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55失った物の大きさ~エセルバートside①
しおりを挟むアリアが家を出て行った。
母上が離縁を突きつけそのままあっさりと。
「何で…」
昔ならば母上に頭を下げて、もう一度チャンスを欲しいと言うはずだった。
でもアリアは最後まで笑顔だった。
そう、清々しいまでの笑顔で僕の幸せを祈ると言って出て行った。
「何て薄情な女の?土下座をして詫びを入れれば許してやったのに」
「番狂わせだったわね」
二人はアリアの再教育をする為に半分冗談で離縁をつきつけたが本気ではなかった。
正妻はアリアに据え置き、第二夫人として侍女のユアを迎える予定だった。
結婚して三年。
最初の一年は子供ができる兆しがなかった。
メリッサが家を出る前から第二夫人を迎える話は出ていた。
一年前から紹介をされていたのだが、あくまで子を産ませる目的だった。
だから離縁を突きつけ母上に縋ると思ったのに。
「どうせすぐに泣きついてくるのではなくて?我がカスティージョ家と縁を切ってしまえばどうなるか…すぐに謝るか実家から詫びが来るんじゃない」
「そうよ…本当に何も解ってないわね」
「それよりも、新しい別荘を建てる話だけど。いい物件があるそうなのよ」
二人の話が頭に入って来ない。
あの時清々しい表情で笑ったアリアが頭から離れなかった。
「大旦那様」
「何だ」
「こちらを」
アリアを去った後ずっと沈黙を守っていたジョイルやジョナにエレナ達。
「これは」
「退職願いです。使用人以下10名は今日を持って退職させていただきます」
「何だと!」
退職って…
皆僕が生まれる前から仕えていた庭師に料理長に御者までもいるんじゃないか!
「何なの?」
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「馬鹿な事を。何を…」
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「離縁状に関しましたは私の方から出しておきましょう?どうせ解らないでしょうし」
「勝手にすればいいわ!お前達とは縁を切るわ」
「それはようございました」
何だ?
ジョイルに不安を感じる。
これまで温和である程度の無茶を言っても動じなかったのに僕達を見る目に憎しみが感じられた。
何故そんな目で僕達を見るんだ!
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