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117全てが異なる初夜
しおりを挟む新婚旅行の初日に私はエレンディス様と初夜をした。
ある程度は覚悟をしていたし、夫婦としては義務だった。
なのに何もかも想像できないものだった。
「アリア…怯えないで欲しい」
「え?」
「私はこの日を夢に何度見たか…」
優しく抱きしめられ、そのままお姫様抱っこをされ私は固まった。
だって私の想像と全然違う。
こんな風に優しい言葉をかけられ、ゆっくりと話をしながらなんて。
「固くならないで欲しい…無理かもしれないが、ゆっくりでいい」
何処までも優しい手だった。
私は今夜本当の意味で夫婦になるのだけど、触れからがゆっくりでこんなに優しく触れてもらえるとは思わはなかった。
だってあの人はこんな風に気遣ってくれなかった。
行為は義務で私は恐ろしさと痛みに耐えていた。
目を閉じながら耐えるように…
「アリア…君はもしかして」
「え…」
「あの男と夫婦になってなかったのか」
終わった…
私は夫婦の契りをちゃんとしていない。
バレてしまった。
どうしよう!
ドン引きされてしまうのかしら?
それとも…
不安を抱きながらエレンディス様を見ると。
「見ないでくれ」
「えっ…」
頬を赤らめながら眉を下げていた。
「こんな情けない顔見られたくない」
「えっと…」
「君が抱かれていなくて嬉しくて…今とてもみっともない顔を」
エレンディス様の表情は幼い子供のようだった。
「あの…嬉しいんですか?」
「ああ」
「私がちゃんとしてないのに」
実は言うと、初夜は迎えたけど。
私が彼を受け入れられなかった事で一旦中断となってそれ以降は一度も床を共にしていない。
「私はあの男に抱かれている覚悟はしていた。例えそうであっても後悔はない」
「エレンディス様…」
「なのに、白いままなんて嬉し過ぎるじゃないか」
「ひゃっ!」
そのまま手を引かれ抱きしめられた。
「他の男に触れられる君を夢に見るたびに苦しくて身が引き咲かれる思いだった」
「へ…」
「君は知らないだろう。他の男が君に触れるのを見るのが嫌で…一度逃げたんだ」
そっと耳打ちされる声が官能的で。
色恋の疎い私でも解る。
男性に誘惑されてしまった私はクラクラする。
「ゆっくり君を抱きたい。この幸福を味わいたい」
「味わう…」
真っ赤になる私にエレンディス様は容赦なく耳から言葉で責める。
恥ずかしい!
まだ触れられていないのに、既に心臓が爆発しそうだった。
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