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第一章
1道中
しおりを挟む別れを惜しむように私は窓から王宮を見送ると花びらが舞った。
「これは…陛下」
風の魔法を使えるのは限られている。
優しい香り。
それに薔薇の花は陛下を象徴するもの。
「イリス殿…」
「何でもありません」
寂しさを感じ私は無意識に涙を流していた。
「申し訳ありません」
「いえ…」
居たたまれない空気だった。
同行してくれている騎士達は平民、もしくは下級貴族出身で私にも良くしてくださった人達だ。
「歯がゆいです」
「え?」
「イリス殿がこのような仕打ちを…アレウスは見送りにも来ないとは」
「聖女様が心配何て見え透いた…」
彼らは優し過ぎた。
王都内で聖女の批判何てしたらどんな目に合うか。
「いけませんよ。不敬となります」
例え思っていても簡単に軽はずみな言葉を口にしてはならない。
「誰が聞いているか解りません。私なんかの為に」
こんな言い方しかできない。
本当に可愛い気のない女な私を愛想がないから。
こんな時泣いて心配ですなんて言えばよかったのか。
でもそんなのは私じゃない。
涙を武器にするような可愛い女の子になれない。
「もうすぐ国境です」
「ええ…」
国境を越えればもう戻ることはできない。
ふと餞別代り渡された品を手に取る。
花嫁道具の代わりにと渡されたのだ。
古びた杖に、手鏡と剣。
「こんな高価な物は私に相応しくないというのに」
しかも王家の紋章が刻まれている。
同時にもう一つの紋章が刻まれていた。
アイリスの花に似ていた。
「えっ…」
一瞬嫌な気配を感じる。
馬車が急に止まる。
「何!どういしたんですか!」
馬車は急に止まり、窓を開けると。
「イリス殿!窓を!」
「急いで国境に!」
黒い影に包まれ、私達を囲んだのは魔物だった。
妙だわ。
何でいきなり前触れもなく魔物が襲うなんて。
「援護しろ!」
「くそっ!オークがこんなに!」
外から聞こえる声。
大量の血の匂いがして私は震えた。
無差別に狙っているように思えなかった。
――狙いは私?
「なんとしても馬車を守れ!」
「国境まであと少しだ…国境を越えれば」
騎士達の声に焦りがこもっているのが解る。
それほど予測の事態だった。
「うわぁぁ!」
「あと少しだ!」
前方にいる騎士がやられ、後方を守っていた騎士までも重傷を負う。
「団長!」
「何故いないんだ…」
「もう持ちこたえられません!」
約束の時間なのに帝国側の出迎えはなかった。
まさかあちらは私を殺すつもり?
邪魔だから道中で私を始末しようと考えた?
迫りくる魔物は馬車を襲い、声が聞こえた。
ふと違和感を感じる。
野生の魔物に関してはおかしい。
そして気づいた。
誰かに使役をされているのだと言うことが。
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