30 / 72
第一章
28祝福
しおりを挟む一か月後、ジュリエットとアルフレッドの結婚式が行われた。
国民は王宮の庭園に入場して、ジュリエットに手を振りお祝いの言葉をかけていた。
「王女様おめでとうございます」
「侯爵様!」
隣国では聖女の鑑と呼ばれ他国の兵士にも慈悲を持って接していたジュリエットに、平民の視点で政治を行うアルフレッドは国民から慕われていた事から今回の婚儀はおめでたいものだった。
「皆、祝福してくれている」
「ええ、反感の声が大きいと思ったけど」
多くの人に祝福されることの喜びを知ったジュリエットは心の中で祈った。
(もう聖女ではないけど、変わらないわ)
聖女であろうがなかろうが、国民の為に尽くしたい。
貴族として、そして多くの人が安心して暮らせるように尽くそうと思った。
ジュリエットは決して国民を幸福にしたいと思わなかった。
幸福も不幸も自分の選択次第で誰かに与えられるものではないと知っているから。
「笑ってくれ」
「アルフレッド」
「君は王女でもあるんだ。国民に笑顔を」
「ええ」
アルフレッドに寄り添い笑顔を浮かべ手を振る。
多くの記者が写真を撮りやすいように前に出配慮をする。
そんな時だった。
「これは」
「花弁?」
空から花弁が落ちて来た。
七色の花弁が舞い国民は大喜びだった。
「虹の花弁だ」
「これが祝福の花…」
ハクセンス王国には伝説がある。
七色の花弁は女神の祝福で加護を受けた花嫁は幸福になれる。
「見て、泉の水が輝いている」
「聖女様だから女神様の祝福を受けているのよ」
「なんて縁起の良い」
国民は祝福を心から喜んだ。
その祝福は文字通り国を祝福し、ハクセン王国が一番問題視していた気候の問題が解決され。
作物が豊作に取れ、天から恵を受けることになった。
偶然か、必然かハクセンス王国を狙おうとした敵国は海難事故や流行病になり。
ジュリエットが国を守護する女神として謳われるようになり他国でもその評判は有名になる一方で、遅れてその情報を聞きつけたのは。
「ハクセン王国の王女だと…馬鹿な」
「これはどういう事だ!」
国王とオルヴィスは新聞を握りしめていた。
「何故あの女が」
「ハクセンスの王国の王女等ありえない…何故!」
バイエルン王国を去った後に、王族になるとは夢にも思わなかった。
「これでは手が出せないではないか!」
「あの平民の成り上がりが…よくも!」
ここ数日聖女への信頼はがた落ちだった。
ルーアンはまだマシだったが、二人の聖女の評価が最悪で他国にも影響が出ている。
このままでは他国からの援助金も打ち切られ、敵国にも攻められるのは明らかだった。
万一の時はジュリエットを連れ戻す気でいたが、女王の養女となった今難しくなったのだった。
42
お気に入りに追加
2,434
あなたにおすすめの小説
妹に婚約者を取られましたが、辺境で楽しく暮らしています
今川幸乃
ファンタジー
おいしい物が大好きのオルロンド公爵家の長女エリサは次期国王と目されているケビン王子と婚約していた。
それを羨んだ妹のシシリーは悪い噂を流してエリサとケビンの婚約を破棄させ、自分がケビンの婚約者に収まる。
そしてエリサは田舎・偏屈・頑固と恐れられる辺境伯レリクスの元に厄介払い同然で嫁に出された。
当初は見向きもされないエリサだったが、次第に料理や作物の知識で周囲を驚かせていく。
一方、ケビンは極度のナルシストで、エリサはそれを知っていたからこそシシリーにケビンを譲らなかった。ケビンと結ばれたシシリーはすぐに彼の本性を知り、後悔することになる。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
星名柚花
恋愛
魔法が使えない伯爵令嬢セレスティアには美しい双子の妹・イノーラがいる。
国一番の魔力を持つイノーラは我儘な暴君で、セレスティアから婚約者まで奪った。
「もう無理、もう耐えられない!!」
イノーラの結婚式に無理やり参列させられたセレスティアは逃亡を決意。
「セラ」という偽名を使い、遠く離れたロドリー王国で侍女として働き始めた。
そこでセラには唯一無二のとんでもない魔法が使えることが判明する。
猫になる魔法をかけられた女性不信のユリウス。
表情筋が死んでいるユリウスの弟ノエル。
溺愛してくる魔法使いのリュオン。
彼らと共に暮らしながら、幸せに満ちたセラの新しい日々が始まる――
※他サイトにも投稿しています。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。
曽根原ツタ
恋愛
ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。
ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。
その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。
ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?
婚約していたのに、第二王子は妹と浮気しました~捨てられた私は、王太子殿下に拾われます~
マルローネ
ファンタジー
「ごめんなさいね、姉さん。王子殿下は私の物だから」
「そういうことだ、ルアナ。スッキリと婚約破棄といこうじゃないか」
公爵令嬢のルアナ・インクルーダは婚約者の第二王子に婚約破棄をされた。
しかも、信用していた妹との浮気という最悪な形で。
ルアナは国を出ようかと考えるほどに傷ついてしまう。どこか遠い地で静かに暮らそうかと……。
その状態を救ったのは王太子殿下だった。第二王子の不始末について彼は誠心誠意謝罪した。
最初こそ戸惑うルアナだが、王太子殿下の誠意は次第に彼女の心を溶かしていくことになる。
まんまと姉から第二王子を奪った妹だったが、王太子殿下がルアナを選んだことによりアドバンテージはなくなり、さらに第二王子との関係も悪化していき……。
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる