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115消えた元妻の行方~エセルバートside⑤
しおりを挟む執行人の所為で邸内の調度品や隠しておいた財産は押収されたが、ほとんどの品が贋作や偽物だった事で売却しても借金の返済にはならなかった。
「これも偽物か」
「この宝石なんてガラクタだな」
鑑定士も同行させていたようだがダイヤは全て偽物。
ドレスに関しても質の悪い記事を使っており、メリッサは騙されたのだと解った。
「ドレスも宝石も美術品は全て偽物だが、この薬草図鑑に、この茶器は相当な値段だな」
「は?」
執行人が箱に大事に納めているのはアリアが嫁に来た際に持って来た薬草図鑑や薬草のレシピノートだ。
「特にこのレシピノートは相当な金額になるな」
「他の品は屑だな…よくこんな偽物を買ったもんだ」
殺気から黙って聞いていれば。
乱暴に箱に入れられてる絵画は僕が商人から買った物だ。
他にもオークションで破格の値段で競り落とした品も沢山あるんだ。
「私の一点物のドレスが!」
「その宝石は隣国の商人から買った物よ!」
メリッサと母上も反論するも。
「これ偽物ですよ?鑑定したところただの硝子細工…こんな偽物をありがたがるなんて見る目がないな」
「このレシピ本の方がずっと価値がある」
「そうですね、このダイヤは金貨一枚の価値もありませんね」
「嘘よ。金貨100枚で買ったのよ!」
「他の宝石も売ってもドレス一着も買えないでしょうね?」
母上の目は死んでいた。
メリッサも立ち上がる事も出来なかった。
もしかしてこれまで偽物を交わされて来たのか!
「とりあえずすべてを押収しても足りない。後は馬車…も辻馬車以下だな」
「価値がない以上は邸を売却させて土地を更地にするしかないな」
土地を更地にするだと?
いくら執行人であってもそこまでの事を許されると思っているのか。
「ふざけるな!そんな真似許され…ぎゃあ!」
「許されるんだよ。お前達はな…」
この国の法律ではそこまでの事が許されるはずはない。
「抵抗するなら痛めつけて問題ない」
「ああ…」
動けない。
暴れてもびくともしない僕は邸から出される。
「痛い…止めて!」
「この無礼者!私達にこんな真似をして許されると…」
外に出ると人の目があり、執行人に抑え込まれている姿をさらされてしまった。
「見て、あの人達」
「執行人に…」
「余程の事をしたのね」
なんて拷問なんだ。
この時間帯では人目につくのにこんな扱いを受けるなんて!
ふと馬車が通り、ある男を目にした。
ジョイルだった。
助けろ…
何をしているんだ。
しかしジョイルは気づく事もなく、僕達は全てを奪われてしまった。
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