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137新たな命に乾杯~バルトside
しおりを挟む落ち着かないエレンディスに呆れながらも見守り続けた。
アリアのお腹の子供は順調で医師からも予定通り出産すると聞いている。
「してエレナ、替え玉の準備はどうだ」
「滞りありません」
今危惧するのは平民となった馬鹿がアリアをどうするか。
どうせアリアが妊娠したら自分の子供だと馬鹿な事を言っているのだろうが。
「あの元夫、エセルバートと言ったか」
「名前を思い出すだけでも不愉快です」
「まぁな」
俺ももし妻の前の夫があんな最低野郎なら不愉快だが。
「だが良かったんじゃないか?」
「何がです?」
「バツ一ってのは外聞が悪い。だが白い結婚で尚且つ暴力良人で金の亡者で愛人を作り放題の種無し男なら周りは同情するだろう」
「えっ…」
「人は物語を望む。ハッピーエンドよりも悲劇の方が好まれる」
他人の不幸は密の味。
男尊女卑のこの世では男が堕落する様は女性の酒の肴として最高だ。
「社交界でアリアがのし上がる為に犠牲になってもらうんだよ」
「成程」
「それにあんな屑に嫉妬心を抱かないだろう」
「当然です」
俺から言うのもなんだが、頭の固さと正義感の塊であるエレンディスは中々の男だと思う。
まぁ少し馬鹿だが。
「夫婦生活は円満だ」
「はい」
「その一番の理由は、元馬鹿夫も影響している」
エレンディスは後悔していたはずだ。
あの時かけおちでもなんでもしてアリアを連れて逃げればよかったと。
だができなかった。
貴族で騎士である事もそうだが、社交界で糾弾されるのはアリアだ。
だからこそ見守る選択をしたのだろう。
その結果がこうなったが…ある意味いい方向に進んだ。
「アリアには悪いが、元馬鹿夫と一度結婚しているからこそ社交界でも評価された」
「そんな…あんまりです」
「だが、普通に円満な夫婦だったらどうだ?」
ここまでの演出があるからこそ周りはアリアに同情的で評価もされた。
まぁ夫婦関係が円満でも飼い殺しにされた状態だ。
あの母親と娘を切り捨てられないならな。
「俺はアリアを気に入っているんだ」
「奥様の薬草とお料理ですね」
「ああ」
「否定なさらないのですね」
アリアを気に入っているのは確かだ。
だが恋愛感情や女性を感じているわけではない。
まぁ俺のタイプとは真逆だし間違っても友人の妻に手を出す程女性に苦労していないし、そんな趣味はない。
「アリアと離縁になったらこんな美味い食事が食べられなくなる」
「それが本心ですか」
「悪いか?」
「いいえ」
エレナは中々いい性格をしているな。
アリアのような素直な女性かは嫌いじゃないが俺は気が強くやられたらやり返すような強い女性の方が好きなんだけどな。
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