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52出戻りと入れ替え
しおりを挟むエレナの協力を得て私は離れで次々とレシピを考えた。
料理や薬草の生産はストレス発散にも良かったのか、薬草だけでなく茶葉の制作も熱が入った。
「エレナ、見て見て」
「まぁ、何て素敵な」
「コサージュをつけて見たの」
最近は日差しが強いので麦わら帽子を作ってみた。
以前もプリメーラ商会で帽子を作っていたのだけど夏用に考えたのはお洒落で日差しを予防できる帽子。
特に私達のような百姓にとっては日差しは大敵だわ。
日よけの防止に手袋と、日焼け止めクリームは必需品だった。
「プリメーラ商会の会長からも素晴らしいレシピだとお褒めのお言葉をいただきました。それで先日おっしゃっていた物件ですが…」
「待って、足音が聞こえるわ」
この乱暴な歩き方は…
バァン!
「本当にこんな所に寝泊まりしていたの」
「メリッサ、こんな所にいたら埃を被るわ」
駆け落ちしたはずのメリッサ様がいた。
でも依然とは見る影もない。
体系はあの時よりも悪くなり、髪も痛んでいる。
それにこの匂いは何?
「メリッサ様、何故」
「お茶が飲みたいからすぐに用意して。それからこの子のミルクも」
「えっ…」
「おんぎゃ!おんぎゃあ!」
腕に抱き上げている赤ちゃん。
もしやメリッサ様が生んだ子供かと思ったけど。
「聞こえないの?早くしないさい」
「はっ…はい」
私は無理矢理母屋に連れて行かれその日から私はメリッサ様の子供、名をアリッサというらしいがその子の面倒をみるはめになった。
「今からでかけてくるから、その間にアリッサの世話を解っているわね」
「はい」
「ジョイル、他の使用人も連れて行くわ」
「しかし奥様お一人では…」
「命令よ」
有無を言わせないお義母様の言葉に従うしかなかった。
それだけでなく。
「ぎゃあああん!」
「ちょっと!うるさいわよ!」
「泣くまで邸内に入る事は許さないわ!」
夜泣きが酷く頻繁に熱をだすアリッサに私は困り果てていた。
「ちょっと風邪を移さないでしょ?」
「お前の所為で熱がでたんでしょう?」
「アリア、いい加減にしてくれ。これじゃあ将来困るぞ」
「でも、中々泣き止まなくて」
「それじゃあ母親に慣れないぞ。子供一人満足に泣き止ませられないなんて」
真夜中に泣き出すアリッサにあの人は私を責めた。
離れにいても声は響き庭に出て抱っこをしながら話しかける。
「本当はお母様に抱いて欲しいのかしらね?」
「あぅ…」
「ごめんなさいね、私で…」
「だぁ…」
私の頬に触りながら笑顔を見せてくれた。
小さな手に私は愛情を抱き、心が和みだした。
夜泣きの回数が減ったけど、何故か…
「いやぁぁぁ!」
「アリッサ、どうしたの」
「やぁぁぁぁ!」
アリッサは私以外が抱けば大暴れした。
「どうしたの?お母様よ」
「お祖母様よ」
「おい、泣き止ませろ。お客様の前だぞ」
邸にてアリッサを見せようとお客様を招いた時だ。
アリッサは大泣きをした。
「アリア!早くなんとかしろ」
「はい!アリッサ…」
「きゃっきゃっ!」
仕事中に呼ばれ急いでアリッサを抱き上げるとすぐに泣き止む。
「まるで母親のようね?」
「ええ、ピタリと泣き止みましたわね?」
「メリッサ様を嫌がっているようだわ」
こんな会話がされている事を私は知らずにいた。
そんな折、お義母様にとんでもない事を告げられてしまった。
「今日からこの離れを改築するわ。メリッサがこの邸に住むから出て行ってくれる?」
「えっ…」
メリッサ様が出戻って三週間。
アリッサの夜泣きも無くなり熱を出す事も少なった頃。
この離れを新しくリフォームする事を告げられた。
私が使っている部屋はメリッサ様の物となると告げられた挙句。
「出て行ってくれる」
邸を追い出されることになった。
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