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番外編一章第一王子

9.北の大地

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四季のある王都と違いほとんど永久凍土と言っても過言ではない。
生きていくのでも大変な土地に俺はその日、その日生きるのも大変だった。


食料の調達からも狩りをしなくてはならない。

「寒い、身が切れそうだ」

「殿下、こちらに」


小さな邸内で暖炉には常に薪を入れて火を焚かないと凍えてしまう。

「モーリス伯爵」

「こちらをお飲みください。体が温まりますよ」

紅茶にバターを入れたありとても体が温まる。

「美味しいな」

「随分と顔色が良くなりましたね」

「最近、調子は悪くない」

寒いがこの土地の空気はとても良かった。

王都とは空気が違い、空の星も綺麗に見えるのは自然が全く壊されていないからなのか。

「この地は多くの自然に恵まれ、王都にはない約束に水の純度も高いのです」

「そうだったのか」

「不便な土地も悪い物ではありませんぞ」

「ああ…花だ」

この寒い土地で一輪だけ花が咲いている。


「どんな寒い土地でも花も咲きます」

「そうだな」


この寒い土地に咲く一輪の花は俺の支えになった。


この花のようにティアも美しく咲いているのだろうか。

王都から遠く離れたこの領地で俺はもう一度君に会いに行く。


それまでどうか元気でいて欲しいと願いながら時間を過ごした。





****



「その間、色々あった」

「そうだったのですね」

「今にして思えば母上は北の領地が一番安全だったと思ったのだろうな」


北の領地は母上の息の掛かった領地。
貴族も領民も俺に最初から友好的だったのは母上がすべて段取りをしていたのかもしれない。


「後から俺を殺そうとしていた暗殺集団は海に流れていたそうだ」

「まぁ…」

「半分はルクシウスが死んだ方がマシだと言う拷問をしたそうだ」


あの男は敵には容赦しないからな。
死にたいと言う者にはこれでもという程の生き地獄を味合わせるだろうな。


「この地で海に投げ飛ばされれば即死だからな」

「王妃陛下はやっぱり愛情部会方だったのですね。ジークを深く愛しておられましたわ」

「ああ、あの時は疑いを持っていたが」


俺は二人の母上に深い愛情を注いでもらっていた。


こんな恵まれている事はない。


「その思いにしっかり答えなくてはなりませんね」

「ああ」


この広い空で俺は母上を離れた場所から守ろう。

かつて母上が深い愛情を守ってくれたように。


母上、ありがとうございます。


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