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第一章
12婚約破棄の鉄則
しおりを挟む貴族同士の婚約は国王の許可があって成立する。
その為、勝手な理由で破棄する時は余程の理由が必要であるが、婚約破棄をした側が慰謝料を支払う義務がある。
例外があるとすれば婚約破棄をされた側が不貞行為を行うか、犯罪を犯したぐらいだ。
「今回の婚約破棄は、相手側の不貞行為があるかないか」
「なるほど法律では婚前前に一線を二度行ったかですね」
「カナリア嬢、私が言うのも何だが…」
あっさり言い過ぎではないのかと思うエンディミオンだが。
「王宮勤めをする女官ですわ。男女の機微に関してはそれなりに」
「そうか…」
高位貴族の中では結婚後に女遊びをするのは少なく無い。
優れた世継ぎを作る為に愛人を持つ事もあるが、下級貴族の場合は体裁を取り繕う為だった。
「王宮では修羅場が多かったのです」
「そうか」
エンディミオンはランドルフが不貞行為をしている事実を確かめる事はカナリアを深く傷つけると思っていたのだが、本人はそこまで気にしていない。
「婚約破棄を突きつけられた時に既に肉体関係を持っているのでは?という考えがありました」
「何故だ?」
「婚儀を急いでいるからです。他にもその後に少し調べましたの」
「ご自分で?」
「はい」
優秀な女官であるカナリアは時に王妃に命じられ王宮内で素行調査をしていたので調べるのは簡単だった。
「王都内には懇意にしている酒場や、王妃陛下がお忍びで利用される店も多くありますので警護も万全にする為に仕掛けを」
「心強いな。では確認をしたい」
「はい」
エンディミオンの智恵と、カナリアの予防によりランドルフを懲らしめる計画は簡単に実行できた。
同時にランドルフの恋人のエミリー・エスタークの出生に関しても簡単に調べることができた。
「エンディミオン様、こちらですわ」
「ありがとうございます。ウルリーケ様」
「いいえ、この程度の事」
程なくしてウルリーケが書類を手にして部屋に入って来た。
その後ろで疲れた表情をする夫。
「元気だな」
「しゃきっとなさいませ。体力が無さすぎですわ」
エミリーの出生を調べるべく調べ回った二人。
主にウルリーケに振り回された夫エクセルは胃を抑えている。
「彼女は平民か…父親は貴族のようだが」
「そうなのですか?」
「ああ、母親はお針子のようですよ」
報告書を見ると、エミリーの家庭環境は決して良い者ではないが王宮勤めをする侍女や女官にはよくあるのだ。
ウィスター家も第三者から見れば裕福で恵まれていると思われているが、表向きだ。
常に仕事に追われ、生活はとても質素なものだった。
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そして不幸そうに見えるエミリーが悲劇のお姫様にも見えたのだろう。
そしてランドルフ自身は愛する人と共になれない自分を哀れに思い酔っているとも思えた。
現実が見えていない二人を本来ならば母親が止めに入るのだが、ライアン・オイシスは保身的な考えを持っていた故に止めなかったのだった。
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