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92愚か者の悪あがき~エセルバートside①
しおりを挟む傾いた家を何とかする為に藁をも掴む思いでアリアの薬草で新薬を考えた。
他人と同じことをしていたのではだめだ。
現在メラミン病が再び伝染し始めている村がある。
だから新薬を作り、通常の家格の半額で売買をする事で一時は商売が軌道に乗ると思った。
なのに…
「息子が死にそうです」
「私の妻は失明してしまいました」
「私の夫は副作用で…」
最初こそは上手く行っていると思った。
レシピがあれば僕でもできるはずだ。
アリアにもできたんだ。
僕に出来ないはずはないと思ったし、調合なんて簡単だと思った。
だが、調合して見たがレシピ通りにいかない。
色が少しおかしいが大丈夫だろうと思い村に売り出し、成果はあった。
だからその隣の村や、その後は町にも売り出した。
しかし二週間後、僕の作った薬を服用した患者が死んだ。
「絶対に安全だって言ったのに!」
「薬にある程度の副作用がでるのは当然だ!」
「死ぬような事はないって言っただろ!」
「大体飲み続けないと治らないと…」
僕は悪くない。
薬に体が合わないだけだ。
死んだのだって僕の所為じゃない。
「ただ息子の体が弱すぎたんじゃないか」
「は?」
「僕は薬を安く売ってやったんだ…副作用で死んだとしても僕は悪くない!どうせ死ぬはずだったんだ!感謝されこそ恨まれるなんておかしい」
そうだ…
僕は悪くない。
病気になって絶望している中救いの手を差し伸べてやったんだ。
飲んだ後の事まで責任を持てるか。
「信じられない…」
「何て非道な」
「最初から粗悪品で金稼ぎをするつもりだったの!」
勝手に勘違いして被害妄想の末に僕に責任を擦り付けて慰謝料を欲している魂胆が丸見えだ。
だが悪いのは僕じゃない。
第一薬の副作用でなくなる間者なんて医療の世界では多く存在する。
手術中に事故が起きる事だって。
「カスティージョ伯爵、貴方はちゃんとした署名に薬の危険性を説明していたなかったと聞いています」
「ある程度の危険は承知だろう」
「同意書は?」
「そんなもの不要だ」
手術をするわけじゃないのに誓約書も必要ない。
「間に仲介者を挟んでいないのに?」
「そんなもの要らないだろ」
「話になりませんね。貴方がしたことは犯罪です。新薬を作り商品化するには決まりごとがある。それを破るのは罪です」
さっきから何を言っているんだこの老婆は。
訴える連中と違って一定の距離をで僕を見る老婆。
「新薬は専門家とそれを売る商人ともう一人医師の証明書が必要です。治験の場合は同意書と危険を説明しなくてはならないのにそれを怠った時点で犯罪です」
年寄りの老害か。
この時僕は無理矢理そいつらを追い出した。
その結果。
「何故新聞に!」
僕が詐欺を働き患者を死なせたことが報じられていた。
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