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第二章
21黒に変わる時
しおりを挟む今さら後悔しても遅い。
相手は一国の王女であり、女帝が寵愛する元聖女。
「お前達は誰を侮辱した?女王陛下は許さないだろう」
「えっ…」
「過去に辺境伯爵様を侮辱した者は我が国では生きて行けないだろう。あの方と女王陛下は旧知の仲で恩人だ。恩人を散々侮辱した者は国境に入れば」
「殺されるだろうな」
脳内に浮かぶ女帝を思い出す二人。
身内には寛大であるが敵には情け容赦もなく慈悲などなかった。
「どうなるだろうな?侍女でしかない者が戦上手のあの方がどうされるか」
「「ひぃっ!」」
女帝の噂はどの国でも有名だった。
怒らせれば死ぬよりも恐ろしい時刻を見ることになるのだから。
「聖女を偽る罪人も例外ではない」
「どうして…何でジュリエットばかりが!」
絶望している侍女とは正反対にミーシャはジュリエットを睨む。
「何でアンタだけがすべてを手にれるの!私が欲しい物を全部最初から持ってて!」
「ミーシャ…」
「私はずっとアンタが妬ましかった!貴族で、綺麗で、家族からの愛情も何もかも持っているのに」
ミーシャはずっとジュリエットに嫉妬していた。
聖女に召し上げられたのはほとんど同じ時期であるが、早い段階に能力に目覚め認められ、聖女筆頭に選ばれた事。
家族からの手紙が頻繁に届いている事。
オルヴィスからの関心がある事もすべてが許せなかった。
「私は…」
「止めてよそんな顔!悲劇のヒロインぶって…殿下も殿下だわ!」
オルヴィスは表向きはジュリエットに厳しかった。
見せつけるようにミーシャに優しくしていたが、所詮は当馬に選ばれたに過ぎなかった。
「私はアンタを振り向かせる駒だった…最初はそれでも良かった」
何時か振り向いてもらえると思った。
だけど、どんなに頑張ってもオルヴィスが振りむことはなかった。
どれ所か事あるごとにジュリエットと比較され傷ついて来たミーシャの怒りはジュリエットに向けられた。
「なのにアンタは全部奪っていく!何でよ…強欲な女が」
「ミーシャ」
ジュリエットはミーシャに対する怒りはなかった。
逆に不憫だとも思った。
その態度がミーシャの怒りを強めてしまった。
「憎い…」
「え?」
「アンタさえいなければ」
黒い感情が深く強くなっていく。
ミーシャの憎悪に瘴気が集まって行き、周りにどす黒い魔力が集まって行く。
「ダメよミーシャ!」
真っ暗な瘴気に体を包まれたミーシャは変化してしまったと同時に鏡が割れる音が響いた。
「聖女の鏡が…」
ミーシャは憎しみに心を壊し魔女になってしまった。
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