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46豹変
しおりを挟む私は咄嗟で反応が出来なかった。
「エレナ!」
「使用人の分際で!」
この人は誰?
勢いで殴ってしまったのなら謝るはずだ。
なのに、エセルバート様の表情には罪悪感は一切ない。
「どうしてこんな酷い事を…酷すぎる」
「は?」
「どんな事があっても暴力を振るって良い理由はありません」
「アリア!」
「奥様お止めください」
エレナが止めようとするも私は止まらなかった。
「私が気に入らないなら私を殴ってください。ですがエレナを傷つけないでください」
「そんなんだから君はダメなんだ」
「はい、私はダメな妻です。解っています」
「何を…」
私はずっと落第妻の烙印を押されて来た。
容量が悪く頭も悪く器量も悪いと言われて来たから自覚をしている。
「私は何もできない。ダメな人間です。そんな私を選んだのは貴方です」
「僕の所為だと言いたいのか」
「どうして誰かに八つ当たりをすることしかないのですか。誰かを責めるような事ばかりするのですか?」
これではまるで――。
『僕は人を傷つける人は嫌いだ』
かつてお義母様とメリッサ様を嫌いだと言っていたエセルバート様は同じことをしているのと同じだわ。
「貴方の大嫌いの人を傷つける行為です」
「なっ!」
「奥様!」
「私は今の貴方が好きではありません。前の貴方は使用人にも誠実だった。弱い者苛めをするような人ではありませんでした」
「…るさい」
「お願いです!元の優しいエセルバート様に…」
「うるさい!」
私の言葉を遮るようにしてヒステリックに叫ぶエセルバート様は私を殴り突き飛ばした。
「奥様ぁ!」
「きゃああ!」
私はそのまま壁に頭をぶつけ倒れてしまった。
「奥様!奥様…」
「うっ…」
頭を強く打ちクラクラする。
「奥様!」
外出していたジョイルとマヤの声が聞こえる。
「奥様に何をしたんですか!」
「マヤ、直ぐに医師を…」
「待て、医師は呼ぶな。騒いだら外聞が悪い…これぐらい大丈夫だろ」
私を心配するよりも先に気にするのは…
「それに金がかかる」
「何を言っておられるんですか」
「アリアは丈夫だから傷の手当てをしていれば大丈夫だ。君も解るな?これ以上僕に迷惑をかけないな?少し切っただけだ…立てるだろ?」
優しかったあの人はもういない。
私に一切の情はないのだと心が冷たくなる。
「すぐに医者を呼びます」
「待て!」
「もし頭の打ちどころが悪かったらどうするんですか!頭を打っているんです」
マヤが連絡をしようとするも…
「死ぬわけじゃないだろ」
「本気で言っているんですか…なんて事を」
泣いてはダメ。
解っていても私は涙が流れた。
もう私の知るあの人はいない。
助けて…
心が千切れそう。
誰か助けて――。
その時だった。
「アリア!」
王都を離れているはずの団長さんの声が聞こえた。
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