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1耐え忍ぶ日々
しおりを挟む公の場に出る事も無く私は奥の仕事を任され、伯爵家の仕事は義母と義妹に任せきり。
私は目立つな言われる中、他人は私を使用人と思うようになった。
「酷すぎます。いくら何でも若奥様を」
「ジョナ、私は大丈夫よ」
義母曰く、これも嫁の勤めだと聞かされた。
辛くはあっても優しい侍女や老執事が労わってくれて私は頑張ろうと思った。
「私が早く仕事を覚えればよいのですから」
私は気持ちを切り替えて頑張ろうと思った。
メリッサ様を溺愛するのは仕方ない事だし、彼女に勝とうなんて思った事は一度もない。
私は嫁の立場で、彼女は実子。
だけど、私は使用人としてこの家に嫁いんだんじゃない。
なのに。
「今度お客様がいらっしゃるから出てこないでくださる?それから客間の掃除をお願いします」
「メリッサ様、アリア様は…」
「だってお掃除が好きだって言っていたでしょ?それに嫁になる為の修業よ」
「解りました」
私を庇ってくれたジョナだったけど、私は歯向かわなかった。
「何をしているの」
「お母様、今度私の友人が遊びに来るのだけど。客間の掃除をお願いしたの」
「アリア、まさか嫌だなんて言ったんじゃないでしょうね?嫁である以上は我が家の役に立ってもらうのは当然よ。何より嫁として奥の事を把握する為」
「だけど嫌みたいで…私はアリアに少しでも我が家の事を」
「なっ…メリッサ様」
ジョナが絶句した。
涙を浮かべて私の為と言い出す始末だった。
「なんて優しいのかしらメリッサ。それに引き換えになんて酷いのかしら」
私は悪者にされてしまった。
嫌だなんて言っていないのに、どうして?
そう思ったけど。
口答えは許されなかった私は耐えることにした。
「申し訳ありません」
「本当にどんな教育を受けたのかしら。人の善意も素直に受け取られないなんて」
「仕方ないわお母様。私は我慢するわ…」
胸が痛んだ。
私はそんなにダメなのだろうか。
人の気持ちも理解できないのだろうかと胸を押さえた。
苦しい。
悲しい。
そんな思いに苛まれる中私は辛い日々を送っていた。
だけど、私だけじゃない。
私のように遠い領地から嫁いできた女性は同じように耐え忍んでいた。
「アリア、どうして君がメイドのような真似を」
「お帰りなさいエセルバート様」
隣の領地に視察に出ていた夫が戻って来たが、私が部屋の掃除屋庭の手入れをしている姿を見て絶句していた。
「これも嫁の勤めですから」
「いくら何でもこんな肉体労働をする必要はない。手も荒れているじゃないか」
水仕事を毎日して手は荒れ放題だった。
百姓貴族と言えど、実家ではこんな重労働をする必要はなかった。
畑道具ももっと便利だった。
言い方は悪いけど、私が嫁いだハーベスト家は決して裕福ではない。
私の実家の方が裕福だったのだから。
ハンドクリームも用意してもらう事もなく部屋も本当に質素だった。
それでも私が嫁いですぐの頃はエセルバート様と二人三脚で頑張って立て直していた。
けれど今の生活を揺るがす事件が起きてしまった。
それが…
「どういうことだ!メリッサが駆け落ち?」
子爵家に嫁ぐ事が決まっていたメリッサ様はあろうことにも真実の愛に目覚めたと言って駆け落ちをすると言い放ったのだった。
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