義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!

ユウ

文字の大きさ
上 下
47 / 196

46豹変

しおりを挟む




私は咄嗟で反応が出来なかった。


「エレナ!」


「使用人の分際で!」


この人は誰?
勢いで殴ってしまったのなら謝るはずだ。


なのに、エセルバート様の表情には罪悪感は一切ない。

「どうしてこんな酷い事を…酷すぎる」

「は?」

「どんな事があっても暴力を振るって良い理由はありません」


「アリア!」

「奥様お止めください」


エレナが止めようとするも私は止まらなかった。

「私が気に入らないなら私を殴ってください。ですがエレナを傷つけないでください」

「そんなんだから君はダメなんだ」

「はい、私はダメな妻です。解っています」

「何を…」

私はずっと落第妻の烙印を押されて来た。
容量が悪く頭も悪く器量も悪いと言われて来たから自覚をしている。


「私は何もできない。ダメな人間です。そんな私を選んだのは貴方です」

「僕の所為だと言いたいのか」

「どうして誰かに八つ当たりをすることしかないのですか。誰かを責めるような事ばかりするのですか?」


これではまるで――。


『僕は人を傷つける人は嫌いだ』


かつてお義母様とメリッサ様を嫌いだと言っていたエセルバート様は同じことをしているのと同じだわ。


「貴方の大嫌いの人を傷つける行為です」

「なっ!」

「奥様!」

「私は今の貴方が好きではありません。前の貴方は使用人にも誠実だった。弱い者苛めをするような人ではありませんでした」

「…るさい」

「お願いです!元の優しいエセルバート様に…」

「うるさい!」


私の言葉を遮るようにしてヒステリックに叫ぶエセルバート様は私を殴り突き飛ばした。


「奥様ぁ!」

「きゃああ!」


私はそのまま壁に頭をぶつけ倒れてしまった。


「奥様!奥様…」

「うっ…」


頭を強く打ちクラクラする。


「奥様!」

外出していたジョイルとマヤの声が聞こえる。

「奥様に何をしたんですか!」

「マヤ、直ぐに医師を…」

「待て、医師は呼ぶな。騒いだら外聞が悪い…これぐらい大丈夫だろ」


私を心配するよりも先に気にするのは…


「それに金がかかる」

「何を言っておられるんですか」

「アリアは丈夫だから傷の手当てをしていれば大丈夫だ。君も解るな?これ以上僕に迷惑をかけないな?少し切っただけだ…立てるだろ?」


優しかったあの人はもういない。
私に一切の情はないのだと心が冷たくなる。


「すぐに医者を呼びます」

「待て!」

「もし頭の打ちどころが悪かったらどうするんですか!頭を打っているんです」


マヤが連絡をしようとするも…

「死ぬわけじゃないだろ」

「本気で言っているんですか…なんて事を」


泣いてはダメ。

解っていても私は涙が流れた。



もう私の知るあの人はいない。


助けて…


心が千切れそう。


誰か助けて――。



その時だった。


「アリア!」


王都を離れているはずの団長さんの声が聞こえた。


しおりを挟む
感想 478

あなたにおすすめの小説

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完結保証】ご自慢の聖女がいるのだから、私は失礼しますわ

ネコ
恋愛
伯爵令嬢ユリアは、幼い頃から第二王子アレクサンドルの婚約者。だが、留学から戻ってきたアレクサンドルは「聖女が僕の真実の花嫁だ」と堂々宣言。周囲は“奇跡の力を持つ聖女”と王子の恋を応援し、ユリアを貶める噂まで広まった。婚約者の座を奪われるより先に、ユリアは自分から破棄を申し出る。「お好きにどうぞ。もう私には関係ありません」そう言った途端、王宮では聖女の力が何かとおかしな騒ぎを起こし始めるのだった。

【完結】義姉の言いなりとなる貴方など要りません

かずきりり
恋愛
今日も約束を反故される。 ……約束の時間を過ぎてから。 侍女の怒りに私の怒りが収まる日々を過ごしている。 貴族の結婚なんて、所詮は政略で。 家同士を繋げる、ただの契約結婚に過ぎない。 なのに…… 何もかも義姉優先。 挙句、式や私の部屋も義姉の言いなりで、義姉の望むまま。 挙句の果て、侯爵家なのだから。 そっちは子爵家なのだからと見下される始末。 そんな相手に信用や信頼が生まれるわけもなく、ただ先行きに不安しかないのだけれど……。 更に、バージンロードを義姉に歩かせろだ!? 流石にそこはお断りしますけど!? もう、付き合いきれない。 けれど、婚約白紙を今更出来ない…… なら、新たに契約を結びましょうか。 義理や人情がないのであれば、こちらは情けをかけません。 ----------------------- ※こちらの作品はカクヨムでも掲載しております。

その発言、後悔しないで下さいね?

風見ゆうみ
恋愛
「君を愛する事は出来ない」「いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ?」結婚式後、私、エレノアと旦那様であるシークス・クロフォード公爵が交わした会話は要約すると、そんな感じで、第1印象はお互いに良くありませんでした。 一緒に住んでいる義父母は優しいのですが、義妹はものすごく意地悪です。でも、そんな事を気にして、泣き寝入りする性格でもありません。 結婚式の次の日、旦那様にお話したい事があった私は、旦那様の執務室に行き、必要な話を終えた後に帰ろうとしますが、何もないところで躓いてしまいます。 一瞬、私の腕に何かが触れた気がしたのですが、そのまま私は転んでしまいました。 「大丈夫か?」と聞かれ、振り返ると、そこには長い白と黒の毛を持った大きな犬が! でも、話しかけてきた声は旦那様らしきものでしたのに、旦那様の姿がどこにも見当たりません! 「犬が喋りました! あの、よろしければ教えていただきたいのですが、旦那様を知りませんか?」「ここにいる!」「ですから旦那様はどこに?」「俺だ!」「あなたは、わんちゃんです! 旦那様ではありません!」 ※カクヨムさんで加筆修正版を投稿しています。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法や呪いも存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。 ※クズがいますので、ご注意下さい。 ※ざまぁは過度なものではありません。

婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね

ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。 失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。

本日より他人として生きさせていただきます

ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。

婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの
恋愛
 婚約者の第五王子フランツ殿下には好きな令嬢が出来たみたい。その令嬢とは男爵家の養女で親戚筋にあたり現在私のうちに住んでいる。  婚約者の私が邪魔になり、身分剥奪そして追放される事になる。陛下や両親が留守の間に王都から追放され、辺境の町へと行く事になった。  100キロ以内近寄るな。100キロといえばクレマン? そこに第三王子フェリクス殿下が来て“グレマン”へ行くようにと言う。クレマンと“グレマン”だと方向は真逆です。  追放と言われましたので、屋敷に帰り準備をします。フランツ殿下が王族として下した命令は自分勝手なものですから、陛下達が帰って来たらどうなるでしょう?

処理中です...