婚約破棄され聖女の身代わりに敵国に献上される予定でしたが、魔性の騎士に寵愛されてしまいました!

ユウ

文字の大きさ
5 / 8
序章

4帝国の条件

しおりを挟む



そもそも帝国は当初、王女殿下を所望されていたはずだ。


「娘を献上というのは先方の意志ではないわ」

「はい?」

「敵国だった国の同盟国になるあるには問題点があるわ」


確かに相手は大帝国。
歴史は四千年以上もあり、たんたとは歴史の長さが違う。


「この同盟は国を存続する上で重要なのだけど、先方は特別の待遇で表向き従国だけど、これまでおおりでいいとも言ってくださっているの」

「え?」

それはありえない事だ。
通常従国となれば、付属品扱いだ。

なのにこれまででい良いと。

「我が国には魔法使いが多いわ。特に結界に関してはどの国よりも上だわ」

「はっ…はい」

「攻撃魔法を重宝される昨今、だけどどんなに攻撃魔法が強かろうと身を守ることができなければ本末転倒よ」

「陛下…」

こんな風に言ってくださるなんて泣けてきた。
魔導士の癖に戦えない私は役立たずだ。

対する聖女は結界を敷くことも、強い攻撃魔法も使える。
片方しかできない私とは正反対だった。


周りから聖女がいるなら不要だと言われた。


「今の魔導士は馬鹿が多いわ。貴方は錬金術を応用して新たな結界術を生み出したというのに」


魔法がすべてと考えている一族の中ではこう呼ばれておる。

魔法は才能。
錬金術は技術。

相反する存在である。
そして魔法は何もないところから生み出すけど、錬金術はある物を利用して行う。

魔法のように炎を出したりすることはできない。
資源を使うのだから。


だけど魔法にも欠点がある。


「魔力とて無限ではないことに未だ気づかない」

「限りがありますから」

「補う為のポーションも飲み過ぎると人体に悪影響が起きるというのが貴女の研究の結果だったはずよ」

「はい…」

そもそも薬とはそういうものだ。
人間が本体持つ自己治癒能力を高めるものでポーションはそもそもそういう類のものだ。

今では回復薬となっているが病気の人間を救うことはできない。
外傷を治癒はできるけど病を治癒するには限界がある。


「帝国では薬学の知識が乏しい…何より欲しているのは結界魔法」

「え?」

「帝国側は結界魔法が使える少女を献上して欲しいと」

それって聖女ではなく、結界魔法が使える女性が欲しいということ?

「表向きは王女殿下を献上して欲しいと言えば我が国は代理を用意すると思っていたのでしょう。皇帝陛下の配慮よ」

「そうだったんですか…」

戦後、傷だらけの国は多く。
金銭的もきつい状況なのを配慮してくださるなんて。


悪い方ではない。
すべてを見越しておられるのかもしれない。

だって普通は王女殿下を献上しろと命じながら、こうなることを予測したとなれば踊らされた貴族はまんまと騙されたことになる。


「とはいえ…後宮はそうもいかないわ」

「陛下、私は…」

「私は貴方をゆくゆくは女官にして、婚約解消をした後に私の傍に置き、娘の補佐を任せようと思っていたのよ。信頼のある側近に下賜して…」

そこまで考えてくださったなんて知らなかった。
思えば私が王宮内で生きてこれたのはこの方のおかげだわ。

「元は敵国、他の妃達や貴族達が手を出さないとは限らない」

「覚悟の上です」


今まで生きてこられたのはお優しい女王陛下の慈悲によるもの。

少しでも恩をお返しできるなら私は…

「陛下、イリスは陛下をずっとお慕いしております」

私にとって貴女は女神様だった。

誰よりも美しく慈悲の慈母女神様だった。

だから貴女のお役に立てるなら私は帝国に行く。

聖女の為じゃない。

私は私の愛する女神様の為に。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

愛人をつくればと夫に言われたので。

まめまめ
恋愛
 "氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。  初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。  仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。  傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。 「君も愛人をつくればいい。」  …ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!  あなたのことなんてちっとも愛しておりません!  横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。 ※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします… ⬜︎小説家になろう様にも掲載しております

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

「 お前に払う給料などない、クビだ!」聖女見習いの私は王子に追い出されました。

十条沙良
恋愛
王子って本当に顔がいいだけの役立たず

『選ばれし乙女』ではありませんが、私で良いのでしょうか?私、地味で目立たない風属性ですよ?

ミミリン
恋愛
没落寸前の貴族令嬢セレナ。 領地と家族を守るために裕福な伯爵令息ピーターと婚約することを決意。自分が立派な婚約者になれば伯爵家からの援助を受けられる、そう思い努力を重ねるセレナ。 けれど何故か、努力すればするほど婚約者となったピーターには毛嫌いされてしまう。 そこに『選ばれし乙女』候補の美少女が現れて…。

処理中です...