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第一部目覚めた先は巻き戻った世界
27.手の平で転がされる
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ヘレンとカルロが正式に婚約者と発表された。
しかも王が認めたとあれば覆すことは不可能に近い。
ここで異論を唱えれば一気に批難を受けるのはヘレンとカルロにその両親だ。
(冗談ではありませんわ!)
内心では苛立つフレッツ侯爵夫人は当初エステルを妻に望んでいたのだから。
その理由は跡継ぎと言うこともあるが貴族の令嬢にしては大人しく思慮深いからだ。
対してヘレンは派手好きで金遣いが荒い。
侯爵家は多額の借金を背負っているので借金を肩代わりしてもらう代わりにカルロが婿養子と言う形になっていた。
もしヘレンと婚約を結んだらどうなるのか。
「陛下、私事ではありますがここで発表したいことがございます」
「何だ?申してみよロバート」
「はい」
良いこととは続かないが悪いことは続くものだった。
「はい、弟の娘、エステルを正式に養女として迎えたことは御存じかと思われます」
「うむ」
「ですが手続きが終わっておりませんでしたが。先日ようやくすべての手続きが終わりエステルは私達の娘として発表させていただきます」
「では跡継ぎにか?」
跡継ぎとは公爵家の跡継ぎという意味なので特に驚かなかったのだが…
「ですがもう一つ」
「ん?」
「私の跡をエステルに継がせようと考えております」
「なんだと!」
ロバートの跡継ぎと言われ驚いたのは王だけではない。
「侯爵!それは…」
「エステルは成人しておりませんが、将来は王家の方をお守りできるよう私が鍛え上げるつもりです」
王族を守ると言う言葉に王妃は気づく。
「エステル嬢を騎士にする気ですか?」
「お父様…?」
エステルも驚きながら尋ねるとロバートは頷く。
「ええ、そのつもりです。常に王太子様の盾となり剣になれるよう鍛え上げます。後に王太子妃となる方をお守りできるように」
王太子妃を守るのは近衛騎士でも血筋、教養、身分に優れ、
女性であることが望ましいとされているのでエステルは全ての条件を満たしている。
「誠かジェームズ」
「ええ、そのつもりです」
未だに現実味がないエステル。
どうして気づいていたのか解らなかったが不敵に微笑むガブリエルとヴィオラを見る。
(まさか…)
二人ともグルだったのだと思い知った。
「ヘレンですがまだ婚約中ですので今のうちにしっかり教育をしてやってください」
遠まわしにヘレンの教育はこちらではしないので自分達でしろと言っていた。
既に言い返す気力など無かった。
「ヘレン、貴方はこれよりカルロ殿の婚約者として努力なさい。愛する人を支え守るのです」
「お祖母様?」
戸惑うヘレンにできるだけ優しく言い聞かせるガブリエル。
「貴方はカルロ殿に望まれて嫁ぐのです。この貴族社会は政略結婚が当たり前ですが、貴方は愛され、望まれて嫁げるのです。素晴らしいことです」
「私だけが?」
「ええ、女としてこれ以上の幸せはありませんわ」
自分だけが特別だと言う言葉は甘い囁きにも聞こえる。
未だに状況を飲み込め切れていないカルロはどうすべきか悩んでいたが、ヘレンは知るはずもなく告げる。
「お母様、私はカルロ様を愛しています」
「ヘレン!」
「結婚は愛し愛されてするべきですもの」
「アルスター伯夫人、私もヘレンを愛しています。どうか許してください」
突然のことで困惑をしたものの、婚約者が変わるだけなのでたいしたことではない。
「ヘレンの夫として、エステルの補佐として勤めたいと思います」
元よりヘレンに好意を抱いていたのでカルロにとって喜ばしいことだった。
「本当に愛した女性と苦楽を共にしたいと思います」
若すぎる二人は真実の愛を貫くことを決めたが、ジュリエッタは苦悩した。
愛され望まれてるならば女としてこれ以上の幸せはない。
何よりヘレンが望んでいるならば…と。
「解りました」
「頑張るのだぞ」
二人は婚約を許したのだが気づいていなかった。
ガブリエルはヘレンに優しい言葉をかける時に一度もヘレンの目を見ていなかった。
フレッツ侯爵夫妻が絶望的な表情をしていたことにも。
「うっ…うむ!まぁ、めでたいことだな」
「父上…」
「クロードよ、父は肩身が狭いのだ。そんな顔で見るな」
妻にしてやられる弱い父を可哀想な目で見るクロードだった。
「してやられましたわ」
「ええ、そこでクロードの婚約者にと進言しようと思ってましたが」
「上手く利用されましたわね」
ロバートは、王妃とモントワール侯爵夫人がカルロとの婚約破棄を狙っている事に気づいていた。
おそらくこの場を利用して仕掛けて来ると踏んだので上手く利用した。
「ですが、諦めなくてよ」
「ええ、エステル様が騎士になっても婚約者は必要ですわ」
「そうですとも。なんとしてもクロードの伴侶に迎えますわ」
「「ホホホホ!!」」
二人の妃は黒い笑みを浮かべ笑っていた。
「うぐっ!胃が…胃が痛いぞ」
「父上…」
「クロードよ。父は将来が不安だ」
裏で国を動かしているのは二人の妃で王は補佐的なことをしているに過ぎない。
そのうち国を乗っ取られるのではないか? と日増しに不安が募るのだが、優秀な息子二人は既に気づいてる。
(もう乗っ取られているだろ?)
