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160硝子の壁越し
しおりを挟む案内された後に久々の再会を果たした。
別に感動の再会ではない。
最悪の再会と言った方がいいかもしれない。
「アリア!」
「遅いわよ!」
メリッサ様に至っては既に呼び捨てだ。
別に気にしないけど、私を憎むような視線を向けられる筋合いはない。
それにしても人間とはここまで変わるのかしら。
美しい髪は白髪になって、綺麗に整えられていた肌はガサガサで見る影もないわ。
見えない壁越しなのでマシなのだろうけど。
「うっ…何、この異臭は」
臭くてハンカチで口元を抑える。
牢獄はある程度清潔に保たれているはず。
…と言う事はこの匂いは。
「なんて酷い匂い」
「は?何を言っているの!早くここから出しなさい」
「そうよ。この出来損ないが!」
罵倒だけが飛び通う。
二人は当然のように命令に従うと信じて疑わなかった。
監視役が疲れ切った表情で私を見る。
目で訴えている。
しかし、私は…
「この度面会に応じたのは、最後の別れを言いに来たのです。保釈金を支払う気もありません。もちろん二人の罪を軽くするように懇願する気は毛頭ありません」
「は?何を言って…」
「ついに頭がおかしくなったの!そんな事許されるわけないでしょう」
「私は既に他人になっております。離縁は成立し関係を断っています…その時点で私が二人に保釈金を支払う権利はありません」
私はきっぱりと告げ、鞄から書類を出す。
「こちら、私が離縁した後に名誉棄損に関する事、そして侮辱されたことに対する訴えに。離縁した後に私の私物を売り払った事に関しての訴えです」
「あれは…私の物よ」
「そうよ」
「私の花嫁道具を私の許可無しに売買する事は法律で禁じられています。よって返還を要求し、この度を持って関係を断たせていただきます」
書類を見せると二人は肩を震わせ暴れ出した。
「ふざけないで!そんな事許されるはずが…」
「許されますわ。私と貴女達の間に何もない」
「馬鹿を言わないで!アンタと兄の間に子供がいるでしょ…アンタ子を」
「今の夫との間に出来た子供です。カスティージョさんと私は夫婦の契りもしていませんし。あの方は種無しです・子供ができない体ですから無理ですわ。鑑定結果もお持ちしましたわ」
もう一通見せるとカスティージョ夫人は絶句している。
これはかなりの屈辱でしょうけど、ここで止めるわけにはいかない。
私はこの場で穏やかな話し合いをするつもりはない。
過去を完全に断ち切る為に心を鬼にしてこの場に来たのだから。
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