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33交渉の天才~エレナside
しおりを挟む今日の商談はどうしても成功させなくてはならなかった。
しかし相手は農民から商人に、そして貴族にと下剋上を果した人物であるが手厳しい人物だった。
「現在ダブルブッキングしている状況です。会場を貸し出すのは無理です」
「ですが先に依頼をしたのは…」
「承知いたしました」
商談に来たのは、チャリティーの融資に集ってくださった方々と懇親会を行う事になっている。
その為の会場が必要だったので目をつけたのは国内でも数多の不動産を持つクラスタ-商会の持つ他国の貴賓が止まるホテルがある。
そのホテルの広間借りる予定だったが、他の客が倍の金額を出すと申したのだ。
絶対に邪魔する気でわざとしたのだと思ったけど、一度契約を交わしたクラスター男爵も問題なのだけど。
「そちらにもご都合がありますし。私も無理を言いましたわ」
「奥様…」
「残念です。歴史あるホテルでチャリティーに参加してくださる皆様に喜んで欲しかったのですが…素晴らしいホテルですもの」
「ですが…」
「ギリギリの予算で無理をしてくださったのに、勝手を申しました。できればここでパーティーをしたかったのですが」
奥様の残念そうな顔を見て私も歯がゆい気持ちになる。
この会場を抑える為に奥様がどれだけ苦労していたか知っている。
そんな時だった。
「待ってください」
「お前…」
「貴方、このお話を受けてください」
クラスター男爵夫人だった。
「ここまで言ってくださっているのに…お引き受けしないなんて失礼ですわ」
「しかしだな…」
「時には商売の為だけではなりません。人の為に尽くすのも商人の仕事ですわ」
渋る表情のクラスター男爵は奥様に頭を下げられた。
「申し訳ありませんでした。是非我が商会のホテルをお使いください」
「よろしいのですか…」
「はい、実は迷っておりました。先方は三倍の金を出して契約してくださると言ってくださいましたが正直かけ事の場に貸すのは悩んでいました」
最近は不景気で物価の値上がりも酷く。
新貴族である男爵や子爵は高位貴族の対応に困っていたそうだ。
お金さえ出せば言う事を聞くと勘違いして伝統ある施設ですらお金で意のままにと考えているようだ。
「我が商会も大きくなりましたが最近は…」
「そうでしたか」
外からはあぶく銭を手にしていると思われがちだが、そんな訳もない。
「チャリティーの為にお貸しする方が良いに決まってますわ」
「私が間違っていたな」
クラスター男爵夫人の口添えもあって会場を借りる事が出来たのだが…
「私の所有するホテルをここまで解ってくださる方は奥様しかおりませんでした」
「今後ともよろしくお願い申し上げます」
こうして商談は成功した。
しかしこの商談がきっかけでチャリティーに関して良い顔をしなかった国一番のケチと言われる大商人がチャリティーに寄付をすると言うようになり奥様は交渉人として評価を受けるようになったのだった。
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