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第二章
10裂けた花嫁衣装
しおりを挟むその頃ランドルフとエミリーは結婚式行う為に準備に追われていた。
色々とトラブルはあっても結婚式だけは通常通り行う予定だったが、キャスティ商会とは縁を切られて式場は貴族ではありえない小さな教会で行う事となった。
披露宴会場も選びなおしで野外で行う事になった。
料理も必要最低限で平民の結婚式よりも質素な物になったのだった。
この時期は結婚式会場も探すのは困難だったが、悪い噂が流れてしまった事で問題が生じた。
何所も門前払いでレストランも断られブライダルサロンも遠回しに断ら得てしまったので自分達で準備して最低限の料理と人を雇う事になった。
その為プランナーも一番格安の人間を雇ったが、幸福な結婚式が行われるならば良いと思っていたが。
当日に着るはずのドレスに問題が生じた。
「ランドルフ、このドレス」
「これは…」
ドレスの裾には特別な刺繍がされていた。
ウィスター家を象徴する家紋が刺繍されていたのだった。
注文を受けた時は花の模様と思ったが特別製の生地と糸で太陽の光に当てると模様が浮かび上がるようになっていた。
「これでは着れないわ」
「だったらすぐに模様を…」
「ダメだわ。生地が繊細過ぎて無理だわ」
模様は裾から膝まであるので万一生地を切ってしまえば膝が見える。
花嫁が足元を晒すのははしたない事だと言われており、平民でも許されないのだった。
「仕方ない別のを」
「でも私はこのドレスが着たいの。それに今から別の物を用意するなんてできないわ」
「仕方ない。なんとかして模様を見えないようにしよう」
「ええ…」
式まで三日もない。
今からリメイクしても何処までできるか解らない。
「急いで侍女にドレスの手直しをと考えていたが」
「ランドルフ様、下着のサイズが合いません」
「ドレスのサイズもです」
同年代の女性よりも細身で身長が高いカナリアは衣装合わせの時に手直しを他の仕立て屋に頼んでいたのを思い出す。
キャスティ商会から派遣された従業員以外だった。
しかも用意されたウェディングドレスの生地はレースが特殊で扱えるお針子も少なく無理に針を通せば生地が裂けてしまう。
「ダメです。生地が…」
「少しぐらいなら構わないわ」
「ですが、この生地は」
「生地ぐらいいいわ」
エミリーは少し強い口調で言い放つと侍女は落胆した表情で告げた。
「かしこまりました」
エミリーを思っての発言だったが命令だったの仕方ないと割り切ったが、その結果侍女の危惧していた通りになり、生地は台無しとなるのだった。
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