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11おめでたい日
しおりを挟む先生とお別れになってから元の生活が戻って来た。
淑女教育はしなくて良いと言われた。
「教えて貰って覚えるのではありません」
「普通は最低限は見についているのよ。後は自分で応用できないとね?」
二人が言っている事は間違いではない。
それに私が礼儀作法ができていないとなればカスティージョ家が馬鹿にされるかもしれない。
故に私は先生に頂いた淑女全書。
聖女の三倍の分厚い教本を眠る時以外は読み返し一人で練習をした。
朝起きた時や、仕事を終えた後。
淑女は一日にしてならず。
そして淑女は汚い言葉を吐かない。
常に微笑み余計な事をしゃべらず嫌な事を言われても言い返さず余裕の微笑みを。
この言葉を実行するのは難しかったけど、笑顔は得意だった。
だけど。
「アリア、貴女は何時もへらへらして良いわね。呑気で」
「アリア様は笑っているだけで本当に気楽で羨ましいですわ」
笑顔でいれば誰とでも仲良くなれると思っていたけど時と場合を選ばない私はしくじってしまった。
「何をへらへらしているの!」
「あの…」
「馬鹿にしているんですの?」
常に笑っている事で相手に不快な思いをさせてしまう事に気づかなかった。
「アリア…気にする事はない。二人共苛立っているだけだ」
エルセバート様は気にしなくて良いと言っていたけど、どうしたら二人と仲良くなれるのかと悩むようになった。
そんな折、お義母の姉君のご息女。
つまりエセルバート様とメリッサ様の従妹に当たる方が出産された。
そのお披露目に私達夫婦も呼ばれた時だった。
「まぁ、なんて愛らしいのかしら。本当におめでとうございます」
「ありがとうございますアリア様」
初めての出産で男の子だった事でご両親も大喜びだった。
「お世継ぎだなんて本当におめでたいですね」
「ありがとうアリア」
「君達も早く授かると良いな」
その時私達は結婚して丁度一年目だった。
「本当に解ってませんわね?」
「何処までおめでたいのかしら?」
ふと、他の親族から言われた言葉が嫌味だったとは気づかなかった。
私はただ心から祝福を言葉とプレゼントにしただけなのに。
「アリア…」
「エルセバート様、お花は何時お渡ししましょう。折角のお祝いですのでできるだけ豪華にしましたのよ」
義従妹のおめでたい日だ。
私も幸せのおすそ分けをしてもらったのに。
「本当に解らないのか…親族の視線や言葉に」
「子供は授かる物ですから。欲しいと思ってできるものではありませんわ」
「そうだが…」
この時エルセバート様は目が笑っていなかったのに気づかなかった。
おめでたい日。
だけどカスティージョ家にとってはおめでたくない事だったの。
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