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179ジョイルの目覚め
しおりを挟む計画を順調に進める中、良い知らせが来た。
「ジョイルの意識が戻ったの!」
「はい、意識もはっきりしているそうです。検査した結果脳にも異常もなく」
とりあえずは安堵した。
これから厳しいリハビリをしなくてはならない。
元のように歩けるようになるのは困難だったけど、それでも。
「奥様!先生が目を覚ましたとは!」
「本当ですか!」
連日徹夜で、エセルバートを懲らしめる為に走り回っていた執事の皆さんはボロボロだった。
「先生が…先生が目を覚まされたと」
「医師の見立てでは、意識もしっかりされ脳に以上無いそうです」
「良かった…」
「馬鹿、安心するのは早いだろうが!リハビリだ…いや、それよりも心のケアを!」
ジョイルの目覚めは彼等を喜ばせた。
ずっと熱で苦しみ、医師からは脳に損傷があれば日常生活も困難だと言われてた。
「奇跡です」
聞けば脳に異常があってもおかしくないとの事だった。
「奥様…私は」
「ジョイル、本当によく頑張ってくださいました」
「お祖父様ぁ!」
マヤはさっきからずっと泣いている。
ここ数日、ずっとジョイルに付き添い昼夜問わずお世話をしながらも心が折れそうになっていたのだから当然だわ。
「ジョイル、この度は…」
「全ては私の失態です。ですが証拠は掴みました」
「ジョイル‥」
エセルバートに暴行を受ける寸前に証拠を掴んだ事。
そして彼の犯して来た罪の数々だけでなく、寄付金を不正に利用している事実を確実な状態で掴んでいるとのことだ。
バルト様が掴んだ証拠だけではない。
被害者であるジョイルの証言を合わせれば確実にあの男を牢獄にぶち込める。
そしてできるだけ思い罪にして。
「孤児院の寄付金の横領は芋ずる形式で行われています。いわば感染病気と同じです。一人が行えば続くのです」
「ええ…」
私は以前に寄付金の不正に関して対処する為に金銭ではなく物資にすればいいと思った。
安心していたんだ。
お金に換えて売る方法はいくらでもあるのに。
調査だってそこまで判断ができなかった。
最悪の事態を想定できていなかった。
先の先まで読めなかった私の落ち度でもある。
「奥様、今は急ぎ対策をしてください」
こんな状況になっても仕事の事ばかり。
「奥様、私も動かせてくださいませ」
「マヤ、貴女は…」
ジョイルの傍にいたいはずなのに。
「マヤ、私の代わりに頼んだぞ」
「はい、お祖父様!」
二人が心を決めている以上は私に何か言えることはなかった。
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