(言ってはなりません兄上)
言葉に出さないが既に王妃は王の役目を果たし、政治に関してはモントワール侯爵夫人が牛耳っている。
「ですがよかったではありませんか兄上」
「何がだ」
「これでエステルはフリーですよ」
「お前な…」
カルロとの婚約が無くなるのは願ったり叶ったりだが、父親の跡を引き継ぎ王族騎士になったらハードルが高くなる。
「カルロの婚約者だったほうが楽だった」
「頑張ってください。僕は王太子ですから彼女が騎士になってくれれば四六時中一緒にいれますし」
「お前な…」
これまでの仕返しだった。
カルロの婚約者である以上、エドワードはエステルの立場を考えて遠慮していたのだが、サロンで会った時に既に遠慮をするのを止めていた。
「今まで大人しかったくせに」
「ええ、僕は彼女が幸せになるならと応援するつもりだったのです」
だがサロンでの一件で気づいた。
エステルがこのまま永遠に苦しむぐらいならば婚約破棄をした方がいい。
「頑張ってください兄上」
(簡単に言うなよ…)
クロードの立場では難しい。
エステルは王族の護衛騎士になるならば近衛騎士を目指すのだから、伴侶になる為にはそれ以上の地位が必要になる。
(やるしかないか…)
一番いいのはエステルがクロードの気持ちに気づくことだが、恋愛に関しては限りなく疎いのでその可能性は難しく前途多難だった。
しかも王が認めたとあれば覆すことは不可能に近い。
ここで異論を唱えれば一気に批難を受けるのはヘレンとカルロにその両親だ。
(冗談ではありませんわ!)
内心では苛立つフレッツ侯爵夫人は当初エステルを妻に望んでいたのだから。
その理由は跡継ぎと言うこともあるが貴族の令嬢にしては大人しく思慮深いからだ。
対してヘレンは派手好きで金遣いが荒い。
侯爵家は多額の借金を背負っているので借金を肩代わりしてもらう代わりにカルロが婿養子と言う形になっていた。
もしヘレンと婚約を結んだらどうなるのか。
「陛下、私事ではありますがここで発表したいことがございます」
「何だ?申してみよロバート」
「はい」
良いこととは続かないが悪いことは続くものだった。
「はい、弟の娘、エステルを正式に養女として迎えたことは御存じかと思われます」
「うむ」
「ですが手続きが終わっておりませんでしたが。先日ようやくすべての手続きが終わりエステルは私達の娘として発表させていただきます」
「では跡継ぎにか?」
跡継ぎとは公爵家の跡継ぎという意味なので特に驚かなかったのだが…
「ですがもう一つ」
「ん?」
「私の跡をエステルに継がせようと考えております」
「なんだと!」
ロバートの跡継ぎと言われ驚いたのは王だけではない。
「侯爵!それは…」
「エステルは成人しておりませんが、将来は王家の方をお守りできるよう私が鍛え上げるつもりです」
王族を守ると言う言葉に王妃は気づく。
「エステル嬢を騎士にする気ですか?」
「お父様…?」
エステルも驚きながら尋ねるとロバートは頷く。
「ええ、そのつもりです。常に王太子様の盾となり剣になれるよう鍛え上げます。後に王太子妃となる方をお守りできるように」
王太子妃を守るのは近衛騎士でも血筋、教養、身分に優れ、
女性であることが望ましいとされているのでエステルは全ての条件を満たしている。
「誠かジェームズ」
「ええ、そのつもりです」
未だに現実味がないエステル。
どうして気づいていたのか解らなかったが不敵に微笑むガブリエルとヴィオラを見る。
(まさか…)
二人ともグルだったのだと思い知った。
「ヘレンですがまだ婚約中ですので今のうちにしっかり教育をしてやってください」
遠まわしにヘレンの教育はこちらではしないので自分達でしろと言っていた。
既に言い返す気力など無かった。
「ヘレン、貴方はこれよりカルロ殿の婚約者として努力なさい。愛する人を支え守るのです」
「お祖母様?」
