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97寄付
しおりを挟む治療を続ける中、資金が厳しくなかった。
なのだが…
「これを受け取ってくれ」
「少しだが仲間からかき集めた駄賃だ!」
「これを足しにしてくれ」
寄付金が集められた。
例の薬の副作用で病状を悪化した患者の中に商人や、騎士も少なくなかった事で最初は少なくとも多額の寄付が集まった。
そのおかげで治療費が支払えない子供でも治療を受けられるようになった。
「寄付が集まって良かった」
「ああ、一時的な援助では無理がある。自己犠牲の援助等特にな」
過去に聖女と呼ばれた女性がいる。
高位貴族でありながら貧しい民を救いたいと出家した女性。
彼女は身を尽くして奉公をしたけど、無理をして若くして亡くなったと聞く。
個人に頼る援助は長続きしない。
「国がその治療費を負担できればいいのですか」
「税金の使い道か…」
「はい」
税を納めてる国民は国からの援助はまったくない。
それこそ違和感を持つ。
だって国は国民がいなくなったどうなるか。
「国民は麦を作るのに、貴族はどうなのでしょう」
「痛いな…我ら貴族は何一つ生み出さない」
「その代わりに国民を守る立場にありますが」
今の現状でどれだけの貴族が役目を全うしているのだろうか。
力があるなら守る側にいるべきなのに、その逆だ。
自分達よりも弱い者から何をしたか。
社交界でも自分より身分の低い人間を傷つけ中傷をして。
相手の力量を図る為にあえて試そうとするならまだしも悪意を持っている貴族が多すぎる。
己の地位を欲望の為に使う。
「ノブレス・オブリージュは何処に」
「だからこそ今からでも変えなくてならない」
「団長さん…」
一番つらいのは団長さんなのかもしれない。
貴族であり、騎士であり、高位貴族出身の彼にとっては辛くないはずはない。
「そんな顔をしないで欲しい」
「えっ…」
団長さんは私の手を取り強く抱きしめる。
「君にそんな顔をして欲しくない。私は私のすべき道を見つけた」
「それは…」
「最善の道だ。その為には少しばかり強引に行かなくてはならないのだが」
「団長さん優し過ぎますから」
心臓の音が聞かれないか不安だった。
今までこの手に頭を撫でて貰っていたけど抱きしめられのは子供の時だけだったし。
「優し過ぎるか?」
「はい」
そろそろ離れないと。
「じゃあ強引になっていいか?」
「はい?」
そういいながらキスをされた。
「きゃあああ!」
「真っ赤だな」
私はこの時、口は災いの元というのを後に知るのだった。
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