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第二章
30アルソート家
しおりを挟む王都から少し離れた町にて。
商家にしては大きな邸にて一人の女性が眉を顰めていた。
邸内を走る侍女が一通の手紙を持っていた。
「奥方様、お手紙です」
「誰から?」
「オイシス家からです」
眉一つ動かさなかった女主人は手紙を受け取るも読むことはなかった。
「またか」
「今さら何だと言うのかしら」
ここはアルソート家はミリアの実家だった。
海岸沿いが近く多くの貿易を行い他国はこの海を通らなければならない為物流が集まりやすい町でもある。
「リリス、オイシス家だが」
「どうせまたミリアの事でしょう。謝罪するなら許すと上か目線で大事な娘を侮辱する気でしょう」
ミリアが隣国に渡ってからというものアルソート家はオイシス家とは一切の商売をしなくなり、関係も断ったのだ。
当初は嫌味に近い手紙を何通もライアンから受け取ったが、相手にしなかった。
むしろ詫びて欲しいのはこちら側だったがライアンはあくまで自分は悪くない、世継ぎを中々授からず姑に従順でなかった嫁はハズレだと言ったのだから。
「これまで援助して来たのは何の為だと思っているの」
「だが、隣国では幸せになっているのだろう」
「ええ、何通か手紙が届きましたわ」
オイシス家を追い出された後にしばらくアルソート家に留まっていたがカナリアから丁寧な手紙と隣国にて力を貸して欲しいと書かれていた。
当初は抵抗もあったがカナリアの性格を知っているミリアは隣国に行く決意をした後に、現在子宝に恵まれない大公妃の手助けをする事になり、必要な物資を集める為両親の二人も奔走した。
その結果妊娠することができ、ミリアは大公妃の傍仕え侍女を任されエスターは医療関係の商人として大活躍をしている。
国を跨いでの商売だが、アルソート家は国外でも商売をしているのでなんて事もない。
何よりミリアが他国で認められ、幸福に生活できるならそれだけで十分だった。
「これ以上ミリアの幸福を邪魔させるわけには行きません」
「ああ…」
「手紙だけならいいでしょうが…接触させるわけには行きません」
これ以上ライアンに苦しめられるミリアを見たくなかった二人は次に手紙が届くときはこちら側も強硬手段に出ようと思っていたのだった。
そんな中、今度は手紙ではなくライアンが約束もなくアルソート家を訪ねて来たのだった。
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