステルを守ることだと思っていた。


「ルークはそんな余裕ねぇだろ」

「ぐっ!」

体力のないルークはエステルを守る余裕はない。

「サブロー、決闘デュエロ以外の争い事は禁止だ」

「ぐっ!」

個人的な暴力行為は禁じられているのだが、既にクラスメイトは暴力行為をしているが訴えられない範囲だった。


(まぁ、嫌がらせの証拠をそろえれば一網打尽だけどな)


ユランは陰でこっそり動きながら色々と手札を揃えていることに三人は知る由もない。


「じゃあどうするとね?」

「そうですよ!絶対何か仕掛けてきますよ!」

これまでのことを思えば何も仕掛けてこない方がおかしい。
エステルが不利になるようなことを仕掛けて来るに決まっていると思った。

「だからそうならないようにするんだろうが?」

「なん?」

「ようするに俺達はエステルへの妨害だけを防げばいいんだよ」

「それでどうにかなると!」


サブローは睨みつけ怒鳴り散らす。


「お前の言い分は解るが俺達が庇ったらアイツの立場が悪くなる。陰で俺等はエステルと肉体関係があるとか言われんだぜ?」


「「なっ!!」」

「あげく金で雇われているか、もしくは脅迫されて仕方なく一緒にいると思われているぜ」

色んな噂を流されているが偽りばかりだ。


「酷いです!」

「まぁ男三人の中に女一人ってのがな…」

クラスには女子生徒がエステル一人だけなので仕方ないのだが周りはそう見ないので余計に厄介だった。


男を手玉に取っている悪女にも見えかねないのだが…


「今すぐラーメンの替え玉入れると!」

「では僕は何を突っ込みましょうか…」

普段は天使と呼ばれる程愛らしいルークの目が悪魔のよう見える。


「だから落ち着けって」

「ユラン、平気と?」

常に冷静なユランに苛立つ。
ちゃらんぽらんでありなが周りをちゃんと見ているユランをそれなりに信用していたのだ。


「無暗に動いたらアイツの立場がさらに悪くなるだろ?やるならバレないようにすべきだろ?」

ルークの悪魔の微笑とは比べ物にならなかった。


「俺、良い奴じゃねぇんだけどさ」


「お…おう」

「真剣に頑張っているやつをはめる奴嫌いなんだよな」


エステルは誰よりも努力している。
口には出さないが騎士になるべく誰よりも勉強して血のにじむような努力を重ねているのを知っている。


(アイツは本当に不器用なだけだ)

人付き合いが苦手でと空回りすることもあるが、根が優しいと思った。


これまでの授業でも嫌がらせを受けてもエステル自身の嫌がらせは受け流していたが、ルークやサブローが関わると情け容赦なく叩き潰していた。


自分のことは後回しで他人のことばかりだ。
人が好過ぎる所が有るが、そんなエステルだからこそユランは放っておけなかった。



「ようするにバレないようにぶん殴るっちゃ!」

「だから違うって言ってんだろ!本当に人の話をきかえねぇな!」


「僕もがんばります」

「お前もかよ!」


それぞれ同じ方向など見ていない。
違う方向ばかり見ていても目指す場所は同じだった。


想いはただ一つ。


大切な友人を守ってあげたいという思いだけだった。


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