義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!

ユウ

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47優しい声

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意識を手放す前に聞こえた声。
幼い頃から私に優しくしてくれた憧れの人だった。

兄のような存在だった。



「うっ…」


「アリア!」


痛む頭を押さえながら目を覚ますと団長さんがいて…


そっかこれは夢なんだ。


「団長さん…私は夢を見ているのかしら」


「え?」


「ここにいるはずのない団長さんがいるはずないもの…本当にダメですね」


寂しくて苦しくて。
だから夢の中で団長さんに助けを求めてしまっているんだ。


「やっぱり私はダメなんだ」

「アリア、何を言っているんだ。君がダメだった事なんて」


夢の中でも優しい団長さん。


「私はずっと頑張って来たつもりでした。でも頑張りが足りないんですよね。だから旦那様は怒って、あんな真似を」


優しかったエセルバート様が暴力を振るう程に変わったのは私の所為だ。


「アリア、それは違う」

「え?」

「彼は本当に優しいのか?」


傷ついたような表情をする団長さん。
どうしてそんな悲しい顔をするのだろうか?


「優しいとは強い人の事を言うんじゃないか?自分の勝手な思いだけをぶつけるのが優しいのか?」


団長さんの言葉により私はエセルバート様の行動に疑念を抱く。

「私はカスティージョの妻として…」

「君を一人残して逃げた男だ」

「でもそれはお家の為に…」


そうだ。
エセルバート様は家を建て直す為に。


「手紙も一通も残さずか?状況が収まってから帰って来るなんておかしいだろう」


何で連絡してくれなかったのか。
亭主留守で元気が良いと言うけど、でもあの人はずっと何をしていたのか解らない。


「君は彼を本当に信じているのか…信じなくてはと思っていないか」

「…私は」

団長さんの目を真っすぐに見れない。
少し前は疑う余地もなかったのに今のあの人を迷いなく信じられない。



「君が今思っている事を吐き出して。君はどうしたい」

私の手を握ってくれた手が温かかった。


「君は自分の心を蔑ろにし過ぎた。君を愛する者が悲しむぞ」

私は自分の心を殺し続けたのかな。
ただ認めて欲しかった。


「私は後見人になってくださった侯爵夫人に申し訳なくて」

「そんな事あの方は気にしない」


お祖母様も嫁は辛いものだって言っていた。
結婚とは我慢の連続で辛い事の方が多いと言っていたけど。


でも…



『時には鬼になってしまう事もあるけど最後に笑えれば上々な人生と言えるのですよ』


私は笑えるのだろうか。
エセルバート様を心から支えたいと思ったあの時と異なっている。


私は…


あの人を信じられなくなっている。


「君が決めるんだ」


この言葉で私は、ある決断をするのだった。


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