戸惑うヘレンにできるだけ優しく言い聞かせるガブリエル。
「貴方はカルロ殿に望まれて嫁ぐのです。この貴族社会は政略結婚が当たり前ですが、貴方は愛され、望まれて嫁げるのです。素晴らしいことです」
「私だけが?」
「ええ、女としてこれ以上の幸せはありませんわ」
自分だけが特別だと言う言葉は甘い囁きにも聞こえる。
未だに状況を飲み込め切れていないカルロはどうすべきか悩んでいたが、ヘレンは知るはずもなく告げる。
「お母様、私はカルロ様を愛しています」
「ヘレン!」
「結婚は愛し愛されてするべきですもの」
「アルスター伯夫人、私もヘレンを愛しています。どうか許してください」
突然のことで困惑をしたものの、婚約者が変わるだけなのでたいしたことではない。
「ヘレンの夫として、エステルの補佐として勤めたいと思います」
元よりヘレンに好意を抱いていたのでカルロにとって喜ばしいことだった。
「本当に愛した女性と苦楽を共にしたいと思います」
若すぎる二人は真実の愛を貫くことを決めたが、ジュリエッタは苦悩した。
愛され望まれてるならば女としてこれ以上の幸せはない。
何よりヘレンが望んでいるならば…と。
「解りました」
「頑張るのだぞ」
二人は婚約を許したのだが気づいていなかった。
ガブリエルはヘレンに優しい言葉をかける時に一度もヘレンの目を見ていなかった。
フレッツ侯爵夫妻が絶望的な表情をしていたことにも。
「うっ…うむ!まぁ、めでたいことだな」
「父上…」
「クロードよ、父は肩身が狭いのだ。そんな顔で見るな」
妻にしてやられる弱い父を可哀想な目で見るクロードだった。
「してやられましたわ」
「ええ、そこでクロードの婚約者にと進言しようと思ってましたが」
「上手く利用されましたわね」
ロバートは、王妃とモントワール侯爵夫人がカルロとの婚約破棄を狙っている事に気づいていた。
おそらくこの場を利用して仕掛けて来ると踏んだので上手く利用した。
「ですが、諦めなくてよ」
「ええ、エステル様が騎士になっても婚約者は必要ですわ」
「そうですとも。なんとしてもクロードの伴侶に迎えますわ」
「「ホホホホ!!」」
二人の妃は黒い笑みを浮かべ笑っていた。
「うぐっ!胃が…胃が痛いぞ」
「父上…」
「クロードよ。父は将来が不安だ」
裏で国を動かしているのは二人の妃で王は補佐的なことをしているに過ぎない。
そのうち国を乗っ取られるのではないか? と日増しに不安が募るのだが、優秀な息子二人は既に気づいてる。
(もう乗っ取られているだろ?)
(言ってはなりません兄上)
言葉に出さないが既に王妃は王の役目を果たし、政治に関してはモントワール侯爵夫人が牛耳っている。
「ですがよかったではありませんか兄上」
「何がだ」
「これでエステルはフリーですよ」
「お前な…」
カルロとの婚約が無くなるのは願ったり叶ったりだが、父親の跡を引き継ぎ王族騎士になったらハードルが高くなる。
「カルロの婚約者だったほうが楽だった」
「頑張ってください。僕は王太子ですから彼女が騎士になってくれれば四六時中一緒にいれますし」
「お前な…」
これまでの仕返しだった。
カルロの婚約者である以上、エドワードはエステルの立場を考えて遠慮していたのだが、サロンで会った時に既に遠慮をするのを止めていた。
「今まで大人しかったくせに」
「ええ、僕は彼女が幸せになるならと応援するつもりだったのです」
だがサロンでの一件で気づいた。
エステルがこのまま永遠に苦しむぐらいならば婚約破棄をした方がいい。
「頑張ってください兄上」
(簡単に言うなよ…)
クロードの立場では難しい。
エステルは王族の護衛騎士になるならば近衛騎士を目指すのだから、伴侶になる為にはそれ以上の地位が必要になる。
(やるしかないか…)
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